インサイドセールスとは?基礎知識から立ち上げの流れまでをわかりやすく解説

インサイドセールスとは、直訳で「内勤営業」を指す営業組織です。しかし、コロナ禍を機に内勤営業が一般的になった現在では「内勤ならばどんな営業組織もインサイドセールス」という主張には疑問が残ります。
この記事では、インサイドセールスと他の営業組織の比較、インサイドセールスが求められる2つの変化に着目して、インサイドセールスの基本的な位置付けや考えをご紹介します。
さらにはインサイドセールスの立ち上げに必要な「3つの情報」「デジタルツール」「KPI」「立ち上げの流れ」までを網羅的に解説しました。
「インサイドセールスがどのような組織なのか理解を深めたい」
「インサイドセールスの立ち上げに必要な情報を整理したい」
このような営業マネージャー、経営者のみなさまのお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
インサイドセールスとは
まずはインサイドセールスの基本的な位置付けを、「テレアポ」「従来の営業」「フィールドセールス」などの他の営業組織と比較しながら見ていきましょう。
インサイドセールスの定義はコロナ禍を境に変わりつつあります。その変化も踏まえてまとめました。
「インサイドセールス=内勤営業」ではなくなった
インサイドセールスは、直訳で「内勤営業」を指す営業組織です。しかし、コロナ禍を境に、インサイドセールスではない営業担当者も訪問せずに、つまり内勤で営業活動を展開するようになりました。
したがって、「インサイドセールス=内勤営業」というだけの定義では、インサイドセールスの特徴を正確に捉えているとは言えません。
では2022年現在、「インサイドセールス」とはどのような営業組織を指すのでしょうか。あくまでも傾向ですが、インサイドセールス組織の特徴を以下にまとめました。
- 内勤である
- 主に営業プロセスの前半を担う
- デジタルツールを駆使する
- 情報の記録、共有を徹底する
- お客さまの情報収集を支援しながらアポや商談を獲得する
ここからは、上記のインサイドセールスの特徴を、他の営業組織と対比しながらご説明します。
インサイドセールスとテレアポの違い
インサイドセールスと近い営業スタイルが「テレアポ」です。たしかにテレアポには「内勤」「電話中心」「営業プロセスの前半を担う」など、インサイドセールスとの共通点が複数あります。
インサイドセールスとテレアポの違いは「目的」にあります。テレアポの目的は、その名の通りアポの獲得です。一方インサイドセールスの目的は、組織によってさまざまです。
- 情報提供
- ヒアリング
- 信頼関係の構築
- 商談見込みの高いアポの獲得
これらはインサイドセールス担当者がお客さまにご連絡する際の主要な目的です。
インサイドセールスは、「アポを取る」という考えだけでなく、「商談見込みの高いアポを」「お客さまとの信頼関係を構築しながら」獲得することを目指します。そのために、一般的なテレアポ組織とくらべて「情報提供」「ヒアリング」を丹念に実行する傾向があります。
株式会社ビズリーチのインサイドセールス部部長を勤める茂野氏は、著書『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』の中で、インサイドセールスとテレアポの違いを「ストック型かフロー型か」と表現しています。
私はテレアポとインサイドセールスの違いを「フロー型とストック型の違い」と定義しています。テレアポはフロー型で「架電リストの上から順にただ電話してリストを消化(フロー)しているだけで情報が蓄積されない状態で、顧客との信頼関係も毀損(フロー)しているもの」であり、インサイドセールスは「コミュニケーションの履歴を蓄積(ストック)することによって最適なタイミングで最適な情報を届け、お客様との信頼関係を構築(ストック)することを目的としている」と定義しています。
『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』より
インサイドセールスと従来の営業との違い
インサイドセールスと従来の営業とのもっとも大きな違いは、1人の営業担当者が担う業務範囲です。

従来は1人の営業担当者が、営業の業務すべてを担当していました。一方インサイドセールスを取り入れた営業組織は、これまで1人が担っていた営業プロセスを二分割します。
インサイドセールスとフィールドセールスとの違い
フィールドセールスとは、直訳で外勤営業を指す営業組織です。営業プロセスの前半を担うインサイドセールスに対して、フィールドセールスは営業プロセスの後半を担います。

コロナ禍を機に「フィールドセールスもリモートワーク」が普通になった現状では、営業プロセスの後半を担う営業組織を「オンラインセールス」と呼ぶこともあるようです。
インサイドセールスが求められる2つの背景
ここからは、インサイドセールスが求められるようになった2つの変化に着目して、インサイドセールス組織を紐解いていきます。2つの変化とは「顧客の購買行動」「テクノロジー」の変化です。
顧客の購買行動の変化
顧客の購買行動は「自力での情報収集中心」「長期化」の方向に変化しています。いくつかのデータをご紹介します。
The Digital Evolution in B2B Marketing(2012年)という調査では、「お客さまは営業担当者に会う前に購買プロセスの57%を終えている」としています。

もう少し最近のデータもご紹介します。McKinsey & Companyの調査によると、「サービス情報を調査するときに営業とのやりとりを介する顧客の割合」は、2016年の65%から、2019年には35%にまで減少しました。

2つのデータからわかることは、お客さまは従来のように「問い合わせをして、営業担当者にパンフレットを見せてもらいながら情報を収集する」のではなく「自力で情報収集するようになった」ということです。
みなさまの多くも、生活の中でなんらかの製品が気になったとき、まずはご自身で検索なさるのではないでしょうか。
そしてさらに、Blender社は「2020年の顧客の購買行動は2015年とくらべて22%長期化している」という調査結果を発表しています。

お客さまは自力での情報収集を好むようになり、購買行動は長期化傾向にあります。そしてこの傾向は、コロナ禍を機に加速したと考えられます。
この購買行動の変化に、従来の営業スタイルは対応しきれません。営業1人がすべての営業プロセスを担っていては、どうしてもクロージングに近い案件を優先し、情報収集段階のお客さまへの長期的なフォローまで手が回らないためです。
そこで専門のチーム、インサイドセールスが求められるようになりました。
インサイドセールスは、購買行動の変化に順応し、情報収集段階のお客さまに効率的な手段で有益な情報を提供します。つまりインサイドセールスは、お客さまの情報収集を長期的に支援するのです。この「お客さまの情報収集を長期的に支援する」スタンスは、従来のテレアポ組織にはあまりなかった考えです。
マケフリ記事「インサイドセールスの調査レポートまとめ|担当者なら知っておきたい役割や手段を数字で詳しくご紹介」では、インサイドセールスに関わる海外の調査データをまとめています。インサイドセールス導入の効果や成果を出すヒントにご興味がありましたら、ぜひごらんください。
テクノロジーの進化
テクノロジーの進化によって、インサイドセールスという組織が「実現可能になった」という側面も無視できません。
たとえば、インサイドセールスの業務に「フィールドセールスへの案件の引き継ぎ」があります。日々生まれる案件を、口頭や紙ベースで引き継いでいては非効率です。Excelやスプレッドシートなどの表計算ソフトでも、誰かがフォーマットを崩してしまうなどの不便は絶えません。
しかし最近では、案件情報などを管理するツール「SFA(営業支援システム)」を、クラウドで安価に利用できるようになりました。
見込みの高い案件を発見するマーケティングオートメーション(MA)ツールも、インサイドセールスを語る上では欠かせません。マーケティングオートメーションとは、見込み客の情報をオンライン行動も含めて管理しながらメール等でコミュニケーションを取り、見込みの高いお客さまを教えてくれるクラウドツールです。
インサイドセールスは、マーケティングオートメーションを使いながら効率的に見込みの高い案件を発見します。マーケティングオートメーションがなければ、「広くアプローチしながら見込みの高い案件を発見する」というインサイドセールスの業務には膨大な時間がかかったことでしょう。
Zoomやベルフェイスなどのオンライン会議ツールも一般的になりました。
テクノロジーの進化によって、「内勤でも多くの見込み客の中から効率的に見込みの高い案件を見つけ出し、見込み客の情報を抜け漏れなくフィールドセールスに引き渡す」というインサイドセールスの実務が、安価に実現可能になったのです。
インサイドセールス立ち上げの4つのメリット
インサイドセールス立ち上げのメリットとは、言い換えると「インサイドセールスによって解決する営業課題」です。
- 営業プロセスが見える化できていない
- 顧客の購買行動の変化に対応しきれていない
- 対応できる顧客数を増やしたい
- 社内の教育コストを減らしたい
上記の営業課題を抱えていらっしゃるなら、インサイドセールスを検討する価値があります。
営業プロセスの改善点を見つけやすい
インサイドセールスを立ち上げると、必然的に営業プロセスが細分化されます。つまり、これまで1人の営業担当者が担っていたためにブラックボックス化しがちだった営業活動を見える化できます。

営業プロセスの見える化によって、営業活動の改善点が見つかります。たとえば、これまでは受注数しか見えておらず、どこを改善すればいいかわからなかった営業活動の
- リスト→アポ転換率に課題がある
- アポ→商談転換率に課題がある
などのボトルネックを発見できるのです。
購買行動の変化に対応できる
「インサイドセールスの背景」の章で述べたように、お客さまはなるべく自力で情報収集するようになり、その購買行動は長期化しています。
インサイドセールスがうまく機能すると、変化する購買行動に対応した、よい購買体験をお客さまに提供できます。
- 情報収集段階のお客さまに対してはこまめにお役立ち情報を届ける
- Webサイトへのアクセスなど、お客さまの興味関心がみてとれたタイミングでヒアリングやさらなる情報提供を続ける
お問い合わせ前からこのようなスタンスで関係性を構築できていれば、お客さまが本格的にサービスを検討するとき、自然と「この会社のサービスも見てみよう」と感じるでしょう。
対応できる見込み客数が増える
従来の営業とくらべると、インサイドセールスは多くのお客さまと接点を持てます。主な手法がメールや電話といったコストの低い連絡手段であることに加えて、デジタルツールで効率的にアプローチする特徴があるためです。
たとえば、マーケティングオートメーションを使えば、
- 過去に料金表のページを閲覧したことがあるお客さま1,000人を抽出
- 1,000人に対してメルマガを配信
- 1,000人の中からリンクをクリックした20人にお電話
- 20人にヒアリングし、温度感に応じてコンテンツ案内やアポの打診
- 結果をSFAに記入し、フィールドセールスに引き継ぎ
といったインサイドセールスの取り組みが、1日ないし2日もあれば可能です。
一方、クロージングに近い案件を1人が多数抱えている従来の営業スタイルでは、温度感がわからないお客さまへの連絡まではなかなか手が回りません。
「過去の展示会で獲得した名刺が溜まっているもののご連絡できていない」などのケースでは、広くアプローチできるインサイドセールスで再度関係性を構築できます。
加えて、インサイドセールスの活動はエリアに限定されません。訪問中心の時代ではコストがかかりすぎていた遠方のお客さまへ営業活動を展開できることも、インサイドセールスのメリットです。
マケフリ記事「お客さまの『買いたい』を増やすインサイドセールスのメール活用法」では、インサイドセールスのメールテクニックをご紹介しています。メールはインサイドセールスに不可欠な手段です。ぜひごらんください。
社内教育コストが減る
インサイドセールスによって営業組織の分業化が進むと、1人が担当する業務範囲が狭まり、担当者のひとり立ちが早くなります。
加えてインサイドセールスの業務は、マニュアル化・定型化しやすい傾向にあります。
- よく送る営業メールはテンプレ化
- 業務フローはマニュアル化
- 電話内容はトークスクリプト化
このように営業マニュアルを整備できていれば、新しくインサイドセールスに配属された担当者のひとり立ちがより早まります。
インサイドセールスの種類
一言で「インサイドセールス」と言っても、インサイドセールスは2種類に分かれます。それぞれ「SDR」「BDR」と呼ばれるインサイドセールス組織です。
この章では、2種類のインサイドセールス「SDR」と「BDR」をご紹介します。SDRとBDRの違いを端的に言えば「インバウンドかアウトバウンドか」です。

インサイドセールスの種類1:SDR
インバウンド営業主体で新規開拓を行うインサイドセールス組織をSDR(Sales Development Representative)と呼びます。
インバウンド営業とは、お問い合わせなどのお客さまの能動的な行動を起点に営業活動を展開する営業スタイルです。
つまりSDRは、
- お問い合わせへのフォロー
- 資料請求者へのフォロー
- ウェビナー参加者へのフォロー
などの「なんらかの行動をしてくださったお客さま」を対象に営業活動を展開するインサイドセールス組織です。
SDRは、後述するBDRと比べると、「来てくださった」お客さまに対応するため、相対的に初回アプローチからアポや商談に繋げるハードルが低い傾向があります。
一方で、問い合わせや資料請求を増やすマーケティング施策がうまく回っていない企業では、インバウンド主体のSDRはそもそも成立しない可能性があります。
インサイドセールスの種類2:BDR
SDRがインバウンド主体のインサイドセールス組織であるのに対して、アウトバウンド主体で新規開拓を行うインサイドセールス組織をBDR(Business Development Representative)と呼びます。
アウトバウンド営業とは、電話や手紙、ダイレクトメッセージなどを駆使して、まだ接点がない見込み客を顧客に変える営業スタイルです。
接点がない見込み客を顧客に変えるBDRは難易度が高く、営業コストも大きくなりがちです。そのため、BDRの対象顧客は、コストに見合った大口注文が望めるエンタープライズ企業が中心となる傾向があります。
SDRとBDRは、どちらか一方を選択しなければならないわけではありません。1つの会社の中で、インバウンド営業をSDRが担いアウトバウンド営業をBDRが担う、という棲み分けも可能です。
インサイドセールスが管理すべき3つの情報
初めの章で、インサイドセールスには「情報の記録、共有を徹底する」という特徴があるとお話しました。この章では、インサイドセールスが管理すべき3つの情報を掘り下げます。
私たちは、情報の管理こそがインサイドセールスの「屋台骨」だと考えています。3つの情報のどれが欠けても、おそらくインサイドセールスは機能しなくなるはずです。
顧客情報
インサイドセールスが管理すべき1つ目の情報は「顧客情報」です。顧客接点を記録しながら長期的に信頼関係を構築するインサイドセールスにとって、顧客情報はまさに屋台骨です。
顧客情報を管理するときは、お名前や会社名、ご連絡先などの「属性情報」に加えて、できればサイトアクセスやメールの開封履歴、ウェビナー参加などの「行動情報」も管理しましょう。行動情報はマーケティングオートメーションツールで取得します。
なお、顧客情報は単に名簿として存在するだけでは十分ではありません。
- 後述する「案件情報」と紐付ける
- データベースとして一元管理する
これら2つを満たせば、フィールドセールスへの引き継ぎがスムーズになるだけでなく、営業活動の属人化を防げます。
本来お客さまは「会社のお客さま」であるはずなのに、営業が「俺の客」だと考えると、営業活動は属人化します。そして属人化したままでは、インサイドセールスの立ち上げは非常に困難な道のりになるでしょう。マケフリ記事「営業活動の属人化を防ぐための『情報』『ツール』『推進方法』のまとめ」では、そんな営業活動の属人化を防ぐ手立てを解説しました。
案件(商談)情報
案件(商談)情報とは、ヒアリングで明らかになったお客さまのご要望などの、商談に必要な情報です。
・案件に関わるお客さまの事業
・お客さまの現状
・ニーズ・課題
・導入予定時期
・ご予算
・検討しているプラン・サービス など
案件情報を管理する主な目的は「フィールドセールスへの引き継ぎのため」です。せっかくインサイドセールスがヒアリングした情報も、フィールドセールスに伝わらなかったら意味がありません。なによりお客さまにとって、営業担当者が途中で変わることは不安なものです。お客さまの不安を払拭するためにも、案件に関する情報は正確にフィールドセールスに引き継ぐ必要があります。
加えて、案件情報の管理はインサイドセールス自身のためでもあります。「多くのお客さまと」「長期的に」関係を持つインサイドセールスの特性上、「過去にどのようなお話をしたか思い出せない」という事態は起こり得ます。案件情報の記録によって、お客さまと長期的な関係を構築できます。
マケフリ記事「営業ヒアリングシートのテンプレート|各ヒアリング項目も徹底解説」では、ヒアリングシートのテンプレートとともに、インサイドセールスがヒアリングすべき項目を解説しています。あわせてごらんください。
営業プロセス
インサイドセールスを立ち上げるなら、「受注数」というゴールだけでなく、営業活動のプロセスごとに数字を管理する必要があります。つまり、「見込み客リスト数」「アポ数」「商談数」などの営業活動の各段階の案件が何件あるかを把握しなければなりません。
このような営業活動のプロセス管理を「パイプライン管理」と呼びます。

パイプライン管理によって、
- インサイドセールスの活動を正しく評価できる
- 正確な売上予測を立てられる
- 営業活動のボトルネックを発見・改善できる
といったメリットが生じます。
インサイドセールスに必要なツール
前章の3つの情報がインサイドセールスの「屋台骨」だとしたら、この章でご紹介するツールはインサイドセールスの「土台」です。
インサイドセールスは、MAやSFA、CRMなどのデジタルツールで情報を管理しながら、お客さまとの最適なコミュニケーションを探ります。
インサイドセールスに必要な4つのツールをまとめました。

SFA / CRM
SFAとは、Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)の略語で、日本語で「営業支援システム」と呼ばれます。SFAは「インサイドセールス × デジタルツール」の文脈でもっとも名前が挙がるツールです。
多くの企業が様々なSFAを提供していますが、どのSFAも前述した「顧客管理」「案件管理」の機能は備えています。他にもToDo管理や受注予測、担当者の行動分析など、営業活動を支援する機能は多岐にわたります。
インサイドセールスは、顧客との接点をSFAに記入し、フィールドセールスに引き継ぎます。
SFAの価格は「ログインユーザー1人あたり数千円〜数万円」などの利用人数に応じて金額が決まるものが一般的です。
CRMとは、『Customer Relationship Management』の略語で、顧客関係管理と訳されます。広義では「顧客との良好な関係を構築・維持していく概念」を指し、狭義では「既存顧客との関係を管理するためのツール」を意味します。CRMツールの機能は多岐にわたりますが、SFAに近い機能を備えたCRMツールもあります。
MA(マーケティングオートメーション)
マーケティングオートメーション(MA)とは、企業の売上アップに欠かせない「集客→育成→選別」の3ステップを自動化、効率化するツールです。
SFAが主に案件化したお客さま情報を管理するのに対して、マーケティングオートメーションはまだ案件化には至らない「見込み客」段階の顧客情報を管理します。
マーケティングオートメーションの特徴は、見込み客のオンライン行動まで含めた顧客管理を実現できることです。たとえば、マーケティングオートメーションには、メールの開封・クリック履歴、Webサイトのアクセス履歴、ウェビナーへの参加履歴などの「顧客の行動情報」が自動で蓄積されていきます。
さらにマーケティングオートメーションは、見込み客の行動にスコア(点数)をつけ、見込みの高いお客さま(HOTリード)を教えてくれます。
マーケティングオートメーションは「ハウスリストの中から見込みの高い案件を発見する」インサイドセールスにもってこいのツールです。
マケフリ記事「マーケティングオートメーションの今がわかる!調査レポートまとめ」では、マーケティングオートメーションの効果や実態にまつわる調査をまとめています。あわせてごらんください。
名刺管理アプリ
名刺管理アプリとは、紙の名刺をスキャンし、デジタル化するためのサービスです。
社内にデジタル化されていない名刺がある場合、まずは名刺管理アプリを使って名刺情報をデジタル化するところから顧客管理を始めてみましょう。
多くの名刺管理アプリは、単に名刺をデジタル化するだけでなく、以下の機能も備えています。
- 名刺の自動更新・組織ツリーの作成・タグ付けによるグルーピングなどの名刺情報を整理する機能
- メルマガ配信や商談管理・タスク管理などの、名刺情報を活用する機能
- SFAやマーケティングオートメーションなどの、名刺情報をより活用するツールと連携する機能
- スマホの連絡先と連携して、着信時に名刺情報を表示してくれる機能
名刺管理アプリには、sansanなどの有料のものから、myBridgeなどの無料のものもあります。名刺管理アプリがどんなものか知りたいのであれば、無料の名刺管理アプリをとりあえず使ってみることをおすすめします。
インサイドセールスのKPI
「KPI」と聞くと、「数字も出てくるし、小難しそうだな」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、初めから完璧なKPIを設定するのは非常に難しいでしょう。
しかし、そもそも完璧なKPIを初めから設定する必要はありません。インサイドセールスのKPIは、基本と注意点を押さえて設定し、うまくいかない点があれば修正すればいいだけです。
そんなインサイドセールスのKPIの「基本」と「2つの注意点」をまとめました。
インサイドセールスのKPIの基本項目
インサイドセールスは、主に以下のいずれかをKPIとして営業活動を展開します。
- コールコンタクト数(率)
- アポ数(率)
- 商談獲得数(率)
- 受注数(率)
どのKPIが最適かは組織によりますが、
- 立ち上げ当初は数を優先する
- 数を担保できるようになったら質を高める
という流れでKPIを設定するのがオーソドックスなようです。
つまり、インサイドセールスの立ち上げ当初は「アポ数」「商談数」などをKPIとし、フィールドセールスに引き渡す案件の最大化を目指す。フィールドセールスに安定的に商談を供給できるようになったら「アポ率」「商談化率」をKPIとし、引き渡す案件の質の向上を目指す、という流れです。
「初めに数をこなす」という方針のもと、まずは行動量をKPIに設定するインサイドセールス組織もあります。インサイドセールスの行動量とは「メール送信数」「架電数」などです。
インサイドセールスのKPI設定の2つの注意点
インサイドセールスのKPI設定に関して、2つ注意点があります。
1つ目の注意点は、KPIの定義をすり合わせておくことです。
たとえば「アポ数」をKPIに設定したとしたら、何をもってアポと呼ぶのかをきちんと定義します。お客さまが時間を確保してくれた場合はすべてアポなのか。あるいはBANT条件など、なんらかの条件を満たした場合にアポとするのか。
KPIの定義が定まっていないと、インサイドセールス担当者ごとに、フィールドセールスに引き渡す案件の温度感に差が生じてしまいます。何より、報告数字と実態の乖離が大きくなり、KPIを管理する意味がなくなってしまいます。
2つ目の注意点は、全体最適で設定することです。
単に「インサイドセールス部門にとって最適なKPI」ではなく、インサイドセールス前後のマーケティング部門やフィールドセールス部門も含めた視点でKPIを設定します。
- 比較的フィールドセールスの手が空いた場合、インサイドセールスでのフィルタリングの精度を落として引き渡し数を増やす
- インサイドセールスのアプローチリストが足りていない場合、マーケティング部門に引き渡し精度を落としてもらう
このような、部門をまたいだ調整がインサイドセールスのKPIには必要です。
インサイドセールス立ち上げまでの流れ
この章では、インサイドセールスを立ち上げるまでの大まかな流れをご紹介します。会社の状況によっては順番が前後することもあるかもしれませんが、どれも検討が必要な工程であることは確かなはずです。
営業プロセスの再設計
インサイドセールスを立ち上げるにあたって、まずは自社の営業プロセスを再設計します。
もしもこれまで営業担当者1人ひとりが各々のプロセスで営業活動を進めていた場合、営業担当者にヒアリングしながら、標準的な営業プロセスを設計します。
ただし、「標準的」とは言うものの、今後営業組織がその営業プロセスに準ずる以上、お客さまの実態に即した、かつ成果が大きくなる営業プロセスを設計すべきです。そのため、特に自社で好成績をあげている営業担当者の営業プロセスは入念にヒアリングしましょう。
インサイドセールスの担当範囲の決定
自社の営業プロセスを設計したら、インサイドセールスの担当範囲を定めます。インサイドセールスの担当範囲に決まりはありませんが「初回アプローチから商談獲得まで」が一般的です。
ただし、中にはインサイドセールスだけで売り切る組織、つまりフィールドセールスが介在しないインサイドセールス組織も存在します。さらには、メルマガやウェビナーなど、いわゆるマーケティング施策を担当するインサイドセールス組織もあるでしょう。

社内のリソースおよび商材の特徴、実施予定の施策を鑑みて、インサイドセールスの担当範囲を定める必要があります。
インサイドセールスチームの所属部署の決定
インサイドセールス組織を会社の組織図のどこに配置するかも考えておく必要があります。選択肢は大きく分けて以下の3つのいずれかになるでしょう。
- マーケティング部門の管轄
- 営業部門の管轄
- インサイドセールスの独立部門設立
まずは少人数でインサイドセールスを始める場合、わざわざインサイドセールス部門を設立せずとも、既存の営業組織の中で「インサイドセールス業務を担うプロジェクトチーム」のような立ち位置でも問題ありません。
インサイドセールスの人員の検討
インサイドセールスの人員をどうするかも検討が必要です。
まず、選択肢は大きく分けると内製か外注かの2択です。
2つの選択肢をさらに細分化すると、内製ならば新たに採用するか自社スタッフの誰かをインサイドセールスにアサインするか、外注ならばどの会社に依頼するかを選択します。
インサイドセールスを小さく始める場合、営業担当者数名をインサイドセールスに任命するのがもっともリスクが少ない選択肢でしょう。もともと自社の営業担当なら、営業がどのようなアポや商談を必要としているかの勘所も掴めます。
自社スタッフをインサイドセールスに任命する場合、少人数のインサイドセールス組織であれば若手でも問題ありません。実際に多くのインサイドセールスの立ち上げ事例でも、若手のみの少人数チームでスタートしたインサイドセールス組織は珍しくありません。
ただし、インサイドセールスの人数が多い場合やインサイドセールスを部門として立ち上げる場合は、マネジメントが必要になるかもしれません。その場合は社内のマネジメント経験者をインサイドセールスチームのリーダーに据えることを検討しましょう。
インサイドセールスに必要なツールの検討
インサイドセールスにはデジタルツールの活用が不可欠です。前述したSFAやCRM、マーケティングオートメーションや名刺管理アプリなど、必要なツールの導入を検討しましょう。
いずれのツールも多くの競合サービスがあるため、選ぶのは一苦労かもしれません。参考までに、IT製品の比較レビューサイト「ITreview」をご紹介します。
ITreviewは国内最大級のIT製品/ SaaSのレビューサイトで、この記事でご紹介したデジタルツールも掲載しています。製品ユーザーの生のレビューも閲覧できるため、導入後のイメージを持てるようになるはずです。
顧客情報の整理
インサイドセールスはお客さまとの接点を記録しながら長期的に信頼関係を築きます。したがって、顧客情報を記録する顧客データベースは、インサイドセールスの命綱のようなものです。
インサイドセールスの立ち上げを機にMAやSFAなどのツールを導入する場合は
- 顧客情報の獲得ソースは明確か
- 過去連絡した営業担当者情報が引き継がれているか
- リストの重複はないか
などを確認しながら、顧客情報を整理しましょう。
インサイドセールスのKPIの設定
KPIについては前の章で「初めは数を追う」「全体最適で設計する」「アポや商談の定義を決める」とお伝えしました。
加えてこのKPIの方針を、特にフィールドセールスには周知しておきましょう。
インサイドセールスのKPIを「初めは数を追う」という戦略の元に設計し業務を進めると、見込みの低い「まだまだ客」をフィールドセールスに引き継ぐことになります。これを受けてフィールドセールスが「インサイドセールスからのアポはだめだ」という判断を下してしまうと、今後のインサイドセールスとフィールドセールスの連携に亀裂が入りかねません。
インサイドセールスのKPI設定とその狙いについてフィールドセールスに説明し、フィールドセールスとインサイドセールスが協力して受注を増やす体制が必要です。
インサイドセールスの成功事例
この章では、インサイドセールスの事例をご紹介します。
ここで身元を明かしますと、私たちはマーケティングオートメーション・SFAのベンダーです。マーケティングオートメーションとSFAはどちらもインサイドセールスとの親和性が高く、Kairos3 Marketing導入を機にインサイドセールスを立ち上げたお客さまもいらっしゃります。
当社のお客さまの中でインサイドセールスを立ち上げた事例を2つご紹介いたしますので、下記リンクより事例記事をごらんください。
過去にウェビナーでいただいたご質問を「インサイドセールスの疑問と回答13選|『組織づくり』から『PDCAの回し方』まで」でまとめています。あわせてごらんください。
※この記事は2022年2月4日に更新しました