購買行動モデルAMTULを事例付きで徹底解説。AIDMAとの違いとは

AMTUL(アムツール)は、消費者がサービスや商品を認知、発見してから購入にいたるまでの過程を表した購買行動モデルの1つです。AMTULの特徴は、基本的な購買行動モデルであるAIDMAに「顧客ロイヤリティ」の概念を加えた点です。

今回は、AMTULの概念と、AMTULに当てはめたBtoB企業・BtoC企業のマーケティング事例をくわしくご紹介します。みなさまのお役に立てば幸いです。

AMTULの基礎知識

まずは、AMTULの基本的な知識を押さえましょう。

AMTULとは

AMTUL(アムツール)とは、1970年代に水口健治氏によって提唱された、AIDMAに「顧客ロイヤリティ」の概念を加えブラッシュアップした購買行動モデルです。「商品やサービスに対する、消費者の長期的な心理の移り変わり」をうまくモデルの中に落とし込んでいるところが、AMTULの特徴です。

AMTULを正しく理解するためには、まずはAMTULの元となったAIDMAを理解しなくてはなりません。

AIDMAは、1920年代に提唱された、もっとも基本的な購買行動モデルです。多くの購買行動モデルは、AIDMAから派生しています。くわしくは、記事下部でもご紹介しています。

AIDMAでは、消費者の購買行動をAttention(気づく)、Interest(興味を持つ)、Desire(欲求を持つ)、Memory(記憶する)、Action(購買にいたる)という流れで説明しています。

AIDMAが提唱された1920年代では、AIDMAは消費者の購買行動を非常によく表したモデルでした。しかし、時代の流れとともに、消費者の購買行動は多様化し、AIDMAは正確に消費者の購買行動を表していない、という批判が生まれました。

AIDMAには、ある欠点があります。それは、AIDMAが「1回きりの購買行動を表したモデル」であることです。通常、消費者は自分の気に入ったブランドをひいきして購入したり、いつも使っているブランドを継続利用したりします。AIDMAは、そういった「消費者による複数回の購入や利用」を考慮していませんでした。

そこで生まれた購買行動モデルが、AMTULです。AMTULは、「よい商品を、一人ひとりの消費者に長く使っていただく」という消費者志向の考え方が基礎になっています。そのため、AMTULには、AMTUL以外の購買行動モデルにはない「日常利用」や「愛用」といった概念が登場します。後ほど、くわしくご説明します。

AMTULを理解する上で欠かせない、顧客ロイヤリティとは

AMTULは、顧客ロイヤリティの考え方を購買行動モデルに落とし込んだモデルです。そのため、AMTULを理解する上で、顧客ロイヤリティの理解は必要不可欠です。

顧客ロイヤリティとは、顧客が商品やサービス、ブランドに対して感じる愛着や信頼のことです。顧客ロイヤリティは、「ファンの度合い」と言い換えられるかもしれません。

顧客ロイヤリティが低い消費者は、機能や価格で機械的にあなたの商品を判断しています。そのため、価格の改定や、不具合があると、すぐに他社に乗り換えてしまうでしょう。

しかし、顧客ロイヤリティが高い消費者は、あなたの会社や商品のブランドに魅力を感じています。そのため、顧客ロイヤリティが高ければ高いほど、消費者は継続的にあなたの会社から商品を買い続けます。その結果、1人の消費者からのLTV(ライフタイムバリュー)を最大化することができるのです。

AMTULの5ステップ

AMTULは、Awareness(認知)、Memory(記憶)、Trial(試用)、Usage(日常利用)、Loyalty(愛用)のそれぞれの頭文字を取った購買行動モデルです。

それぞれ、くわしくご説明していきます。

AMTULのA「Awareness(認知)」

AMTULのAは、Awareness(認知)を表しています。認知とは、消費者に自社のサービスや商品を知っていただくことを意味します。

消費者の認知度を確かめるためには、再認率を測ります。再認率とは、ブランド名を提示した際に、「そのブランドを知っている」と認識できる消費者の割合のことです。

認知度を高めるための施策としては、広告展示会オウンドメディア、自社ウェブサイト、SNSなどが挙げられます。

AMTULのM「Memory(記憶)」

AMTULのMは、Memory(記憶)を表しています。記憶とは、消費者がどのくらいあなたの製品の名前や特徴、キャッチコピーを覚えているかを意味します。

消費者の記憶度合いを確かめるためには、再生率を測ります。再生率とは、消費者に製品カテゴリーなどのヒントを与えた上で、ブランド名を自力で思い出せる消費者の割合のことです。

あなたの製品を消費者の記憶に根付かせるための施策には、メルマガやSNS、オウンドメディアなどが挙げられます。どれも、継続的に消費者と接点を持てる施策です。

中でも、リストさえあれば誰でもかんたんに始められるメルマガはおすすめです。

メルマガの始め方を学ぶには
敷居が高そうに見えるメルマガの始め方を、3ステップでまとめました。くわしくは「3ステップで始める|メルマガの始め方ガイド【これからメルマガを始めたい担当者必見】」の記事をご確認ください。

AMTULのT「Trial(試用)」

AMTULのTは、Trial(試用)を表しています。試用とは、読んで字のごとく、商品を購入する前に商品をお試しで利用することを指します。試用は、トライアル率を測定することで、数値化できます。

試用を促進するための施策としては、無料トライアルや製品のデモンストレーションなどが挙げられます。

AMTULのU「Usage(日常利用)」

AMTULのUは、Usage(日常利用)を表しています。日常利用は、主使用率を測定することで、数値化できます。

日常利用を促進するには、継続的に消費者と接点を持つ必要があります。日常利用を促進するための施策は、活用促進のためのセミナー、カスタマーサポート、メルマガの活用などが挙げられます。

AMTULのL「Loyalty(愛用)」

AMTULのLは、Loyalty(愛用)を表しています。愛用にいたった消費者は、あなたの製品のブランドに魅力を感じており、あなたの製品を継続的に購入する層です。つまり、愛用率が高いほど、消費者のロイヤリティは高く、LTVは高くなります。

愛用を促進するためには、ユーザーコミュニティを作ったり、長期利用者への特典(優先して機能開発要望をあげられる、割引が適用されるなど)を用意したりすることが考えられます。

AMTULで理解するBtoCマーケティング:「株式会社スナックミー」の事例

AMTULに当てはめたマーケティング事例を、BtoB企業とBtoC企業ごとにご紹介します。事例を通じてAMTULの理解を深める手がかりとなれば幸いです。

BtoC企業は、「株式会社スナックミー」のマーケティング事例をご紹介します。株式会社スナックミーは、定期的におやつを自宅に届けるサブスクサービス「snaq.me」を運営している会社です。

原材料にこだわった美味しいおやつや、好みのおやつがわかる「おやつ診断」、毎月変わるBOXデザインなどのこだわりから人気を集めています。

AMTULのA「Awareness(認知)」

株式会社スナックミーではTwitterやInstagram、Facebook等のSNSを活用しています。株式会社スナックミーのSNS活用の特徴は、SNSの特性に応じた工夫を凝らしている点です。彼らは、SNSごとに投稿頻度や内容、写真のテイストを変更し、情報発信をしています。

各種SNSの中でも、Twitterのフォロワーは7万人にも上ります。商品のこだわりや企業の雰囲気が伝わるつぶやきで、人気を博しています。

AMTULのM「Memory(記憶)」

snaq.meのTwitterは、消費者の印象に残るような親近感があるつぶやきが特徴です。つぶやきの内容は、商品であるおやつに触れるだけでなく、会社の日常の様子が伝わるよう工夫されています。

snaq.meのInstagramで投稿される写真は、シンプルで洗練された雰囲気に統一されています。Instagramの特性に沿った雰囲気の写真を投稿することで、Instagram利用者に記憶してもらいやすくなります。

AMTULのT「Trial(試用)」

snaq.meでは2021年7月時点でサービスのトライアルは行っていないそうです。おやつの定期便のお届けはいつでもストップできるため、1箱試してみて、その後キャンセルすることもできます。

AMTULのU「Usage(日常利用)」

日常利用の促進として、snaq.meには届いたおやつを評価する仕組みや、食べてみたいおやつのリクエスト機能があります。

snaq.meはメルマガも配信しており、定期的に消費者と接点を持っています。

AMTULのL「Loyalty(愛用)」

愛用の促進する施策として、snaq.meには「どんぐりプログラム」というステータス制度があります。「どんぐりプログラム」とは、マイページへのログインやリクエスト回数に応じてどんぐりが獲得でき、獲得したどんぐりの個数に応じてステータスが変動する制度です。

ステータスが上がるとイベントへの特別招待が受けられる特典などがあり、消費者の継続利用を促進します。

AMTULで理解するBtoBマーケティング:当社「カイロスマーケティング株式会社」の事例

購買行動モデルは、一般的にはBtoC企業のマーケティングに当てはまりますが、AMTULはBtoB企業のマーケティングにも当てはめやすい特徴があります。

「カイロスマーケティング株式会社」は、マーケティングや営業の情報発信メディア「マケフリ」以外に、営業を楽にする企業向けツール「Kairos3」を提供しています。

今回は企業向けツール「Kairos3」を例として、「Awareness(認知)」から「Loyalty(愛用)」までを当てはめます。

AMTULのA「Awareness(認知)」

AMTULのA「Awareness(認知)」の段階において、カイロスマーケティング株式会社では、自社商材「Kairos3」の認知をゴールとしています。

自社で開催しているセミナーで「Kairos3」について触れており、セミナーに参加していただくことが「Awareness(認知)につながります。

「Awareness(認知)」を促進する施策として、自社セミナーの認知向上を目的に、セミナー開催の旨を外部集客サイトに掲載したり、メルマガでセミナー開催を告知したりしています。

AMTULのM「Memory(記憶)」

「Memory(記憶)」を促進する施策として、カイロスマーケティング株式会社では、メルマガを週1回の頻度で消費者に配信します。定期的な配信で、消費者と継続して接点を持てます。

メルマガ以外の施策には、セミナーもあります。「Kairos3」に関心がある層が興味を持つマーケティングや営業をテーマとしたセミナーを、週に複数回の頻度で開催しています。

AMTULのT「Trial(試用)」

「Trial(試用)」を促進する施策として、カイロスマーケティング株式会社では希望者に対して製品のデモ画面を確認していただく機会を設けています。

カイロスマーケティング株式会社が行っている工夫の1つに、「Awareness(認知)」でご紹介した、自社セミナーのアンケートでセミナー参加者にデモ希望か否かを確認する試みがあります。セミナー参加者がアンケートでデモ希望と回答した場合、カイロスマーケティング株式会社の担当から後日デモを案内しています。

「Memory(記憶)」をスキップし、セミナー参加「Awareness(認知)から直接デモ希望「Trial(試用)」に移行するため、短いスパンで次のステップへの移行を誘導できます。

AMTULのU「Usage(日常利用)」

AMTULでは、「Trial(試用)」の次は「Usage(日常利用)」に移行します。BtoBのマーケティングの場合、一般的に「Usage(日常利用)」の前後に社内での他社製品との比較・検討段階があるので、留意しましょう。

カイロスマーケティング株式会社では、日常利用の促進として、ツールの操作のしやすさを重視します。効果的なツールだとしても、使い勝手が悪ければ利用者は日常的に使用しません。

日常利用を促進するその他の試みとして、カイロスマーケティング株式会社には専任スタッフによるサポートがあります。専任スタッフは初期設定や操作方法のご説明や、活用プロセスをご提案します。

AMTULのL「Loyalty(愛用)」

「Loyalty(愛用)」を促進する施策として、カイロスマーケティング株式会社では、「Kairos3」を導入している企業を対象としたユーザー会を開催しています。過去のユーザー会では、Kairos3導入企業が活用事例をお話ししたり、ユーザー同士で活用方法をシェアしたりしました。

AMTULを使って、認知から愛用までのステップにおけるボトルネックを特定できる

AMTULは「認知、記憶、試用、日常利用、愛用」のうち、どのステップにマーケティング活動のボトルネックがあるかを特定する活用方法があります。

また、SaaS型のクラウドビジネスやサブスクリプションモデルは、消費者の購買行動がAMTULに沿っていることが多いため、AMTULを応用しやすいでしょう。トライアルがないサービスの場合、Trialの部分を「商談」や「問合せ」に置き換えて考えてもよいでしょう。

たとえば、M(記憶)が低い場合、消費者の記憶に問題があります。この場合、メルマガやSNS、オウンドメディアといった、製品を消費者の記憶に根付かせる施策が有効です。

AIDMAやAISASなどの、AMTUL以外の購買行動モデル

購買行動モデルは、AMTULだけではありません。この章では、AMTUL以外の押さえておきたい購買行動モデルをご紹介します。くわしく知りたい方は、こちらのまとめ記事「購買行動モデルとは?7つの購買行動モデルまとめ」をご確認ください。

基本的な購買行動モデルAIDMA

AIDMAは、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールによって提唱された、もっとも基本的な購買行動モデルです。多くの購買行動モデルは、AIDMAを参考にして作られています。

AIDMAは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字をとった表現です。Memoryを除いてAIDAとすることもあります。

AIDMAは、時代錯誤な購買行動モデルだという批判があります。なぜなら、AIDMAが提唱されたのは1920年代であり、当時の消費者は自ら情報を得る手段に乏しく、企業の営業担当者を通じて情報を得ていたからです。

最近では、購買行動の大半がWeb上で行われることも珍しくありません。そこで生まれたのが、後述するAISASやAISCEASのような、Web時代の購買行動モデルです。

Web時代の購買行動モデルAISAS,AISCEAS

AISASとは、Web上で情報収集や購買行動が可能になったことを受けて登場した、購買行動モデルです。

AISASはAIDMAと比較すると、Desire(欲求)がSearch(検索)に置き換わり、Memory(記憶)がShare(共有)に置き換わっています。AISASは、Webで検索した後に購入し、購入後に共有する点が特徴的です。

AISCEAS(アイシーズ)は、AISASモデルをさらに細分化した購買行動モデルです。AISASとくらべて、AISCEASは「検索」と「行動」の間にComparison(比較)とExamination(検討)が追加されています。

比較・検討のフェーズが含まれることから、BtoBでは活用しやすい購買行動モデルではないでしょうか。

SNS時代の購買行動モデルDual AISAS

Dual AISASとは、SNSやコミュニケーションアプリに対応した購買行動モデルです。Dual AISASはAISASを参考に作られました。

Dual AISASには、「広めたいA+ISAS」と、「買いたいAISAS」の2種類があります。くわしくは、以下の記事にてご確認ください。

Dual AISASをもっとくわしく学ぶなら
Dual AISASは、SNSを使ったマーケティングを行いたい担当者であれば、ぜひ押さえておきたい購買行動モデルです。くわしくは、「SNS時代の購買行動モデルDual AISASを徹底解説」にてまとめました。

コンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルDECAX

DECAXとは、コンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルの一種です。DECAXは、Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動)、eXperience(体験)のそれぞれの文字をとっています。

コンテンツマーケティングとは、有益なコンテンツを提供することを通じて、消費者とコミュニケーションとりながら、お問合せやリード獲得につなげるマーケティング手法です。

消費者が情報に触れる時間が増え、時間的なゆとりがなくなっている現代では、広告などを使ったプッシュ型のマーケティング手法は効果が薄れてきています。DECAXは、プル型のマーケティング戦略を考える上で、有効な購買行動モデルです。

DECAXをもっとくわしく学ぶなら
DECAXは、コンテンツマーケティングを行うマーケターであれば、ぜひ押さえておきた購買行動モデルです。くわしくは、「【DECAX】Webマーケターが知っておくべき購買行動モデルDECAXをわかりやすく解説」にてまとめました。

SNS時代の消費行動モデルSIPS

SIPSとは、ソーシャルメディアを頻繁に活用する消費者の行動を表した「生活者消費行動モデル」です。

SIPSは、Sympathize(共感する)、Identify(確認する)、Participate(参加する)、Share&Spread(共有・拡散する)の頭文字を取った造語で、消費者の参加や共有・拡散を重視しています。

これまでにご紹介した「購買行動モデル」とは異なり、Action(行動、購買)を1つのステップとしていません。購買行動はSIPSのParticipate(参加)に含まれますが、Participate(参加)はTwitter上でのいいねやリツイートといった、購買を伴わない行動も含みます。

SIPSをもっとくわしく学ぶなら
SIPSは、WebマーケターやSNSマーケターであれば知っておきたい消費行動モデルです。くわしくは、「SIPSとは?SNS時代の消費行動モデルを、事例付きで徹底解説」にてまとめました。

※この記事は、2021年7月9日に更新しました。