データドリブンマーケティングとは?メリットや課題・手順・成功事例を紹介

スマートフォンの普及などにより購買行動が複雑化している現代では、データに基づき「個」に対するマーケティング、すなわち「データドリブンマーケティング」が重要になってきています。

今回は、データドリブンマーケティングについて、その必要性やメリット・デメリット、進める手順などを解説します。さらに、データドリブンマーケティングに活用できるツールについても触れているので、マーケティング担当者はぜひ参考にしてください。

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データドリブンマーケティングとは

データドリブンマーケティングとは、かんたんにいうと「データを基に意思決定を行うマーケティング手法」です。データドリブンマーケティングでは、下記のようなデータをもとに客観的に事実を判断し、施策に落とし込みます。

  • ユーザーの行動履歴
  • 売上情報
  • 属性情報
  • リピート率

データドリブンマーケティングを取り入れることで、担当者の勘や経験による予測ではなく、「データ主導」によるマーケティング施策を展開できるようになります。

データドリブンマーケティングはなぜ必要か

データドリブンマーケティングが必要とされている理由には、次のようなものがあります。

  • 購買行動の複雑化
  • 取得できるデータ量の増大
  • 人工知能によるデータ分析の高度化

スマートフォンの普及以前は、ユーザーが情報を得る媒体はテレビや雑誌、新聞などに限定されていました。そのため、不特定多数に同一の情報を届ける手法で対応できており、マーケティング担当者の勘や経験による施策でも一定の効果が得られていました。

しかし、「K(勘)K(経験)D(度胸)」と言われる従来の手法では属人性が高く、また主観に基づくため判断基準も曖昧で、市場ニーズから大きくズレたマーケティング施策を展開するリスクがありました。

スマートフォンの普及により、購買行動は複雑化しました。購買行動モデルが細分化したことで、KKDでは太刀打ちできなくなってきたのです。さらに、IT技術の発達により、取得・蓄積できるデータ量が増え、人工知能による高度なデータ分析が可能になり、データドリブンマーケティングの重要性が高まっています。

データドリブンマーケティングのメリット

データドリブンマーケティングの導入には、次のようなメリットがあります。

  • データを客観的に比較・分析できる
  • マーケティング業務を効率化できる
  • 顧客満足度を高められる

データドリブンマーケティングでは、データにより購買行動を数値化するため定量的な判断が可能です。施策の結果に対する理由も割り出しやすく、また判断基準が明確になるため、個人によって施策の質が左右されるということもなくなります。

データに反映された顧客ニーズに沿って施策を展開するため、施策の無駄打ちがなくなり、業務効率化も期待でき、顧客満足度も向上するなど、多くのメリットがあります。

データを客観的に比較・分析できる

データドリブンマーケティングでは、データに基づき施策を展開するため、「なぜこの結果が出たのか」「施策のどこに課題があったのか」を分析しやすくなります。これに対して、データに基づかないKKDの場合は、主観的な感覚や価値観により施策を評価するため、実際の効果とは乖離が生まれる可能性が高く、無駄な施策を打ち続けることになりかねません。

明確な判断基準がないKKDとは異なり、データドリブンマーケティングでは、「データ」という基準があります。改善が必要な施策は改善を行い、効果が低い施策は中止し、効果が高い施策に注力するといった判断を下しやすいため、リソースを有効活用できます。

マーケティング業務を効率化できる

データドリブンマーケティングでは、「データ」という明確な基準があるため、スピーディーに施策の成果を判断できます。KKDで施策を展開していた際は、施策を打ち切るタイミング決定などの判断は個人に依存しており、判断に時間がかかることもありました。

「データ」による基準を設ければ、誰でも判断が下せるようになります。担当者の離職で判断を仰げない状況に陥ることもないため、効率的にマーケティング業務を遂行できます。

顧客満足度を高められる

購買行動が複雑化している現代において、不特定多数に同一の施策を展開する従来のアプローチ方法では、多くのユーザーを取りこぼします。その結果、顧客満足度の低下を招くリスクが高まります。

一人ひとりにパーソナライズされたアプローチが求められている現代では、データに基づいた「個」への対応が不可欠です。データドリブンマーケティングでは、まさに「個」に最適化されたアプローチが可能です。データ分析により、多種多様化したニーズに対して最適な情報・体験を提供できるため、顧客満足度の向上が図れます。

データドリブンマーケティングのデメリット

データドリブンマーケティングには次のようなデメリットも存在します。

  • ツールやインフラ整備が必要
  • データ分析を行う人材・スキルが必要
  • 信頼性・公平性が担保されたデータが必要

データドリブンマーケティングを実施するには、まずデータが必要です。そのデータを収集するには、ツールやインフラの整備が必須で、それなりのコストがかかります。また、収集したデータを分析するツールやスキルも欠かせません。

また、そもそも収集するデータの質が悪いと、分析から施策の展開までを無駄にしてしまいます。そのため、データ品質を高める努力と、データ品質を見極められる人材の育成が求められます。つまり、「データドリブンマーケティングは一朝一夕で取り組めるものではない」ということです。

データドリブンマーケティングの実現には、環境を整備し、人材を育てつつ、中長期的に準備する必要があることを念頭に置いておかなければいけません。

データドリブンマーケティングの企業事例

データドリブンマーケティングには、すでに多くの企業が取り組んでいます。そのなかでも今回は、ジンズホールディングスとパルコの事例を紹介します。

ジンズホールディングス

ジンズホールディングスでは、電通国際情報サービス(現:電通総研)の協力の下、データドリブンマーケティングを追求しています。JINSが取り扱うメガネは、買い換えサイクルの長い商品であるため、買い換えのタイミングで適切にアプローチができないと、顧客が競合に流れてしまいます。

そこで、通常時よりも多く来客がある新店オープン時にLINEを活用した施策を展開。スロットクーポンの実装に加えて、BIツールとの連携を行い、PDCAを回せる環境を構築しました。施策の展開後はBIツールにより取得したデータを分析し、次の新店オープン時に活用。より精度の高い施策の実行を可能にしています。

こうした取り組みにより、1店舗あたり、1回のクーポン施策で最大1か月の購入客数程度の会員数を獲得することに成功しています。

参考: 「いかにJINSファンを増やしていくか」LINEとLookerで実現するデータドリブン・マーケティング(電通総研)

パルコ

パルコでは、「よりよい接客をするためのデータ活用」を目指し、データドリブンマーケティングに取り組んでいます。所有するビルにパルコの世界観に共感してくれるテナントを入れるという特性上、ビルに来店した人数と、購入した人数のデータは取得できても、「誰が買って、誰が買わなかったか」といった細かなデータまでは取得が難しい状況にありました。

そこで導入したのが、「カエルパルコ(※)」という、ショップブログにカートボタンを設置したオンラインショッピングサービスです。そして、ブログとカエルパルコを統合したスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」もリリース。ブログ記事で「いいね」を押したお客さまがパルコに来店した際にPOCKET PARCOを立ち上げてチェックインすることで、パルコ側はお客さまの入店がわかります。

さらに、パルコでの買い物時に、POCKET PARCOに登録したクレジットカードで決済することで、「どのお店で、いつ、いくらの買い物をしたのか」「来店したけれど、手ぶらで帰った」といったことがわかるように仕組みを構築。この仕組みで取得したデータを活用することで、パルコでの「よりよいお買い物体験」を実現する施策の展開を可能にしています。

※2018年に「PARCO ONLINE STORE」に名称を変更し、2023年に「ONLINE PARCO」としてリニューアル

参考:データ活用の取り組みに「失敗」はない パルコの執行役員、林直孝氏に聞く、「データドリブンなサービス開発」の舞台裏(Wing Arc)

データドリブンマーケティングで求められるスキル

データドリブンマーケティングを実施するには、次のスキルが必要です。

  • 経営・経済に関する知識
  • ロジカルシンキング
  • 統計学
  • データ分析に関する知識
  • マーケティングの知識
  • データベース・データ処理の知識

データドリブンマーケティングでは、大量のデータのから必要なデータを抽出し、課題に対する施策を実行する必要があります。そのため、データ活用に関する知識・スキルをはじめ、ロジカルシンキングやビジネス知識など、多岐に渡る知識・スキルが求められます。特にデータ活用の知識・スキルは必須です。

需要に応じてデータ活用人材の育成を図る流れができつつありますが、世の中のDX推進の流れを受け、データ活用人材が不足しているのが現状です。人材を採用する機会も伺いつつ自社での育成にも力を入れていく姿勢が求められるでしょう。

データドリブンマーケティングの手順・進め方

データドリブンマーケティングは、次の手順に沿って実行します。

  1. データを収集する
  2. データを可視化する
  3. データを分析して施策を検討する
  4. 施策を実行して効果測定を行う

データドリブンマーケティングは組織全体で取り組むものです。特に、上層部にその重要性を理解されないまま推し進めると、施策の実行段階で頓挫する可能性が出てきます。そのため、施策の実行前までに上層部に理解を深めてもらう働きかけも必要です。

1:データを収集する

データドリブンマーケティングに欠かせないデータ収集の受け皿となる仕組みを構築します。具体的には、ECサイトやSNS、POSシステムなどが挙げられます。すでにこれらの受け皿があり、顧客関連情報を収集・蓄積している場合は、情報の一元管理を図る必要があるため、DWH(データウェアハウス)などのシステムの導入も検討しておきましょう。

2:データを可視化する

収集したデータはそのままでは使用できません。施策に落とし込むために使いやすい形式への変換・加工を行い、データを可視化します。特に、各部署で異なるシステムに蓄積されたデータは形式も内容も異なり、利用価値のあるものかどうかすらわからないものが多いため、利用できる形式への整理・加工が必要です。

膨大なデータの整理・加工は人力では行えません。BIツール、Web解析ツール、MAツールSFAツールなどを用いて、データを活用できる形にしましょう。

3:データを分析して施策を検討する

データを可視化した後は分析に取りかかります。テーマに沿ってさまざまな切り口から分析を行い、データを加工。事前に設定したKGI・KPIの達成を妨げる課題を見つけて、解決策となる施策を検討します。

この工程ではデータサイエンティストやアナリストといったデータに関する知識と、マーケティングに関する高度な知識が求められます。自社でも人材を育成しつつ、育成が追いつかない段階では必要に応じて外部の専門家に依頼しましょう。

4:施策を実行して効果測定を行う

いくつか立案した施策のうち、優先度の高いものから実行します。ここで「施策の実行」が目的化しないように注意しましょう。目的はあくまでKGI・KPIを達成するための課題解決であることを念頭に置き、施策を実行します。

実行したあとは想定どおりの効果が得られているかを定期的に効果検証し、想定から外れた場合は施策の軌道修正を行います。PDCAを繰り返す際にもデータを活用し、施策の精度を高めていきます。

データドリブンマーケティングに活用できるツール

前述のとおり、データドリブンマーケティングにはデータの可視化が求められます。収集・蓄積したデータはExcelやスプレッドシートでの分析も可能ですが、人力での対応には限界があります。また、人によって分析精度に差が出るため、安定的な施策の展開が難しいのが現状です。

この問題を解決し、安定的な施策の展開を実現するのが、MAツールの「Kairos3 Marketing」です。「Kairos3 Marketing」を活用すれば、見込み顧客の属性情報はもちろん、行動履歴まで一元管理が可能です。行動を基にしたスコアリングにより顧客の購買意欲の数値化・見える化が図れるため、アプローチをかける優先度がわかり、営業活動を効率化できます。

あわせて、営業支援ツールの「Kairos3 Sales」の導入もおすすめです。「Kairos3 Sales」では、商談数や成約数などのデータのほか、営業ごとの架電数やアポイント数などの行動数を可視化できます。営業活動におけるデータを蓄積・分析することで、データドリブンマーケティングを加速できます。

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