購買行動モデル「DECAX」の概要や事例、その他の購買行動モデルとの違いを徹底解説
DECAXとは、コンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルです。DECAXの特徴は、消費者目線に立ち消費者の行動をモデル化した点です。
今回は、DECAXの概要や事例をくわしくご紹介します。この記事を読めば、DECAXと、それ以外の購買行動モデルの違いが理解できるようになります。
この記事のもくじ
購買行動モデルDECAXの概要
まずは、DECAXの概要についてご説明します。
DECAXとは
DECAXとは、コンテンツマーケティングに対応した、購買行動モデルの一種です。DECAXを理解するためには、コンテンツマーケティングと購買行動モデルについて理解する必要があります。
コンテンツマーケティングとは、有益なコンテンツの提供を通じて、消費者とコミュニケーションとりながら、お問い合わせやリード獲得につなげるマーケティング手法です。オウンドメディアやオンラインセミナー、eBookなどがコンテンツマーケティングに該当します。
購買行動モデルとは、消費者がサービスや商品を認知、発見してから購入にいたるまでの過程を表したモデルです。最近の購買行動モデルでは、「消費者が購入後にSNSでシェアする」といった「購買後の行動」も、購買行動モデルに含めるようになってきています。
DECAXは、Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動)、eXperience(体験)のそれぞれの文字をとった購買行動モデルです。 DECAXは、2015年に電通が提唱しました。DECAXの特徴は、消費者視点と、消費者と企業の関係構築を購買行動に入れ込んだ点です。DECAXの各ステップは、後ほど例を交えながらくわしくご説明します。
DECAXとその他の購買行動モデルの違い
DECAXの特徴は、これまで登場した他の購買行動モデルと比較することで理解しやすくなります。もっとも基本的な購買行動モデルは、1920年代に作成された購買行動モデル「AIDMA」です。その後、購買行動モデルは消費者の購買行動の変化に応じて次々と誕生しました。
DECAXと従来の購買行動モデルの大きな違いは、従来の購買行動モデルは企業視点であるのに対し、DECAXは消費者視点である点です。消費者視点については、これからご紹介する2つの例でくわしくご紹介します。
消費者視点の1つ目の特徴は、DECAXは最初のステップが「Discovery(発見)」から始まる点です。
AIDMAやAISAS、AISCEASといった従来の購買行動モデルでは、最初のステップは「Attention(注意)」です。Attentionには、「企業の広告が、消費者の注目を集める」というニュアンスがあります。一方でDiscoveryには「消費者が、自ら発見する」というニュアンスがあります。つまり、従来の購買行動モデルは、「企業側の視点」であり、DECAXは「消費者側の視点」なのです。
DECAXに当てはめたマーケティング活動では、「消費者側の視点」にたち、相手のニーズを推し量ることが重要です。
消費者視点の2つ目の特徴は、DECAXにはEngageという概念がある点です。その他の購買行動モデルには、Engageは登場しません。Engageとは、消費者との良好な関係構築を意味します。従来の購買行動モデルでは、消費者は「検索・比較・検討」を通して、機能やスペックを中心に購入の意思決定をします。
DECAXにおいては、「消費者は、商品を購入決定する際に、機能やスペック以外の要素も見る」と考えます。機能やスペック以外の要素とは、「企業の価値観や商品に備わるイメージへの共感」です。
そのため、DECAXにおいては企業がビジョンやミッションを定期的に発信したり、商品の価値観を画像や動画で発信したりすることで、消費者との関係性を深めるのが重要なのです。
その他の購買行動モデルをくわしく知りたい方は、「その他の購買行動モデルとDECAXの違い」の章をご確認ください。
DECAXが提唱された背景
DECAXが提唱された背景には、消費者の購買行動の急速な変化があります。
現代は、情報があふれている時代です。Webで検索すれば、欲しい情報が無料で手に入ります。スマートフォンを使えば、いつでもどこでも情報が手に入ります。消費者からすれば、とても便利な時代になりました。しかし、企業からすると、情報があふれていることは大きな問題なのです。
なぜなら、多くの企業や個人の発信により情報があふれる現代では、発信した情報が消費者に届きにくいからです。
消費者の貴重な時間を企業が奪い合う現代では、企業側から消費者へ有益な情報を提供し、消費者に発見していただく必要があります。
従来は情報発信の主体が企業だったため、消費者の情報を奪い合う競合は企業が中心でした。しかし現代は、SNSの台頭に伴い、企業のみならず個人も気軽に発信できる時代になりました。消費者の情報を奪い合う競合は、YouTuberのような個人も含まれます。現代は、世の中のすべてのコンテンツが情報発信の競合といえます。
時代の移り変わりによる消費者の行動の変化から、コンテンツマーケティングというマーケティング手法が注目されるようになり、コンテンツマーケティングに対応する購買行動モデルとしてDECAXが提唱されました。
DECAXの5ステップと、企業に当てはめた例
DECAXには、5つのステップがあります。この章では、DECAXの5ステップを、例とともにご紹介します。
例では、あなたの会社がコーヒー豆を扱っていて、コーヒーに関するオウンドメディアの運営やメルマガの配信をしていると考えてください。
Discovery:発見
DECAXにおける最初のステップは、Discovery(発見)です。従来は、企業が広告を出し、読者に注意を向けさせるマーケティング手法が一般的でした。しかし、先にご説明したように、消費者に時間がない現代では、ありふれた企業の広告は、消費者に見向きもされないのです。
現代の消費者は、Webを活用して、欲しい情報を自ら取りに行きます。消費者が欲しい情報を取りに行く際、企業は自社の有益な情報に気づいていただく必要があります。企業がいくら有益なコンテンツを配信していても、消費者に気づいていただけなければ、意味がないからです。
あなたの会社がコーヒー豆を扱っていると仮定して、運営するコーヒーに関するオウンドメディアを消費者に発見していただきやすくするためには、SEO対策などが有効です。
Engage:関係構築
DECAXの2つ目のステップは、Engage(関係構築)です。Engageは消費者と良好な関係を構築するステップで、「このメディアは有益な情報を提供してくれている。信用できる」「他の記事も読みたい」と消費者に思っていただくことが大切です。
消費者と良好な関係を構築するためには、オウンドメディアでの定期的な有益情報の提供や、SNSやメールマガジンなどを通して消費者との接点を増やす、といった施策が考えられます。
特にメルマガは、継続して消費者と接点を持てるので、関係構築の方法としてはオススメです。
コーヒー豆を扱う会社を例とすると、会員登録者が興味を抱くような、コーヒー豆の知識やお得な情報の定期的な発信が有効です。
Check:確認
DECAXの3つ目のステップは、Check(確認)です。オウンドメディアなどを通じて、企業と消費者の間に良好な関係が築けていれば、消費者はその企業の商品を確認します。
Checkのステップにおいては、コンテンツの中立性や信ぴょう性を意識しましょう。日本ではステルスマーケティングなどのマーケティング手法も頻繁に用いられているため、消費者は情報の中立性や真偽に敏感です。
Checkのステップで情報が嘘だとわかったり、中立性のないコンテンツだとわかったりした場合は、今まで築いてきた消費者との信頼関係が水の泡です。
コーヒー豆を扱っている会社を例とすると、会社で運営するオウンドメディアでコーヒー豆についてや、コーヒーの美味しい飲み方などの有益な情報を提供します。消費者としっかり関係構築ができていれば、消費者はあなたの会社で販売しているコーヒー豆を確認しようとするでしょう。
Action:行動・購入
DECAXの4つ目のステップは、Action(行動・購入)です。Actionのステップでは、消費者は商品を購入します。
Actionのステップでは、消費者の商品購入を促す施策をしましょう。
コーヒー豆を扱う会社を例とすると、消費者の購入がスムーズに進むよう、決済方法を複数用意したり、Amazonのようにワンクリックで購入できたりする施策が考えられます。
Experience:体験
DECAXの最後のステップは、Experience(体験)です。消費者が購買行動にいたった後は、あなたのサービスや商品を体験します。体験した後は、現代では多くの消費者が、SNSやブログ、商品レビューサイトなどで感想をシェアします。
購入後の消費者によい体験をしていただくことは、DECAXの重要なポイントです。なぜなら、消費者が心からよい体験をし、その体験をシェアすることで、そのほかの消費者との関係構築がしやすくなるからです。
コーヒー豆を扱う会社を例とすると、Experience(体験)を促進する施策として、購入後のサポートの充実や、企業のオウンドメディアでの使い方や上手に活用するためのノウハウの発信が考えられます。
ちなみに、「利害関係者以外の第三者」の言葉が、説得力や信ぴょう性を高める心理効果をウィンザー効果といいます。
その他の購買行動モデルとDECAXの違い
購買行動モデルは、DECAXだけではありません。この章では、DECAX以外の主な購買行動モデルについてご紹介します。その他の購買行動モデルを知ることで、DEACXの特徴が見えてくるでしょう。
DECAX以外の代表的な購買行動モデルについては、「購買行動モデルとは?7つの購買行動モデルまとめ」」にまとめました。ぜひごらんください。
基本的な購買行動モデル:AIDMA
AIDMAは、購買行動モデルの中で、もっとも基本的な購買行動モデルです。AIDMAは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字をとった表現です。Memoryを除いてAIDAとすることもあります。
AIDMAにおける購買行動は、3つに分類できます。消費者が商品を認知する「認知段階」、商品に興味を持ち、欲しいと思う「感情段階」、購買行動を起こす「行動段階」の3つです。
AIDMAは、時代錯誤な購買行動モデルだという批判があります。なぜなら、AIDMAが提唱されたのは1920年代であり、当時の消費者は自ら情報を得る手段に乏しく、企業の営業担当者を通じて情報を得ていたからです。
最近では、購買行動の大半がWeb上で行われることも珍しくありません。そこで生まれたのが、後述するAISASやAISCEASのような、Web時代の購買行動モデルです。
Web時代の購買行動モデル:AISAS
AISASとは、Web上で情報収集や購買行動が可能になったことを受けて登場した、購買行動モデルです。
AISASはAIDMAと比較すると、Desire(欲求)がSearch(検索)に置き換わり、Memory(記憶)がShare(共有)に置き換わっています。AISASは、Webで検索した後に購入し、購入後に共有する点が特徴的です。
AISASを細分化した購買行動モデル:AISCEAS
AISCEAS(アイシーズ)とは、AISASモデルをさらに細分化した購買行動モデルです。AISASとくらべて、AISCEASは「検索」と「行動」の間にComparison(比較)とExamination(検討)が追加されています。
SNS時代の消費行動モデルSIPS
SIPSとは、ソーシャルメディアを頻繁に活用する消費者の行動を表した「生活者消費行動モデル」です。
SIPSは、Sympathize(共感する)、Identify(確認する)、Participate(参加する)、Share&Spread(共有・拡散する)の頭文字を取った造語で、消費者の参加や共有・拡散を重視しています。
これまでにご紹介した「購買行動モデル」とは異なり、SIPSはAction(行動、購買)を1つのステップとしていません。購買行動はSIPSのParticipate(参加)に含まれます。しかし、Participate(参加)はTwitter上でのいいねやリツイートといった、購買を伴わない行動も含みます。
SIPSは、WebマーケターやSNSマーケターであれば知っておきたい消費行動モデルです。くわしくは、「SIPSとは?SNS時代の消費行動モデルを、事例付きで徹底解説」にてまとめました。
※この記事は、2021年7月27日に更新しました。