サンクコスト効果とは?どこよりも分かりやすい入門編

サンクコスト効果とは、すでに支払ったコストに気をとられ、合理的な判断ができなくなってしまう心理効果です。あなたも、「せっかくだから」「もったいないから」などの理由で意思決定をしたことはないですか。これはまさにサンクコスト効果です。

この記事では、あなたの判断を迷わすサンクコスト効果について徹底解説します。

サンクコスト効果の概要

まずは、サンクコスト効果に関する基本を押さえましょう。

サンクコスト効果とは

サンクコスト効果を理解するためには、まずサンクコスト(埋没費用)について理解する必要があります。

サンクコスト(埋没費用)とは、「すでに支払ってしまい、取り返すことのできない金銭的・時間的・労力的なコスト」のことです。

そして、「サンクコスト効果」とは、「すでに支払ったコストを取り戻そうとする心理効果」です。サンクコスト効果の影響を受けてしまうと、サンクコストに気が取られ、合理的な意思決定ができなくなります。

「合理的な意思決定」とは、その時々ですべき最良の判断です。あなたは、多額の投資をして新規のマーケティングプロジェクトを立ち上げたとしましょう。やっと立ち上がった新規プロジェクトでしたが、顧客のニーズを読み間違い、完全に不採算事業になってしまいました。この場合、合理的な判断をすると、その事業からは撤退すべきだという判断になります。しかし、サンクコスト効果の影響を受けてしまうと、「これだけ費用、時間、労力をかけて立ち上げたんだから、かんたんに引き下がれない。追加の投資をしよう」と考えてしまうのです。

人間は、頭では分かっていても、感情で動いてしまう生き物なため、サンクコスト効果の影響を受けてしまいがちです。サンクコスト効果の罠に陥った結果、合理的ではない判断をしてしまうことは、ビジネス、プライベート問わずよく起こります。

サンクコスト効果の有名な例

サンクコスト効果を証明する有名な例をご紹介します。あなたは、次の場面にどのように対応しますか。

あなたは、70キロほど離れた街で開催される、バスケットボールの試合を観戦する計画を立てました。あなたはすでに前売りチケットを50ドル(約5500円)で購入しています。ところが、試合当日の天候は吹雪で試合会場に行くのはとても大変です。さて、あなたはどうしますか。

    1:試合会場に行く
    2:暖かいあなたの家でテレビ観戦する

サンクコスト効果の影響を受けやすい人は、「1」を選択します。吹雪の中での移動は危険です。交通も麻痺するため、試合開始に間に合わない可能性もあります。しかし、チケットの代金が50ドルもしたので、会場に行かなければ「もったいない」と感じてしまうのです。

では、次の場合はどうでしょうか。

試合当日の天候は、先ほどと同じく吹雪です。ただ、観戦チケットは運よく友人からプレゼントされたものです。さて、あなたはどうしますか。

    1:試合会場に行く
    2:暖かいあなたの家でテレビ観戦する

こちらの場合では、「2」を選択しますよね。「もらったチケットだし、無理して行くことはない。家で観戦を楽しもう」と判断するでしょう。

チケットを「自分で購入した場合」と「プレゼントでもらった場合」とで、判断が変わりました。自分で購入した場合はサンクコスト効果が働き、吹雪の中でも試合会場に行くという選択をしてしまうのです。

この例は、サンクコスト効果が、あなたの合理的な判断をいかに妨げるかを如実に表しています。

サンクコスト効果とコンコルド効果は同じ意味

サンクコスト効果とよく一緒に紹介される心理効果が、コンコルド効果です。サンクコスト効果とコンコルド効果は同じ効果を意味しています。

コンコルド効果は、超音速旅客機「コンコルド」の商業的失敗が名前の由来です。

コンコルドは、定期運行路線をもった世界で唯一の超音速民間旅客機で、開発当初は世界中から大きな注目を浴びました。しかし、開発を進めていくなかで、旅客定員の少なさや燃費の悪さなどの問題により、開発を進めても採算が取れないことが判明します。

採算が取れないなら、開発を中止するのが合理的な判断です。

しかし、すでに相当な額の資金を投資していた経営陣は、開発中止の意思決定ができず、プロジェクトを続けてしまいました。

4000億円の開発費を回収しようと経営を続けたものの、結果的に数兆円もの大きな赤字を出して、全機が運行停止になりました。

コンコルドの一連の商業的失敗も、サンクコスト効果によって、合理的な判断ができなくなった結果です。

サンクコスト効果の身近にある事例

サンクコスト効果によって合理的な意思決定ができなくなる例は、身の回りにたくさんあふれています。本章では3つのサンクコスト効果の事例をご紹介します。

サンクコスト効果の事例1:書籍を購入した場合

あなたは話題のビジネス書を求めて、書店まで足を運びました。書籍の値段は2,500円です。あなたは書籍を購入し、とても楽しみにしながら、本を読み始めました。

ところが、序章を読み終えた時点で、内容も面白くなく、「この本から得られることはなさそう」と感じます。ここであなたはどうしますか。

合理的に判断するのであれば、あなたはすぐに読書をやめて、これ以上時間を無駄にしないようにするべきです。しかし、多くの人は、書籍に費やした費用や、書店までまで買いに行った労力を考えて、「もったいないし…」というサンクコスト効果が働き、最後まで読もうとしてしまいます。

本来は「今後この本が面白くなる可能性」と「読書を中断した場合に得られる機会」を比較し判断するのが合理的な判断をするための基準となるはずです。しかし、金銭的コストと労力的コスト(サンクコスト)が判断する基準に含まれてしまったがために、非合理的な判断をしてしまうのです。

サンクコスト効果の事例2:ランチで列に並んだ場合

あなたはランチを食べようとお店を探し、列ができているお店を見つけました。「列ができているなら美味しいのではないか」「列もすぐに進むだろう」と考えて、あなたは列に並び始めます。

しかし、20分並ぶものの、なかなか列は進みません。店内を覗いてみると、まだまだ時間がかかりそうです。思い返してみれば、あなたは特別このお店で料理を食べたいわけではないですし、お腹も減ってきています。あなたなら、どうしますか。

合理的に考えるのなら、あなたは列から外れて、もっと早く入店できる他のお店に行くべきです。しかし、「せっかくここまで時間をかけて並んだから、もう少し並ぼう」というサンクコスト効果が働くと、列に並び続けるという選択をしてしまいます。

サンクコスト効果の事例3:転職の場合

あなたは、国家資格が必要な、ある職業に憧れ、学生時代に必死に勉強しました。猛勉強の末に国家資格を獲得し、あなたは憧れの職業に就けました。

3年間ほど勤めたものの、その仕事はあなたが思っていたような仕事ではなく、憧れた当初の志も失われてしまいました。働く中で、他に興味のある仕事も見つかり、「他のことに挑戦してみたい」という気持ちも強くなっていきます。こんなとき、あなたならどうしますか。

サンクコスト効果の影響を受けてしまうと、国家資格を獲得するために費やした時間や学費、努力などのサンクコストに目がいってしまい、「転職するのはもったいない」と考え、同じ職に留まる結果になるでしょう。

もちろん、必ずしも「転職」が正解とは限りません。しかし、サンクコストのみに目を向けてしまうと、あなたは新たな可能性を切り開くチャンスを逃してしまうかもしれません。

サンクコスト効果に陥らないための対策

サンクコスト効果は、ビジネスシーンや日常生活でよく見かけます。この章では、サンクコスト効果に陥らないための対策をご紹介します。

サンクコスト効果の対策1:ゼロベースで考える

ゼロベースで考えるとは、過去にとらわれず、常に白紙の状態で考えることです。具体的には、「最初に戻れるならどうするか?」と自分に問いかけることです。

先ほどご紹介した書籍の例を、ゼロベースで考えます。書籍を購入する前に戻れるとしたら、あなたはその書籍を買いますか。もし答えが「No」なら、読書をやめて、他の有意義なことに時間を使いましょう。

サンクコスト効果の対策2:機会費用を考える

意思決定をするときは、サンクコストではなく、機会費用(オポチュニティーコスト)に目を向けましょう。機会費用とは、ある選択をしたために、逃してしまった機会のことです。

たとえば、仕事を休んだ場合の機会費用は、給料です。反対に、仕事に行った場合の機会費用は、家族や友人と過ごす楽しい時間です。

面白くない書籍を読み続けて発生する機会費用はなんでしょうか。もっとためになる他の書籍を読めたかもしれませんし、友人や家族と親密な時間を過ごせたかもしれません。意思決定の際は、機会費用を判断基準にすることで、あなたにとってより有益な選択ができます。

サンクコスト効果の対策3:第三者の声を取り入れる

利害関係のない第三者の視点に立つと、前章でご紹介した事例も合理的に判断できるはずです。

しかし、当事者となると合理的な判断が難しくなるのが人間です。たとえサンクコスト効果を理解していたとしても、人間はサンクコストに気が取られがちです。

そこで、信頼できる第三者に、状況を見てもらいましょう。あなたの視点のみで判断する前に、客観的な意見を求めるのは有効な対策です。

ただし、第三者の声を求めるときは、1つだけ注意すべきことがあります。それは、ハロー効果に引っかからないようにすることです。ハロー効果とは、人やものごとの特徴が、そのほかの要素の評価にも影響を与える心理効果です。有名大学の出身、ある企業の社長など、華々しい経歴に惑わされず、あなたの話をよく聞き、真摯に相談に乗ってくれる人の意見を取り入れましょう。