バーナム効果とは?占いに学ぶ、共感を生むキャッチコピーや信頼を得る営業トークの作り方
みなさんは「あなたは思慮深く、物事の本質を見極めようとするタイプです。しかし、状況次第では大胆に行動できる人でもあります。」と言われたら、ドキッとしませんか。今回は、占いからマーケティングまで活用できる、「バーナム効果」についてご紹介します。
この記事のもくじ
バーナム効果の概要
まずはバーナム効果の概要をおさえましょう。
バーナム効果とは?
バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような曖昧で一般的なことを言われると、自分にだけぴったりと当てはまっているように感じてしまう心理現象です。
「あなたは普段明るく振舞っていますが、1人になるとくよくよと思い悩んでしまう傾向があります」と言われれば、「確かにそうかもしれない」と思いませんか。
このような文章で注意すべき文言は、明るく振舞うことも、思い悩んでしまうことも、誰にでも当てはまりそうな、よくある事実であることです。
バーナム効果の実験
パーナム効果の実例をみてみましょう。アメリカの心理学者バートラム・フォアは、学生たちに性格検査を実施し、分析結果として以下のような文章を渡しました。
もうお分かりだと思いますが、これらはバーナム効果を活用した、誰にでも当てはまる可能性が高い文章です。
実はこれらの文章は、フォアが星占いの文言を組み合わせて作文した文章だったのですが、被験者の多くは「この分析は見事に当たっている!」と回答しました。
星占いの文言を組み合わせて作っただけなのに、なぜ被験者は「見事に分析が当たっている」と感じたのでしょうか。その仕組みは、次の章でご紹介しています。
バーナム効果が作用する背景
バーナム効果が作用する背景には「予言の自己成就」と「確証バイアス」があります。
予言の自己成就
予言の自己成就とは、根拠のない予言や思い込みを持つと、人は無意識的にその予言を実現するような行動をとってしまうことです。
上図は、予言の自己成就を表す例です。親に「あなたは親切な子だ」と言われ続けて育った子供は、「自分は親切だ」という思い込みを持つようになります。するとその子供は、その思い込みに沿って無意識的に親切な行動を取るようになるのです。
結果的に親が子供に抱いていた予期や期待は、現実になります。
予言の自己成就は、教師や親から期待されて育った子供は、そうでない子供よりも成績が向上する「ピグマリオン効果」や、その反対に周囲から期待されずに育った子供は、その期待通りに成績が低下してしまう「ゴーレム効果」からも確認できます。
たとえ科学的な根拠がない「A型の人は几帳面な性格だ」といった内容でも、そのように言われ続けて育つと、人はその期待通りに無意識的に几帳面な性格になっていくのです。
確証バイアス
確証バイアスとは、自分に都合のよい情報や証拠を無意識的に集め、自分の先入観を強化しようとする心理作用です。
「あなたは活かしきれない才能を持っています」と言われれば、あなたの脳は活かしきれていない才能に関する情報を集め始めます。「そういえば、小さい頃は絵を描くのが得意で、いくらかのコンクールに入賞したこともあったな。もしかしたらそれのことかもしれない」といった具合です。
確証バイアスは、ビジネスをする上でも知っておくべき重要な心理作用です。新規事業の立ち上げなどの場面においては、成功に対する思い込みが確証バイアスを働かせ、GOサインを得るために都合のよい情報ばかりを集めてしまうことがあります。
バーナム効果をマーケティングに活用する方法
マーケティングでは、お客さまに「まさに自分のことだ」と思っていただき、共感していただくことが重要ですよね。バーナム効果は、ありきたりなキャッチコピーを、「自分ごと」に感じられるキャッチコピーに変身させます。
マーケティング:バーナム効果で効果的な広告コピーを作る
マーケティングにおけるバーナム効果の代表的な使いどころは、広告のキャッチコピーです。
ダイエットのコーチングやサプリメントを提供する会社の広告のキャッチコピーを考えてみましょう。下図は、バーナム効果を使ったキャッチコピーの例です。
キャッチコピーは、読み手に「これって自分のことだ」と感じてもらうことが重要です。
「何をやっても痩せられなかった、努力家のあなたへ」という文章は、バーナム効果を使って、読み手に「自分ごと」にしてもらうよう細工してあります。
「なにをやっても」という文言は、人によって受け取り方が違います。ジムに通い、食事制限をして本格的にダイエットをした人も、ダイエット器具を買ってダイエットした人も、効果が出ていなければ「なにをやっても痩せられなかった」と感じるでしょう。
また、「努力家のあなたへ」という文言は、認知的不協和という心理効果を用いています。ダイエットがうまくいかなかった人は、自分のことを努力家だとは認識しないはずです。むしろ、「自分は努力ができない人間だ」と思っているかもしれません。
しかしこの広告では、「さまざまな手を尽くしダイエットをした努力家」と読み手を捉えて語りかけています。今まで読み手の中にあった「自分は努力家ではない」という思いと、「努力家のあなたへ」と語りかけられた事実が矛盾し、この広告を見た人は不快感(不協和)を覚えます。
認知的不協和理論において、不快感を感じた人が取る行動は2つです。
1つ目は、自分の行動や態度を改めることです。上記の例であれば、自分を努力家と認め、再びダイエットに励むでしょう。
2つ目は、新しい事実を否定することです。上記の例であれば、自分は努力家ではないと考え、ダイエットの再開をあきらめます。
読み手は広告コピーの言葉をいつも素直に受け取ってくれるとは限りませんが、バーナム効果と認知的不協和を組み合わせて文章を作れば、効果的な広告コピーが作れます。
バーナム効果を活用してお客さまを誘導する
バーナム効果は、お客さまを誘導する文章をより魅力的にします。
ランディングページやサービス資料などの長い文章の最後に、自社開催しているセミナーにお客さまを誘導する文章を挿入するとします。下図の文章は、バーナム効果を使わない文章と、使った文章を比較しています。
バーナム効果を使った文章は、ここまで文章を読まれている「あなた」に対して語りかけているので、バーナム効果を使っていない文章に比べて読み手に親近感を持たせることができます。また、「とても勉強熱心な方なはずです」という文言は、バーナム効果を使っています。
勉強熱心かどうかは、明確な基準がありません。文章を読み終わったことで「勉強熱心だ」と言われれば、それが勉強熱心である理由になるので、読み手はそう思うほかありません。「あなたは勉強熱心だ」と言われれば、読み手は悪い気はしませしんし、「そんなあなたにこそ参加してほしい」と言われれば、「じゃあ行ってみようか」という気持ちになるのです。
バーナム効果を営業に活用する方法
営業はお客さまの理解者になることが重要ですよね。お客さまは「自分のことをちゃんとわかってくれている」と感じる営業担当者に仕事を任せたいと思うからです。バーナム効果は、営業がお客さまのよい理解者になることを助けます。
バーナム効果を使った営業トークの例:その1
バーナム効果は、営業がお客さまの理解者となり、信頼を得る助けになります。バーナム効果を使った営業トークをうまく組み立てるためには、ポジティブな面とネガティブな面を同時に伝えるようにしましょう。
本文の冒頭でご紹介した占いの例であれば「あなたは仕事に真面目に取り組んでおり、誠実な方ですが、少し几帳面なところがあるようです」のような形です。お客さまの悩みを察知し先回りして伝えることで、「わかってくれているのだな」という印象を与えることができます。
上図の例を参考に、バーナム効果を使った営業トークを考えてみましょう。上図の例では、「コストマネジメントが上手い会社なので、お値段は気になりますよね」という営業トークをしています。コスト削減は多くの会社において関心があるテーマです。
確証バイアスでご説明したように、「コストマネジメントが上手い会社」といわれれば、「あぁ、確かにうちの会社はコストマネジメントのために、あんなこともやっていたなぁ」と、相手はつじつまを合わせるため都合のよい情報を脳内で集め始めるでしょう。何より、「コストマネジメントが上手い会社」と言われて、謙遜することはあっても本気で否定することは稀でしょうし、お客さまは悪い気はしません。
その後、「(コストマネジメントに気をつけているからこそ)お値段は気になりますよね」という話に持っていきます。お客さまは、多くの場合で料金が気になるはずですので、特別なことを言っているわけではありません。
しかし、「御社はコストマネジメントが上手い会社と聞いておりますので」という前置きがあるため、お客さまは「ちゃんと自社のことをわかってくれているのだな」という気持ちになるのです。
バーナム効果を使った営業トークの例:その2
もう1つ、先ほどと同様のバーナム効果を使った営業トークの例を見ていきましょう。上記の例文は「御社ほどの会社であれば、セキュリティ対策はしっかりと講じていると思います。」という内容から話を始めていきます。
情報セキュリティが重要である現在、情報セキュリティ対策をしていない会社はほとんどないでしょう。また、この発言に対し、「弊社は情報セキュリティ対策をしていません」と言われることはまずありません。
その後、「その反面、運用が煩雑になりお困りの点もあるのではないですか」と伝えています。情報セキュリティ対策は、講じれば講じるほどに運用が煩雑になりがちですので、この問題は多くの企業が抱えていると考えられます。
しかし、お客さまが抱えている問題を先回りしてお伝えすることで、1つ目の例と同様に、「この営業はちゃんとわかってくれている」と感じていただくことができるのです。