イエスセットとは? 相手から「イエス」を引き出す交渉術を徹底解説

イエスセットは、なんとしてもイエスと答えていただきたい質問に「イエス」と答えていただくための、心理学に基づいた交渉術です。もしもあなたが営業職なら、イエスセットをぜひ身につけておきましょう。あなたが営業職でなかったとしても、イエスセットに惑わされないための方法として、ぜひごらんください。

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イエスセットの概要

まずはイエスセットの概要をつかみましょう。「イエスセットとは」「イエスセットが有効な理由」「イエスセットの使い方」の3つを紹介します。

イエスセットとは

イエスセットとは、なんども「イエス」と返事をしていると次の質問にも「イエス」と答えやすくなってしまう、という、心理学に基づいた交渉テクニックです。「イエスセット話法」と呼ばれることもあります。

イエスと言っていただきたい「本命の質問」の前に、「かならずイエスと答えていただけるであろう質問」を積み重ね、何度かイエスと答えていただくことで、本命の質問にもイエスと言っていただきやすくなります。

イエスセットは、恋愛や営業などの、なんとしても相手から「イエス」が欲しい場面においてよく用いられる交渉術です。

なぜイエスセットは有効なのか?

イエスセットが有効な理由は、「一貫性の法則」という心理法則で説明できます。

一貫性の法則とは、行動・信念・態度などを一貫させたいという、人間の心理的傾向です。「あの人、言ってることがコロコロ変わるよなあ」とは、あなたも思われたくないですよね。人は無意識のうちに、自分の行動や態度に、一貫性を持たせようとします。

たとえば、自分の目標を周囲の人に宣言すると目標達成率が高くなる、パブリックコミットメントという目標達成術があります。パブリックコミットメントが有効である理由は、「宣言した内容と矛盾した行動をとりたくない」という、一貫性の法則があるからだとされています。

質問に対して何度も「イエス」と同意していた場合、その態度を一貫させようと、次の質問にも「イエス」と言ってしまうわけですね。

イエスセットの使い方

この節では、イエスセットを使わなかった会話例と、イエスセットを使った会話例を紹介します。2つの例を見くらべることで、イエスセットの効力を実感していただけるはずです。

まずは、イエスセットを使わなかった会話例をごらんください。

上記の会話例では、イエスセットを使わなかったため、断られてしまいました。あなたが聞き手だったとしても、スポーツジムに興味がなければ、当然断りますよね。

では、イエスセットを使った会話例をごらんください。あなたはスポーツジムの無料体験に、「NO」と言うことができるでしょうか。

このイエスセットを使った会話例のように、何度もイエスと答えていたら、最後の質問にも、ついつい「イエス」と答えてしまいそうではありませんか。

イエスセットを上手に活用する3つのポイント

この章では、イエスセットを実際に活用するための、3つのポイントを紹介します。

イエスセットのポイント1:かならずイエスと答えていただける質問を用意する

イエスセットを成功させるためには「かならずイエスと答えていただける質問」を用意する必要があります。

「かならずイエスと答えていただける質問」は、大きく分けて2つあります。それは「誰からもイエスと答えていただける質問」と「両者の間ですでに合意があるためイエスと答えていただける質問」です。

前の章で紹介した「イエスセットを使った会話例」は、「誰であってもイエスと返ってくる質問」で構成されたイエスセットです。改めてご確認ください。

「もう夏ですね」という質問は、常識的に考えて、季節が夏であれば「NO」とは返ってこない質問です。「暑いと肌の露出が増える」「そんな時に体が仕上がっているとかっこいい」という質問もまた、常識的に考えて、ほとんどの人は「イエス」と答えるよりほかにないでしょう。

「イエス」と答えていただけなければ、イエスセットは効力を持ちません。イエスセットを成功させるため、かならずイエスと答えていたける質問を用意しておきましょう。

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イエスセットのみならず、商談における「目的のある雑談」について、別記事の「 アイスブレイクを営業に取り入れる!お客さまの緊張をときほぐし、商談を円滑にする3つの話題」にまとめています。あわせてごらんくださいませ。

イエスセットのポイント2:質問は3つ用意する

イエスと答えていただける質問は、3つ用意しておきましょう。

イエスセットが有効な理由は、「一貫性の法則」です。一度「イエス」と答えたくらいでは、まだまだ返答に一貫性があるとは言えません。イエスセットが効力を持ち始めるには、最低でも3回「イエス」と答えていただく必要があると言われています。

ただし、イエス・ノーで答えられる質問を5回も10回も繰り返してしまうと、まるで尋問のようになってしまうので注意が必要です。

イエスセットのポイント3:イエスセット後の、本命の質問を用意する

特にあなたが営業職であるなら、イエスセットなどの交渉テクニックを用いる前に、この会話で何を引き出したいのか、という本命の質問は明確にしておきましょう。

本命の質問の例

  • 無料のオンラインデモにご興味ありませんか?
  • ご予算は△△くらいいただけそうでしょうか?
  • 稟議にあげていただけそうでしょうか?

イエスセットを用いる際には、イエスセットを用いた先のゴールも描いておく必要があります。

営業がヒアリングすべき10項目
営業のヒアリングにおける「聞き出したい内容」を「営業ヒアリングシートのテンプレート|各ヒアリング項目も徹底解説」でまとめています。あわせてごらんください。

イエスセットを営業に応用する

イエスセットは、営業トークのテクニックとして非常に有効です。この章では、売り込みっぽくない、自然な形でイエスセットを営業トークに活用する方法を紹介します。

イエスセットを、自然な形で営業に応用するには…

イエスセットに限った話ではありませんが、いわゆる「交渉術」と呼ばれるものは、相手に気づかれてしまった途端に効力を失います。あなたも、「この人、交渉術を使って私を説得しようとしているな…」と気がついたら、何だか冷めちゃいますよね。ひょっとすると、不信感すら抱いてしまうかもしれません。

イエスセットなどの交渉術は、相手に不信感を抱かれないように、自然な形で活用する必要があるのです。

イエスセットを、自然な形で営業に応用するには、お客さまと営業担当者との間ですでに同意を得ている事柄を「確認する」という形で、イエスを積み重ねるとよいでしょう。

【具体例】営業における自然なイエスセット

商談の場でイエスセットを応用する際には、「すでに合意が取れている内容」を3回確認するという形式が自然です。3回「イエス」をいただいた後に、本命の質問を行いましょう。

ただし、いくら本命の質問とはいえ、「購入していただけますか?」という質問はあまりに唐突すぎるので、「お客さまの状況を伺うためのきっかけ」くらいの質問が、商談の場では自然です。

この会話例では、商談の内容を確認する、という形でイエスセットを応用していますが、商談の内容以外にも、商談相手の事業内容・会社の所在地など、事前に調べれば「イエス」を獲得できる質問はたくさん見つけられるはずです。

商談前の事前準備について
営業は準備が9割と言われます。商談前の事前準備について、別記事の「営業担当者が商談前に必ず準備しておくべき3つのこと。〜商談前の事前準備が商談の質を高める〜」にまとめています。あわせてごらんくださいませ。

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