いちから学ぶ購買行動モデル。時代ごとの特徴と、マーケ業務に役立てる考え方もご紹介
購買行動モデルは、消費者がサービスや商品を認知、発見してから購入にいたるまでの過程を表したモデルです。
購買行動モデルを知ることで、消費者の購買行動への理解に繋がったり、販売促進の施策を考えやすくなったりします。購買行動モデルは、消費者が購買にいたるまでの一連の行動や感情の推移を記すカスタマージャーニーマップを考える際に役立つモデルといえるでしょう。
今回は、購買行動モデルの概要や、購買行動モデルを理解する上で押さえておきたいポイント、代表的な7つの購買行動モデルをご紹介します。
この記事を読むことで、購買行動モデル自体の概要や、代表的な購買行動モデルがまるっと理解できます。
この記事のもくじ
購買行動モデルとは
購買行動モデルとは、消費者がサービスや商品を認知、発見してから、購入にいたるまでの過程を表したモデルです。
現代の消費者の購買行動は、多様化しています。インターネットやSNSの登場は、消費者の購買行動の多様化に拍車をかけました。多様化した消費者の購買行動に追従するために、今ではさまざまな購買行動モデルがあります。
勘違いされがちですが、最新の購買行動モデル以外も、現代の消費行動に当てはめて活用できます。たとえば、1920年代に提唱された「AIDMA」も、現代の消費行動に当てはまる場合があります。
それぞれの時代における購買行動モデルの特徴は、次の章でくわしくご紹介します。
購買行動モデルは、各モデルの暗記が重要なのではなく、「応用」が肝心です。
先ほど記載した通り、現代の消費者の購買行動は多様化しています。そのため、マーケティング実務において、「弊社のお客様の購買行動はAISASだ」「いやいや、SIPSだ」といった議論は不毛です。
消費者の購買行動には無数のパターンがあり、商材やシチュエーションによって異なります。そのため、購買行動モデルは「応用」できなければ実務に活かせないのです。
購買行動モデルを応用するためには、各時代ごとにざっくり傾向を掴んで頭に入れておきましょう。
購買行動モデルは3種類に大別される
提唱された時代によって、購買行動モデルは3種類に大別できます。
3種類の購買行動モデルは、左から順に提唱時代が新しいものです。SNS時代に誕生した購買行動モデルのみが、現代の消費行動に当てはまるわけではありません。
この章では、それぞれの購買行動モデルの詳細をご紹介します。
マスメディア時代の購買行動モデル
もっとも初期の購買行動モデルは、マスメディア時代の購買行動モデルです。インターネットが普及する前の購買行動は、新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアを通じた購買行動が主流でした。
マスメディア時代の購買行動モデルには、AIDAやAIDMA、AMTULなどがあります。マスメディア時代の購買行動モデルの特徴は、「消費者は企業から受け取る限定的な情報の中から、購入の判断をする」点です。
マスメディア時代は、企業と消費者の間に情報の非対称性があり、消費者は商品の情報に容易にアクセスできませんでした。対して、後の時代に生まれる購買行動モデルには、消費者自ら情報を認知したり検索したりするステップがあります。
消費者が能動的に情報を得にくいマスメディア時代では、消費者は新聞や雑誌といったマスメディアの広告から得られる情報を頼りに購買行動を取ります。
Web時代の購買行動モデル
インターネットが個人に普及すると、Webを通じた購買行動が活発化しました。それに伴い、Webを通じた一連の購買行動を表した購買行動モデルが登場しました。
Web時代の購買行動モデルには、AISAS、AICEAS、DECAXなどがあります。
Web時代の購買行動モデルの特徴は、「検索」や「シェア」です。Webの登場によって、消費者は欲しい情報を気軽に検索し、自分で情報収集できるようになりました。
Web時代の購買行動においては、Webを使って個人で情報収集できるため、企業の営業担当者が接触する前に、購買の意思決定の大半が済んでいる、ということも大いに起こり得ます。そのため、企業はWebで自社の商品の魅力を営業担当者に訴求できるかが重要です。
さらに、Webの登場によって、口コミは爆発的に拡散されるようになりました。消費者は、商品の購入検討にあたり口コミを判断材料とします。よい噂も悪い噂も、広まるときは一瞬です。Web時代では、企業は消費者によりよい体験をしていただき、消費者がよい口コミを共有しやすい環境を作ることが重要です。
SNS時代の購買行動モデル
SNSが普及すると、SNSを通じた購買行動が見られるようになりました。SNSを通じた購買行動が見られるようになったのは、2010年以降くらいからです。SNSを通じた購買行動モデルはもっとも新しい分類に入ります。
SNS時代の購買行動モデルには、SIPSやDual AISASなどがあります。
SNS時代の購買行動モデルの特徴は、「拡散」と「共感」です。
誰もが情報発信できるSNSは、大きな拡散力を持っています。
SNSで拡散された情報を目にした消費者が「共感」し、さらに「拡散」することで、多くの消費者に情報が届きます。結果、従来であれば商品情報が届かない消費者層が、拡散された情報を受け取り、商品購入を検討する可能性が高くなります。
SNS時代の購買行動では、自社のターゲットとなるような消費者層に限らず、多くの消費者に「共感」「拡散」されるようなコンテンツが重要です。
参考:購買行動モデルを理解する上での注意点
現代の消費者は、消費行動が多様化しています。
購買行動モデルは消費者の一般的な消費行動の理解する上では手がかりになりますが、実際は購買行動モデル通りに消費者が行動するとは限りません。
SNS時代に誕生した購買行動モデル「SIPS」を例とすると、現代の消費者の消費行動は、必ずしもSIPSの購買行動モデルの通りに当てはまりません。購買にいたるまでには、その他の行動も取ります。
消費行動が複雑化した現代においては、企業は消費者を「集団」としてではなく「個」として捉えると、消費行動をより正確に把握できます。
消費者を個とみなすマーケティング手法を、「One to Oneマーケティング」と言います。
押さえておくべき代表的な7つの購買行動モデル
マーケターが押さえておくべき代表的な購買行動モデルは、7種類あります。それぞれの購買行動モデルが提唱された年代順に、1つひとつご紹介していきます。
購買行動モデル1:AIDMA
今回ご紹介する中で、もっとも古い購買行動モデルはAIDMAです。AIDMAは、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールによって提唱されました。多くの購買行動モデルは、AIDMAを参考に作られており、AIDMAはもっとも基本的な購買行動モデルと言えます。
AIDMAにおける購買行動は、上記の流れです。まずは、企業は広告などで消費者の注意を引き、商品に興味を持っていただきます。それから、その商品を「欲しい」と思った消費者は、その情報を記憶にとどめ、最終的に購買にいたるという流れです。
AIDMAは、もっとも基本的な購買行動モデルです。1920年代の消費者は、みずから情報を得る手段に乏しく、マスメディアの広告や企業の営業担当者を通じて情報を得ていました。
購買行動モデルAIDMAをくわしく学ぶなら、「AIDMAとAISASの違いとは?マーケティングに必要な購買行動モデルをわかりやすく解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル2:AMTUL
AMTULは、AIDMAに「顧客ロイヤリティ」の概念を加えブラッシュアップした購買行動モデルです。
消費者は自分が気に入っているブランドや、よいと思った商品に愛着を抱き継続購入する傾向があります。AIDMAから派生したAMTULには、「よい商品を、一人ひとりの消費者に長く使っていただく」という消費者志向の考え方が根底にあります。AMTULは、トライアルやロイヤリティといった概念をうまく購買行動モデルの中に落とし込んでいるため、サブスクリプションモデルのサービスと相性がよいと言えます。
購買行動モデルAMTULをくわしく学ぶなら、「購買行動モデルAMTULとは?AIDMAやAISASとの違いも解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル3:AISAS
AISASとは、Web上で情報収集や購買行動が可能になったことを受けて登場した、購買行動モデルです。AISASは、消費者が購買行動時にインターネットを活用することを想定しています。
AISASは、AIDMAと比較すると、DesireがSearchに置き換わり、MemoryがShareに置き換わっていることがわかります。AISASの特徴は、Search(検索)した後に購入し、そして購入後にShare(共有)する点です。AISASでは、「Webを通じて購入者の口コミがシェアされ、その口コミをもとに、他の消費者が購入を検討する」というスパイラルができています。
購買行動モデルAISASをくわしく学ぶなら、「AIDMAとAISASの違いとは?マーケティングに必要な購買行動モデルをわかりやすく解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル4:AISCEAS
AISCEAS(アイシーズ)とは、AISASモデルをさらに細分化した購買行動モデルです。AISASとくらべて、AISCEASは「検索」と「行動」の間にComparison(比較)とExamination(検討)が追加されています。
AISCEASは、高額な商材を扱うBtoBビジネスを行う企業の担当者にとっては、わかりやすい購買行動モデルです。高額な商材であれば、消費者が検索して興味を持っても、すぐに購入にいたることは稀ですよね。ほとんどの場合、消費者は購入、契約の前に他社との比較・検討をするはずです。
購買行動モデルAISCEASをくわしく学ぶなら、「AIDMAとAISASの違いとは?マーケティングに必要な購買行動モデルをわかりやすく解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル5:SIPS
SIPSとは、ソーシャルメディアを頻繁に活用する消費者の購買行動を表した、購買行動モデルです。SIPSは、2011年に電通コミュニケーションの佐藤尚之氏をリーダーとした、社内ユニットが提唱しました。
SIPSの特徴は、最終的なゴールがParticipation(参加)であることです。SIPS以外の購買行動モデルの多くは、最終的なゴールがAction(行動、購入)となっていますが、SIPSにはAction(行動、購買)の要素が含まれていません。Actionの要素は、Participate(参加する)の要素が担っています。
SIPSをくわしく学ぶなら、「SIPSとは?SNS時代の消費行動モデルを、事例付きで徹底解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル6:Dual AISAS
Dual AISASは、SNSに対応した購買行動モデルです。Dual AISASは、SNSを通した現代のマーケティング戦略を考える上で、とても有効な購買行動モデルです。
従来のAISASモデルでは、消費者の興味関心(Interest)は、購買に関する興味関心だけだと考えられていました。Dual AISASでは、消費者の興味関心は商品を買いたい「購買への興味関心」と、面白いコンテンツを拡散したい「コミュニケーションへの興味関心」と、に分けられます。
Dual AISASでは、消費者を購買関心層とコミュニケーション関心層に分けて考えることで、消費者の購買行動を従来のAISASモデルより正確に把握できるようになりました。
購買行動モデルDual AISASをくわしく学ぶなら、「SNS時代の購買行動モデルDual AISASを徹底解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
購買行動モデル7:DECAX
DECAXとは、コンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルです。コンテンツマーケティングとは、有益なコンテンツを提供することを通じて、消費者とコミュニケーションとりながら、お問合せやリード獲得につなげるマーケティング手法です。
DECAXと従来の購買行動モデルでは、購買行動の入り口が異なります。従来の購買行動モデルでは、購買行動の最初のステップはAttentionになっていましたが、DECAXではDiscoveryになっています。小さな違いと思われるかもしれませんが、重要な違いです。
Attentionには、「企業の広告が、消費者の注目を集める」というニュアンスがありますが、Discoveryには「消費者が、自ら発見する」というニュアンスがあります。つまり、従来の購買行動モデルは、「企業側の視点」であり、DECAXは「消費者側の視点」なのです。
購買行動モデルDECAXをくわしく学ぶなら、「【DECAX】Webマーケターが知っておくべき購買行動モデルDECAXをわかりやすく解説」にてご紹介しています。あわせてごらんください。
※この記事は、2021年8月5日に更新しました。