SNS時代の購買行動モデルDual AISASを徹底解説
Dual AISASは、SNSやコミュニケーションアプリに対応した購買行動モデルです。Dual AISASは、SNSを通した現代のマーケティング戦略を考える上で、とても有効な購買行動モデルです。
この記事を読めば、Dual AISASの意味を理解し、他の購買行動モデルとの違いを説明できるようになります。みなさまのお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
Dual AISASの概要
まずは、Dual AISASの概要を押さえましょう。
Dual AISASとは
Dual AISASとは、SNSやコミュニケーションアプリに対応した購買行動モデルです。購買行動モデルとは、消費者がサービスや商品を認知、発見してから購入にいたるまでのプロセスを表したものです。
Dual AISASは、Webを通じた購買行動モデルである、AISASを改良した購買行動モデルです。Dual AISASの最大の特徴は、「広めたいのA+ISAS(コミュニケーション関心層)」と「買いたいのAISAS(購買関心層)」を分離して考えていることです。
従来のAISASモデルでは、消費者の興味関心(Interest)は、購買に関する興味関心だけだと考えられていました。しかし実際は、消費者の興味関心は「コミュニケーションへの興味関心」と、「購買への興味関心」に分けられます。
消費者をコミュニケーション関心層と、購買関心層に分けて考えることで、消費者の購買行動を従来のAISASモデルより正確に把握できるようになります。
Dual AISASが提唱された背景
Dual AISASは、なぜ提唱されたのでしょうか。それは、Dual AISASの元になっているAISASを知ることでわかります。
AISASは、Webを通した購買行動を表したモデルです。AISASは、5つのステップに分けられます。
1:消費者はWeb広告などを通じて商品を知る
2:気になる商品だった場合、興味を持つ
3:興味づいた消費者は、その商品についてWeb検索する
4:情報収集が済んで納得したのち、購入にいたる
5:購入したのち、その商品、サービスについての感想を共有する
以下の図は、上記の5つのステップを図式化したものです。
AISASの大きな特徴は、Search(検索)とShare(共有)です。購買行動モデルの中に「検索」と「共有」という要素を含めたことで、現代のWebを通じた購買行動をよく表しています。
しかし、AISASモデルにも批判があります。それは、「最近の消費者は、購入していなくても、面白そうであればシェアをする」という点です。あなたにも思い当たる節があるかもしれません。
そして、シェアは認知度の向上には役に立ちますが、必ずしも売上にはつながる訳ではありませんよね。話題になったものの、まったく売上には繋がらなかったプロモーションもたくさんあります。
そこで生まれた購買行動モデルが、消費者の「広めたい行動」と、「買いたい行動」を分離させたDual AISASです。
Dual AISASにおける2種類のAISAS
前章でもかんたんに触れましたが、Dual AISASには2種類のAISASがあります。この章では、Dual AISASにおける2種類のAISASを詳しくご説明します。
広めたいA+ISAS:コミュニケーション関心層
広めたいA+ISASとは、SNSを通じて情報やコンテンツが拡散する様子をモデル化したものです。
なぜA「+」ISASなのかと疑問を持つ人もいるかもしれません。+が付いている理由は、上図からわかります。広めたいA+ISASにおいて、Activeだけ扱いが特別である理由は、Activateのみループしないからです。
広めたいA+ISASには、5つのステップがあります。以下の図は、広めたいA+ISASをそれぞれ解説したものです。
一般的に、広めたいA+ISASにおいて影響力を持つコンテンツは、商品やサービスそのもののプロモーションではありません。広めたいA+ISASにおいて影響力を持つコンテンツは、参加型の広告キャンペーンやバズ動画、消費者とともに作り上げる共創型プロモーションといったコンテンツです。
広めたいA+ISASの状態にある人は、別名「コミュニケーション関心層」と呼ばれます。彼らは、商品やサービスそのものに興味があるわけではなく、面白いコンテンツを通じたコミュニケーションに興味があります。
広めたいA+ISASと、このあとご紹介する、買いたいAISASの違いを理解するためには、Interestに注目します。広めたいA+ISASにおけるInterestは、「面白い、笑える、友達にも見せたい」といった意味でのInterestです。「興味深い。使ってみたいなぁ。欲しいなあ。」という意味のInterestではありません。
コミュニケーション関心層は、商品ではなく、あくまで「商品やプロモーションを通したコミュニケーション」に興味があります。したがって、コミュニケーション関心層は、「拡散はするけれど、そのままでは購入にはいたらない層」であることを押さえておきましょう。
買いたいAISAS(購買関心層)とは
買いたいAISASとは、Webを通じた購買行動をモデル化したものです。買いたいAISASは、先ほどご紹介したAISASモデルと中身は変わりません。
Dual AISASにおいて、買いたいAISASの状態にある人は、別名「購買関心層」と呼ばれます。購買関心層は、商品やサービス自体に興味づいており、購入を検討している層です。
Dual AISASでは、コミュニケーション関心層を、いかにこの購買関心層へ誘導できるかがポイントです。
「広めたい」から「買いたい」へ誘導するための2要素
「広めたい(コミュニケーション関心層)」から、「買いたい(購買関心層)」へ誘導するためには、有益性と購入可能性の2つの要素が必要です。なお、ここでいう「誘導」とは、Dual AISASにおけるActivateを指します。
1:有益性
「広めたい」から「買いたい」へ誘導するための1つ目の要素は、有益性です。いくら面白い商品、サービスでも、商品自体に有益性がなければ消費者は購入にいたりません。
商品、サービスに有益性がなければ、たとえコミュニケーション関心層の中で拡散されたとしても、一過性の話題で終わってしまうでしょう。
2:購入可能性
「広めたい」から「買いたい」へ誘導するための2つ目の要素は、購入可能性です。購入可能性とは、消費者が購入する上でのハードルのことです。消費者が購入する上でのハードルが高ければ高いほど、購入可能性は低くなります。
たとえば、商品、サービスの料金が高額であったり、言語の壁があったりすると、いくら有益でも購入可能性が低いため、消費者はなかなか購入にはいたりません。海外発のすばらしい商品が、巧みなプロモーションによりSNSで話題になったとしても、日本語対応されていなかったり、超高額であったりした場合、それは一過性の話題で終わってしまう可能性が高いでしょう。
Dual AISASはフリーミアムと相性がよい
Dual AISASと相性がよいビジネスモデルに、フリーミアムがあります。フリーミアムとは、基本的なサービスを無料で提供し、一部のサービスを有料化することで収益化を図るビジネスモデルです。Dropboxや、いわゆるソシャゲと呼ばれるスマートフォンゲームを想像するとわかりやすいでしょうか。
基本機能を無料で提供することは、より多くのユーザーを獲得することにつながります。利用するユーザーが増えれば増えるほど、口コミによる拡散が狙えるからです。口コミによってサービスを知った消費者は、サービスが無料なため気軽に購入(ダウンロード)できます。つまり、フリーミアムは比較的かんたんにコミュニケーション関心層を増やせるビジネスモデルなのです。
また、フリーミアムは基本的なサービスを無料で利用できるため、ユーザーは「どんなサービスなのか」「利用するとどんなメリットがあるのか」などを深く知ることができます。そのため、フリーミアムは購入前(課金前)のユーザーに有益性を感じていただきやすい、という特徴があります。
商品を広めやすく、購買の興味付けしやすいという意味で、フリーミアムはDual AISASと相性がよいのです。
Dual AISAS以外の購買行動モデル
この章では、Dual AISAS以外の代表的な購買行動モデルについてご紹介します。代表的な購買行動モデルを知ることで、よりDual AISASの特徴が見えてくるはずです。
AIDMA
AIDMAは、購買行動モデルの中で、もっとも基本的な購買行動モデルです。AIDMAは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字をとった購買行動モデルです。Memoryを除いてAIDAとすることもあります。
AIDMAにおける購買行動は、3つに分類できます。消費者が商品を認知する「認知段階」、商品に興味を持ち、欲しいと思う「感情段階」、購買行動を起こす「行動段階」の3つです。
AIDMAには、時代錯誤な購買行動モデルだという批判があります。なぜなら、AIDMAが提唱されたのは1920年代であり、当時の消費者は自ら情報を得る手段に乏しく、企業の営業担当者を通じて情報を得ていたからです。
最近では、購買プロセスの大半がWeb上で行われることも珍しくありません。そこで生まれたのが、後述するAISASやAISCEASのような、「Web時代の購買行動モデル」です。
AISAS、AISCEAS
AISASとは、Web上で情報収集や購買行動が可能になったことを受けて登場した、Web時代の購買行動モデルです。すでにご説明しましたが、AISASはDual AISASの元になった購買行動モデルです。
AISASはAIDMAと比較すると、Desire(欲求)がSearch(検索)に置き換わり、Memory(記憶)がShare(共有)に置き換わっています。AISASの特徴は、購入前にWebで情報収集し、購入後に感想を共有することです。
また、AISASを細分化したAISCEASという購買行動モデルもあります。AISCEAS(アイシーズ)とは、AISASモデルをさらに細分化した購買行動モデルです。AISASとくらべて、AISCEASは「検索」と「行動」の間にComparison(比較)とExamination(検討)が追加されています。
比較、検討フェーズが追加されていることから、AISCEASはBtoB寄りの購買行動モデルと言えます。
DECAX
DECAXとは、コンテンツマーケティングに対応した、購買行動モデルの一種です。DECAXは、Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動)、eXperience(体験)のそれぞれの文字をとっています。
コンテンツマーケティングとは、有益なコンテンツを提供することを通じて、消費者とコミュニケーションとりながら、お問合せやリード獲得につなげるマーケティング手法です。
消費者が情報に触れる時間が増え、時間的なゆとりがなくなっている現代では、広告などを使ったプッシュ型のマーケティング手法は効果が薄れてきています。DECAXは、プル型のマーケティング戦略を考える上で、有効な購買行動モデルです。