「使いやすい!」と褒められる、業務マニュアルの作り方
業務マニュアルは、手順や効果を踏まえずに作ると、「作ること」自体が目的になってしまいます。
「とりあえず」作った業務マニュアルは、情報が煩雑で参照しづらくなってしまいます。せっかく業務マニュアルを作るなら、誰からも「使いやすくて重宝しているよ」と褒められる業務マニュアルを目指しましょう。
私たちマケフリ編集部は、業務のほとんどをマニュアル化しています。この記事では私たちが業務マニュアルを作成する時の手順と、意識している工夫点をご紹介します。
この記事のもくじ
業務マニュアルの作り方手順書:準備編
「使いやすい業務マニュアル」を作るためには、いきなり書き始めてはいけません。まずは、業務マニュアルのカバー範囲や構成要素を決めるため、これからご紹介する2つの手順を実行しましょう。
手順1:業務マニュアルの目的と想定読者を決める
業務マニュアルに記載すべき内容は、使用目的や想定使用者によって変わります。
たとえば、承認フローに関するマニュアルの中に「印刷機の使い方と備品の扱い方」の情報があったら、余計な情報になってしまうはずです。
業務マニュアルを書き始める前に、マニュアルの想定読者(ターゲット)と、マニュアルの目的を決めておきましょう。
マニュアルのターゲットと目的を決めることで、自ずとマニュアルに記載する情報の範囲も決まります。
手順2:業務マニュアルの業務完遂までに必要な手順を書き出す
次に、業務マニュアルを構成する要素となる「マニュアルの業務完遂までに必要な手順」をかんたんに書き出しましょう。初めから一章ずつ細かく書いてしまうと、業務マニュアルの全体像を把握しづらくなり、各章に最適なボリュームがわからなくなってしまいます。
マニュアルを自分が実際に取り組んでいる手順通りに書くと、業務で使いやすいマニュアルになります。上から順に目を通すだけで業務を遂行できるマニュアルがあれば、参照箇所を行き来したり、別資料にあたる必要がないからです。
業務完遂までに必要な手順を書き出すときに、私たちが気をつけている注意点は3つです。
初めの注意点は、業務マニュアルに記載する用語にまつわるものです。この注意点は、主に「ツールの使い方マニュアル」を作るときに意識するものです。
たとえば、上記の図のように、ツールには「即時公開」と「保存して公開」のボタンがあるにも関わらず、業務マニュアルには「公開ボタン」としか書かれていない場合、どちらを指しているかわかりません。
業務マニュアルには、社内で使われている通称を記載せずに、用語をそのまま記載しましょう。
2つ目の注意点は、作業手順とアドバイスの区別です。
一般的に、業務マニュアルの書き手は、マニュアルに記載する分野の業務経験が豊富です。そのため、業務マニュアルの書き手は、「ここはこうした方が上手くいく」「必須の作業ではないが、これをしておくとよい」といったアドバイスも書きたくなるものです。
業務アドバイス自体はマニュアル読者にとっても有益ですが、手順とアドバイスが入り混じると、読者は混乱します。そのため、業務マニュアルには、「最低限やらなければならないこと」と、「効率よく作業をこなせるアドバイス」を分けて記載しましょう。
最後の注意点は、業務マニュアルが扱うテーマに応じて、文字や図解、動画を上手く使い分けることです。文字だけに頼らず、図解や動画を上手く組み合わせることで、マニュアルは格段に理解しやすくなります。
たとえば当社では、クリックするボタンの順序などの「文字だけでは伝わりにくい情報」にスクリーンショットを使用しています。
業務マニュアルの途中にスクリーンショットなどの図解が挿入されていると、情報が視覚的になる上に、読者の目も休まります。
使いやすい業務マニュアルの作り方1:情報へのたどり着きやすさを意識する
前章では、大まかなマニュアルの作成手順ご紹介しました。ここからは「使いやすい業務マニュアル」の作り方をご紹介します。業務マニュアルは、作っただけでは意味がありません。マニュアル作成は、マニュアルが繰り返し使われて初めてコストパフォーマンスが優れた施策になります。
マニュアルのターゲットと目的を明記する
多くのマニュアルの中で、自分が今必要な情報を探し当てるのは至難のわざです。
そのため、マニュアルの初めには
- 誰のためのマニュアルなのか
- マニュアルの目的
以上の2点を明記しましょう。
ターゲットと目的は、細かく書く必要はありません。今開いている業務マニュアルが、必要なマニュアルなのかすぐに判断ができればよいためです。
紛らわしい手順は参照リンクを添付しよう
業務マニュアルには、「似た手順を経るものの、目的は違うタスク」を記載する場合があります。似た手順同士には、それぞれの章をすぐに参照できるように、リンクを添付しましょう。リンクを添付しておくと、ワンクリックで参照してほしいページに到達できます。
私たちは過去に、リンクの添付漏れによってミスをしてしまいました。
私たちは、とあるマニュアル内で、「資料Aの承認フロー」と「資料Aのダウンロード方法」を別々の章で記載しています。手順通りに記載すると、章の位置が離れてしまうのです。
すると、「承認フロー箇所」のみを見ていたマニュアル使用者が「ダウンロード方法については書いていない」と判断して、間違った方法でダウンロードしてしまったのです。
業務未経験者は、同じツールを使った別の作業など、類似した作業を見極められるほど業務経験がありません。紛らわしい業務の章は「もし〇〇をしたい場合はこちらを参照」等の文言をつけてリンクを貼りましょう。
Googleドキュメントでは、貼りたい箇所をドラッグしてCommand+K(WindowsならCtrl+K)でかんたんにリンクを添付できます。「見出しタブ」を選択すれば、他社サイトだけでなく記事内の見出しも添付できます。
業務未経験者にとって、すべての業務は学びになる経験です。マニュアル内に専門用語が登場したら、ためになる記事やコラムのリンクを貼っておくと、業務未経験者が業務に慣れながら他の学びも得られます。私たちは、私たちが運営しているオウンドメディア「マケフリ」の記事をリンクに貼っています。
インデックス(目次)を1ページ目に添付する
誰にとっても、目次のない業務マニュアルは求めている情報にたどり着きにくいものです。
たとえ数ページの短い業務マニュアルだったとしても、一目でマニュアルの内容がわかる目次を添付しましょう。
Googleドキュメントであれば、目次は「挿入」タブ内の「目次」から挿入可能です。Googleドキュメントの目次機能を使えば、「見出し1」から「見出し4」までの章タイトルを自動で目次が作成されます。各章へのリンクも自動でついているため、手作業で設定する必要はありません。
目次の添付は最後に着手しましょう。見出しまで記載し終えてから目次を整理すれば、目次整理の手間を省けます。
業務マニュアルは、同じサイズの文字がずっと続くよりも、太字や大きい文字が入っている方が読みやすくなります。さらに、目次を作るなら、見出しの設定は必須です。
重要な箇所を目立たせる
読者に見落としてほしくない特に重要な部分は、赤字や太字で目立たせましょう。
絶対に押してはいけないボタンや絶対に忘れてはいけない確認フローなど、ミスしてはいけない箇所がマニュアル内で目立っていると、ミスを未然に防げます。
業務には優先順位や重要度があります。業務未経験者は、どの業務が特に重要で、どの業務がそこまで大事ではないかの推測が困難です。目立たせる箇所は、業務未経験者の視点に立って考えましょう。
「大切なところは赤字や太字にしよう」と意識しすぎると、赤字や太字ばかりのマニュアルが出来上がってしまいます。業務マニュアルを作る際は、初めから目立たせる場所を決めるのではなく、ある程度書き終わってから「もっとも重要な箇所」だけを目立たせましょう。私たちは目立たせる箇所を、多くとも一章に3箇所程度にとどめています。
業務マニュアルの保管場所を統一する
業務量や業務の種類が多い業種では、マニュアルがどんどん増えます。複数の業務マニュアルがバラバラの場所に保管されていると、業務未経験者はマニュアルにたどり着けないかもしれません。
Googleドライブなどのオンラインストレージサービスや、情報共有ツールを使って、マニュアルの保管場所を統一しましょう。
私たちは、マニュアルそのものをGoogleドライブに保存しています。しかし、Googleドライブでは、ファイルを開かないと、マニュアルの用途や概要を見れません。そこで、ToDo管理アプリasanaに「マニュアル一覧」のページを作り、マニュアルの使用者が参照しやすくしています。
asanaで以下のように羅列しておくと、使用タイミングもマニュアル概要も一括で把握でき、スピーディに情報にリーチできます。
参考:マニュアル使用者からのフィードバックを大切に
マニュアル使用者からの「この章がわかりにくかった」という意見は、マニュアルの改善のための貴重な情報です。機会があれば、マニュアルの使用者にマニュアルの使い勝手についてヒアリングしましょう。
私たちの経験上、マニュアルが使いづらい原因は「マニュアルの情報不足」か、「マニュアルのわかりづらさ」のどちらかに起因します。複雑な箇所は、「〇〇に注意」と一言コメントを添えたり、赤字や太字で目立たせたりなど、見落とさないよう対策しましょう。
使いやすい業務マニュアルの作り方2:情報の鮮度を保つ
業務マニュアルには、情報のアップデートが必須です。情報が古くなったマニュアルは活用されません。この章では、マニュアルの情報鮮度を保つ工夫についてご紹介します。
更新日と最終編集者を明記する
マニュアルに載っている情報が、いつの情報なのかわからないと、業務未経験者はマニュアルを信用できません。マニュアル使用者に「この情報は古いのではないか」という不安を抱かせないために、マニュアルには更新日を記載しましょう。
また、マニュアルには更新日に加えて編集者名も記載しておきましょう。マニュアル編集者の名前が記載されていないと、マニュアル使用者は誰に不明点を聞いたらいいのかわかりません。
定期的にマニュアルの見直しをする
業務内容の変化に、マニュアルの更新が追いついていない状況はよく起こります。
業務マニュアルは定期的に見直し、情報を更新しましょう。マニュアル作成は、あくまで管理運用とセットです。管理運用できないマニュアルは作るべきではありません。
たとえば、情報の更新頻度が高い業務は、マニュアル化してしまうと管理が大変になります。
また、他社サービスについてのマニュアルの作成はおすすめしません。他社サービスについてのマニュアルの更新頻度は他社に依存します。他社サービスのアップデートはいつ来るかわからないからです。他社サービスのマニュアルが欲しくなった時は、マニュアル化する前に一度他社サービスのヘルプページを探してみましょう。
定期的に「マニュアルの更新」というToDoを設けておくと、マニュアルの更新忘れを防げます。
業務マニュアルの作成で得られる2つの効果
ここまでの章で、使いやすい業務マニュアルの作り方をご紹介しました。最後に、業務マニュアルの効果をまとめます。
マニュアルの効果1:業務効率とアウトプットの質が担保できる
業務マニュアルがないと、それぞれが自由な方法で業務に取り組んでしまいます。その結果、アウトプットの質にばらつきが生じたり、業務の非効率が生じたりします。
業務マニュアルが機能していれば、業務に慣れていない担当者でも、経験者と同じアウトプットが出せます。またマニュアルは、業務プロセスを統一する意味でも機能するでしょう。
マニュアルの効果2:コミュニケーションコストの低減
新人教育や業務の引き継ぎは、時間がかかります。マニュアルがないと、業務未経験者が加入するたびに、何度も同じ内容を伝えなければならず、コミュニケーションコストがかかります。
さらに、業務マニュアルが固まっていなければ、
「Aさんに聞いた時とBさんに聞いた時ではやり方が違う…」
「マニュアル通りに業務をこなしたのに、昔のやり方だから違うと言われた」
と、コミュニケーションの齟齬が生まれ、チームへの信用が失われかねません。
必要なコミュニケーションに時間を割くためにも、マニュアル化できる業務はマニュアル化しましょう。
参考:マニュアルは、機械的で冷たいものなのか
教える側としては、マニュアルによる教育は、機械的で冷たいと感じるかもしれません。しかし実は、教わる側にとってマニュアルはありがたい存在なのです。
新人としては、「忙しい上司に何度も質問するのは申し訳ない」「あんまり質問をして、できないやつと思われたくない」という心理が働きます。すると、わからないところを訊けずに一人で悩んでしまいます。
業務マニュアルがあれば上司の手間を取らせず、自分のペースで業務を覚えられます。そして上司は、業務マニュアルがあることで時間が空くので、その時間を使ってマニュアル化できないスキル的な側面を部下に教えられます。結果部下もスピーディーにスキルアップでき、ウィンウィンの関係を築けるのです。
別記事「例文で学ぶ わかりやすい文章の書き方 16のルール」は、「使いやすい業務マニュアル」のブラッシュアップに役立ちます。この記事では、やってしまいがちな誤表現や、冗長と思われがちな表現の特徴を学べます。マニュアルは情報量が増えがちです。短い文章でスッキリとマニュアルをまとめたい業務担当者はぜひご一読ください。