オンラインのプレゼンは対面のプレゼンとここが違う|資料作成や発表、環境の整え方をご紹介
リモートワーク推進の流れに伴って、ウェビナーやWeb会議システムを介しての商談など、オンラインでプレゼンテーションをする機会が増えています。対面でのプレゼンテーション経験がある方は、
「プレゼンが対面からオンラインに変わったところで、話す内容は同じだから大丈夫だろう」
とお思いかもしれません。
しかし、私たちの経験上、オンラインのプレゼンは対面のプレゼンよりも難易度が高く、オンラインのプレゼンを、対面でのプレゼンと同じように実施すると、多くの場合失敗に終わります。
現に私たちも、対面でのセミナーをウェビナー形式に変更したところ、変更当初は、セミナーアンケートの満足度が低下しました。お話しする内容やプレゼンターは同じにもかかわらず、セミナー満足度が低下したのです。
この記事では、オンラインのプレゼンが難しい理由と、オンラインのプレゼンで実施すべき工夫をご紹介します。この記事で紹介する工夫を実行することで、私たちのウェビナーは、満足度約97%を達成しています。
この記事のもくじ
オンラインのプレゼンが難しい理由
まずは、なぜオンラインのプレゼンが難しいのかをご説明します。ここを把握することで、記事後半でご紹介する「オンラインのプレゼンで実施すべき工夫」を、すんなり理解できるようになるなずです。
聞き手の集中力を維持するのが難しいため
オンラインのプレゼンが難しい1つ目の理由は、聞き手の集中力を維持するのが難しいためです。特に、1対多の提案やウェビナーなど、プレゼンターから聞き手が見えないプレゼンでは、「最初から最後までしっかり聞いていた」という方はほとんどいないと思っていてください。
オンラインのプレゼンで聞き手の集中力を維持するのが難しい理由は、オンラインのプレゼンに、
- 聞き手の気が散りやすい
- 一方通行のプレゼンになりやすい
という2つの特徴があるためです。この2つの特徴が、聞き手の集中を妨げます。
まずは、1つ目の「聞き手の気が散りやすい」についてご説明します。
オンラインのプレゼンにおいて、聞き手は「他の作業をすることも可能でありながら、動きの少ない画面を、長時間にわたって見続けなければならない環境」に身を置いています。このような環境にいては、集中を維持できないのも無理はありませんよね。聞き手は、プレゼン中にちょっと気になったことをブラウザで検索したり、かかってきた電話に出たりできます。
一方、対面でのプレゼン中に、聞き手が露骨に別の作業を始めてしまうことは稀です。
オンラインでのプレゼンは、そもそも聞き手がプレゼンに集中しにくく、プレゼン内容をしっかり聞いていただけない傾向があります。
2つ目の特徴は「一方通行のプレゼンになりやすい」ことです。
対面でのプレゼンでは、プレゼンターが聞き手の目を見て語りかければ、すぐに聞き手とのコミュニケーションが生まれます。しかし、オンラインのプレゼンではそうはいきません。プレゼンターはただ話し続け、聞き手はただじっと聞くだけになりがちです。
みなさんも学生時代、「ただじっと聞くだけ」の授業は退屈でしたよね。オンラインのプレゼンは一方通行になりがちなため、対面のプレゼンとくらべて、聞き手の集中力を維持するのが難しくなるのです。
体験としてのクオリティが下がるため
オンラインのプレゼンは、Web会議システムやウェビナーツール上で実施します。すると当然ですが、対面のプレゼンとくらべて、音質や画質は低下してしまいます。
単に音質や画質が悪いだけでなく、プレゼン中に音声や映像が途切れることもあるでしょう。プレゼンターの映像は小さく表示されるため、プレゼンターのボディランゲージも伝わりづらくなります。
他にも、オンラインのプレゼンでは、プレゼンの前も含めて、以下のような小さなストレスが発生しがちです。
- 参加方法がよくわからない
- セキュリティの関係で社用PCから参加できない
- 参加できたものの、操作方法がわからない
このような小さなストレスが積み重なると、プレゼン自体の満足度や評価も低下するでしょう。
オンラインのプレゼンは、体験としてのクオリティが、どうしても対面でのプレゼンよりも劣ってしまいます。
オンラインのプレゼンを構成する4つの要素
オンラインのプレゼン時に実施する工夫をご紹介する前に、まずはプレゼンテーションを構成する4つの要素を確認しておきましょう。
オンラインのプレゼンは、以下の4つの要素から構成されます。
「ストーリー(全体の構成)」については、オンラインのプレゼンと対面のプレゼンでの大きな違いはないため、この記事では割愛します。
この記事では、オンラインでプレゼンを実施する際の、「資料作成」「発表」「環境」のポイントをご紹介します。
オンラインプレゼンのポイント:資料作成
オンラインのプレゼン資料を作成するときは、「1スライド1メッセージ」と「プレゼン資料に動きをつける」ことを心がけましょう。
1スライド1メッセージを心がける
プレゼン資料を作成するときは、「1スライド1メッセージ」を心がけましょう。「1スライド1メッセージ」は、オンラインでのプレゼンに限らない、あらゆるプレゼンテーションの基本中の基本です。
メッセージを詰め込みすぎたスライドは、要点がわかりにくく、聞き手の理解を妨げます。1スライドの情報量を絞って、伝えたいメッセージのフォントを大きくしたり、図やグラフを挿入したりして、メッセージが伝わりやすいスライドを作成しましょう。
プレゼン資料に動きをつける
オンラインのプレゼン資料には、パワーポイントのアニメーションなどを設定し、スライドに動きをつけましょう。
動きのないスライド(いわゆる紙芝居形式)でオンラインのプレゼンを実施すると、聞き手の集中力は十中八九途切れます。聞き手は、プレゼンターが話し終わる前にスライドの内容を読み切ってしまい、「このスライドで言いたいことはもうわかったから次に進んでよ」と感じるためです。
一方、対面のプレゼンでは、オンラインのプレゼンとくらべて、あまりこのようのなことは起こりません。聞き手がプレセンターを見る時間も長く、資料だけを注視しているわけではないからです。
また、対面のプレゼンならば、現在のスライドを理解した聞き手は、手元の資料のページをめくって先の流れを掴んだり、前のページに戻って重要な点を読み返したりできます。しかし、オンラインのプレゼンでは、聞き手の手元に資料がない場合も多いため、聞き手の裁量で前後のスライドを閲覧できません。
オンラインのプレゼンでは、1つのスライドを理解した聞き手は、他にすべきことがなくなり、集中が途切れてしまうのです。聞き手の集中を切らさないために、スライドにアニメーションを設定しましょう。
オンラインプレゼンのポイント:発表
この章では、オンラインのプレゼンにおける「発表時の工夫」をご紹介します。みなさんがプレゼンターなら、もっとも気になる章かもしれませんね。
本題に入る前に、1つ、調査データをご紹介します。その調査データとは、
48%のウェビナー参加者が、ウェビナーに満足できない理由として「プレゼンターの熟練度が低い」ことをあげている(OutGrow社の調査より)
というデータです。
オンラインのプレゼンにおいて、プレゼンターの熟練度は、聞き手の満足度に大きな影響を及ぼします。ぜひこの章でご紹介する「発表時の工夫」を凝らし、聞き手の満足度を向上させましょう。
カメラ目線を心がける
オンラインでプレゼンをするときは、カメラ目線を意識しましょう。
プレゼンターが何も意識せずにオンラインのプレゼンを実施すると、視線はつい、手元の資料や画面に表示された相手の顔、もしくはワイプに表示された自分の顔を右往左往してしまいます。これでは、聞き手を引き込むプレゼンにはなり得ません。聞き手が、「自分に語りかけられている」と感じないからです。
また、オンラインのプレゼンでは、つい「ディスプレイに表示された聞き手の顔を見ながら話す」ことをやってしまいがちです。プレゼンターは聞き手を見ながらプレゼンしているつもりかもしれませんが、聞き手からすると、そっぽを向いているように見えてしまいます。
そこで「カメラ目線」です。オンラインのプレゼンでは、ディスプレイに表示された聞き手の顔や資料でなく、カメラを見ることで、擬似的に「相手の目を見て話す」ことができるのです。
とはいえ、カメラを見続けてプレゼンをするのは、想像以上に骨の折れる行為です。
そこでオススメの方法が、自分や相手の顔が表示されたワイプを、PCカメラの真下に設定して、自分や相手に語りかけるようにプレゼンすることです。
カメラの位置とワイプの位置が近ければ、ワイプを見ている間は、自然とカメラ目線になります。
身振りや表情は意識的に大きく
オンラインのプレゼンでは、身振りや表情を、意識的に大きくしましょう。
そもそも、オンラインのプレゼンには、「プレゼンターの身振りや表情が伝わりづらい」という特徴があります。その上、聞き手がその場にいないため、プレゼンターの表情は乏しくなり、身振りも小さくなりがちです。
他に誰もいない部屋で、ディスプレイに向かって笑顔を作ったり、身振り手振りを交えてプレゼンすることを気恥ずかしく感じるプレゼンターもいらっしゃるかもしれません。
しかし、伝わりづらいからこそ、オンラインのプレゼンでは、身振りや表情を意識的に大きくする必要があります。
私たちも、ウェビナー登壇時は、客観的に見ると恥ずかしくなるくらい、身振りや表情を大きくすることを心がけています。その結果、受講者の方から、
「〇〇様の話し方、とても引き込まれました。ウェビナーでも動きや表情が大事ですね」
といったコメントをいただきます。
オンラインのプレゼンでは、「客観的に見るとちょっと恥ずかしいくらい」身振りや表情を大きくしてみましょう。
トークテンポは場面によって調節する
プレゼン時に重要な要素の1つが、トークのテンポです。
オンラインのプレゼンにおける理想的なトークテンポは、「相手の音声がオンになっている場(主に提案や商談)」か、「相手の音声がオフになっている場(主にウェビナー)」かで異なります。
提案などの、相手の音声がオンになっている場なら、比較的ゆっくりとしたテンポでプレゼンすることをおすすめします。
「このスライドの内容について、何かご質問はありますか?」
このように、相手の理解度を確認しながら進行するのもよいでしょう。相手の音声がオンになっている場合は、相手と併走するイメージでプレゼンを進行しましょう。
一方、ウェビナーなどの、聞き手の音声がオフになっている場では、トークテンポを速めた方が、聞き手の満足度が高まることがわかっています。体感的には、何も意識せずにプレゼンするときの、1.2〜1.3倍速くらいが理想です。
これは私たちにとっても意外な発見でした。なぜなら、プレゼンの基本は「ゆっくりと丁寧に話す」ことだからです。
下記の画像は、私たちが開催するウェビナー「商談に繋がる 自社セミナーの作り方講座」の中で、Zoomの投票機能を使って実施したアンケート結果です。
驚くべきは、この投票を実施した時点で、プレゼンターは1.2倍速を意識してプレゼンしていた、ということです。1.2倍速でプレゼンしてもなお、約4分の1の受講者は「もっと速い方がいい」と回答したのです。
ウェビナーなどの、聞き手の音声がオフになっている場では、意識的にトークテンポを速めることをおすすめします。
話の構成は、簡潔にわかりやすく
オンラインのプレゼンでは、対面のプレゼンよりも、「話を簡潔にわかりやすく構成すること」に、細心の注意を払いましょう。
オンラインのプレゼンは、そもそも相手の集中を維持しづらい傾向があります。そんな環境下で、プレゼンターの話があちこち飛んでしまうと、聞き手の集中はいともたやすく途切れてしまうでしょう。
「簡潔でわかりやすい」プレゼンをするために、うってつけのフレームワークがあります。PREP法というフレームワークです。
PREP法とは、
- Point :要点(結論・主張)
- Reason :理由(結論にいたった理由・そう主張する理由)
- Example:具体例(理由に説得力を持たせるための事例・データ・状況など)
- Point :要点(結論・主張)
の頭文字をとった、わかりやすい説明の構成を表したモデルです。
PREP法を用いた説明とは、たとえば以下のような説明です。
映画や小説では、「起承転結が大切」と言われます。エンタメはストーリー性を重視するため「これからどうなるかわからない」という適度なストレスは歓迎されますが、オンラインのプレゼンで求められるコミュニケーションは「明確でわかりやすいこと」です。
オンラインプレゼンのポイント:環境
最後に、オンラインのプレゼンにおける、機材環境や通信環境の整え方をご紹介します。機材や通信環境は、対面のプレゼンにはない、オンラインのプレゼン特有の要素です。機材環境や通信環境が整っていないと、音声や映像が乱れ、プレゼンの「体験としてのクオリティ」が低下します。
ちょっとの工夫でプレゼン環境を改善できる方法もご紹介していますので、ぜひお試しください。
機材環境
オンラインのプレゼンには、PCやカメラ、マイクなどの機材が必要です。オンラインのプレゼンを快適に実施するための、機材環境を整える3つの工夫をご紹介します。
1つ目の工夫は、オンラインでのプレゼン中に、PC内の不要なアプリを閉じておくことです。Web会議ツール以外のアプリケーションがCPUやメモリを占領し、PCの負荷が高い状態だと、映像がカクついたり、音声が途切れたりする原因になります。また、オンラインのプレゼンの前に、PCを再起動するのも有効です。
2つ目の工夫は、有線接続のイヤホンマイク使うことです。同じ価格帯なら、Bluetooth接続のマイクよりも、有線接続のマイクの方が音質がよい傾向があるためです。PC内蔵のマイクは、タイピング音を拾ってしまうため、プレゼン中にタイピングする可能性がある場合はおすすめできません。
3つ目の工夫は、カメラの画角を調整することです。オンラインのプレゼンで使用するカメラは、PC標準搭載のカメラで基本的には問題ありません。しかし、PC標準搭載のカメラだと、プレゼンターの顔を下から見上げる画角になります。
この画角は見栄え的にあまりよくないため、できればカメラの設置位置を調節しましょう。PC標準搭載のカメラを利用する場合は、PCそのものの高さを調節することになります。PCの高さを調節する場合は、PCスタンドを利用するとよいでしょう。原始的な方法ですが、PCの高さは、PCの下にティッシュボックスなどの高さのあるものを敷くことでも調節できます。
通信環境
通信環境は見落とされがちですが、快適なオンラインのプレゼン環境を作るためには、とても重要な要素です。
通信には、上りと下りがあります。上りは、データをアップロードするときに利用します。つまり上りは、プレゼンターが音声や映像を相手に届けるために必要な通信です。下りは、データをダウンロードするときに利用します。オンラインのプレゼンであれば、聞き手は下り回線を利用して、プレゼンを視聴します。
上りと下りの通信速度は、Googleで「Speedtest」と検索をかけるとわかります。
オンラインのプレゼンに必要な通信速度は、利用するビデオ会議システムやウェビナーツールによって変わります。たとえばZoomでは、高品質ビデオの場合は600kbps/1.2Mbps(上り/下り)、ギャラリービューの場合は1.5Mbps/1.5Mbps(上り/下り)が推奨されています。
また、プレゼンターは、可能であればインターネットを有線接続しましょう。有線は無線にくらべ、高速かつ安定したインターネット環境を実現できます。
実際に当社にて実験してみたところ、通信速度に20倍以上の差が出ました。みなさまの利用環境にもよりますが、これくらい差が出ることがあります。
また、みなさんは、ご利用中のWi-Fiに「5G」と「2G」の2種類がある、といった場面に出くわしたことがあるかもしれません。
この「G」は「GHz(ギガヘルツ)」という周波数の単位です。専門的な説明は省きますが、
- 2GHz(実際は2.4GHz)は、壁などの障害物に強いが混線しやすい
- 5GHzは壁などの障害物に弱いが混線しにくい
という特徴があります。
したがって、Wi-Fiルーターの近くでプレゼンする場合は「5GHz」の方が安定し、Wi-Fiルーターから遠く、ルーターとプレゼンターの間に障害物がある場合は「2GHz」の方が安定する、と言えます。
なお、ご利用中のPCによっては、5GHzに対応していないものもありますのでご注意ください。
ちなみに、スマホの上部に表示される3Gや4G、加えて最近話題の5Gは、「Generation(世代)」のGなので、ここでお話ししている「GHz(ギガヘルツ)」の「G」とは別物です。
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※この記事は、2020年6月12日に更新しました。