「空雨傘」で論理的なストーリーを作る|わかりやすい徹底解説

空雨傘は、論理的なストーリーを組み立てるためのモデルです。

ビジネスにおいて、自分の企画を通したり、行動の意図を説明したりする際は、論理的で納得感のあるストーリーが求められます。空雨傘のモデルを意識することで、「事実」「解釈」「行動」を分けて説明できるため、論理的で納得感のあるコミュニケーションが取れます。

今回は、論理的なストーリーを組み立てるためのモデル「空雨傘」についてまとめました。みなさまのお役に立てば幸いです。

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空雨傘の概要

空雨傘の概要をご紹介します。

空雨傘とは?

空雨傘とは、論理的なストーリーを組み立てるためのモデルです。論理的なストーリーは、聞き手に納得感を与えます。

空雨傘という3つの要素には、それぞれ以下の意味があります。

空:空が曇っている(事実)
雨:雨が降りそうだ(解釈)
傘:傘を持っていくべきだ(行動)

空雨傘の3要素は、この順番に並んでいることが大切です。人は、「事実」と「解釈」を混同してしまったり、もっとも伝えたい「行動」から話し始めてしまったりします。たとえば、もっとも伝えたいことが「傘を持って行こう(行動)」だとします。それを、相手にそのまま伝えてしまっては、聞き手は「なんで?」「その根拠は?」と感じるでしょう。

空雨傘を意識すると、事実をもとに解釈し、解釈をもとに行動を導くため、ストーリーが論理的になり、相手に「なぜ」と思われることがなくなります。

また、空雨傘を意識することは、問題解決にも役立ちます。問題解決で最初に行うべきことは、「何が真の問題なのか」を特定することです。多くの人は、事実と解釈を混同して「問題」としていることが多いため、「そもそもの問題設定を誤ったために、問題解決にいたらなかった」という事態が起こりえます。「事実」と「解釈」を分けて考えることは、とても重要です。

空雨傘:「空」について

空雨傘の「空」は、事実を表しています。

「空」において重要なことは、「事実のみ」を正確に認識し、伝えることです。事実には解釈や行動を入れてはなりません。

ありがちなミスは、事実に解釈を混ぜてしまうことです。

「晴れだけど、雲が多いから午後は曇りそう」

上記例における事実は、「晴れている」という点だけです。「雲が多い」「午後は曇りそう」という2点は、解釈です。何を持って雲が多いとするかは、人の主観に依存します。また、「午後は曇りそうだ」という点も、人によっては「雨が降りそうだ」と解釈するかもしれません。

もう1つ例を見てみましょう。

「弊社は商品力が弱いから、年間1億円の赤字が出ている」

上記例における事実は、「年間1億円の赤字が出ている」という点だけです。「商品力が弱い」という点は、主観を含む解釈です。人によっては、年間1億円の赤字が出ている原因を「いやいや、商品力には問題がない。営業力が問題だ」と解釈する人もいるでしょう。

まずは、しっかりと事実のみを認識するようにしましょう。

空雨傘:「雨」について

空雨傘の「雨」は、解釈を表しています。事実を認識したら、事実に基づき正しく解釈する必要があります。解釈が抜けてしまうと、聞き手は「それで何なの?」と感じてしまうからです。

「空が曇っているな。雨が降り出しそうだ」

上記は、事実に基づいた、ロジックに飛躍のない解釈です。一方で、以下のような解釈ならどうでしょうか。

「空が曇っているな。明日は晴れそうだ」

曇った空を見て、「明日は晴れそうだ」と解釈したならば、聞き手は「なぜそう判断したのか」という疑問を持つはずです。

上記はかんたんな例のため、「こんなミスするはずない」とあなたは思うかもしれません。しかしビジネスでは、多くのビジネスパーソンが解釈を飛躍させてしまいます。

社長:「社員の会社への不満が溜まっていることが、アンケートから判明した。(事実)昨今は働き方改革もブームだし、残業を減らす取り組みを推進していこう。(解釈・行動)」
社員:「そうですね!残業時間を減らせば、社員の満足度も上がりそうです。」

上記における事実は、アンケート結果から発覚した「従業員の会社への不満が溜まっていること」だけです。社長はその事実を、「残業のせいだ」と解釈し、「残業を減らす取り組みをする」という行動に落とし込みました。

しかし、「従業員の会社への不満が溜まっていること」の原因を、残業のせいだと判断するのは早計です。従業員の不満の原因は、給与にあるかもしれませんし、会社の方針にあるかもしれません。もし従業員の不満の原因が給与にあるなら、残業時間を減らすと残業代が支給されなくなるため、さらに従業員の不満は溜まってしまうでしょう。

上記の例を、事実に基づいて解釈するならば、以下のようになります。

社長:「社員の会社への不満が溜まっていることが、アンケートから判明した。(事実)このまま従業員の不満がたまれば、退職者が続出しかねない。(解釈)まずは、何について不満を感じているのか、追加でアンケートを取ろう。必要であれば、1対1の面談もセッティングしよう。(行動)」

空雨傘:「傘」について

空雨傘における「傘」は、行動を表します。行動が抜けてしまうと、聞き手は「それで結局どうすればいいの?」「それで、あなたはどうしたいの?」と感じるでしょう。

傘において注意すべき点は、「ロジックに飛躍がある行動を導かないこと」と「解釈に対し、短絡的な行動(打ち手)を導かないこと」です。

「雨が降りそうだな。だから今日は白いスニーカーを履いていこう。」

上記例は、「ロジックに飛躍がある行動」を導いている例です。「雨が降りそうだ」という解釈から、「白いスニーカーを履く」という行動を導くと、多くの人は「なぜだろう?」と感じますよね。上記例における、ロジックに飛躍がない行動とは、「防水スプレーを使おう」「長靴を履いていこう」といった行動です。

もう1つ、ビジネスに関する例を確認しましょう。

「最近、マーケティングチームの広告宣伝費が上昇している。(事実)このままでは、今期は赤字になるだろう。(解釈)だから、マーケティングチームの広告宣伝予算は20%カットする。(行動)

上記例は、解釈に対し、短絡的な行動を導いてしまっている例です。

「広告宣伝費が上昇しているから、広告宣伝費をカットする」では、真の問題解決にはなりません。まずは、「なぜ、広告宣伝費が上昇しているのか」「実施した広告宣伝によって、効果はどの程度上がっているのか」「そもそも、赤字の原因はマーケティングチームの広告宣伝費の上昇だけなのか」などを吟味する必要があります。

もしかすると、広告宣伝費は上がっているが、それに伴って売上も上がっているかもしれません。または、一時的には赤字になっているが、将来的にはその赤字を回収できるほどの、大きなリターンが見込めるかもしれません。

空雨傘の「傘」においては、「ロジックに飛躍がある行動を導かないこと」と「解釈に対し、短絡的な行動(打ち手)を導かないこと」に注意しましょう。

空雨傘を意識するメリット

空雨傘を意識するメリットは、論理的で納得感のあるストーリーを組み立てられることです。論理的で納得感のあるストーリーは、自分の企画を通したり、判断や行動の説明をする際に必要とされます。

論理的なストーリーを組み立てることで、あなたは先輩や上司から「事実と解釈が混ざっているよ」「それって本当なの?」と言われなくなり、「それなら納得できるね」と言っていただけるようになります。

空雨傘を意識すると、論理的なストーリーを組み立てられる理由は2つあります。

1つ目の理由は、「事実」「解釈」「行動」を分離して考えるためです。

これまで、さまざまな例を通して見てきた通り、人は「事実」「解釈」「行動」を混同しがちです。特に、事実と解釈は混同してしまうことが多いため、注意が必要です。空雨傘モデルを意識することで、「事実」「解釈」「行動」を分けて考える癖がつきます。

2つ目の理由は、「事実から解釈を導き、解釈から行動を導く」という、空雨傘の順番にあります。

空雨傘の順番でなければ、誤った結論に至る可能性があります。なぜなら、人は望む行動を実現するために、解釈や事実を都合よく作り上げてしまうことがあるからです。

「今回チームを成功に導いたのは、自分の活躍があったからだ。(解釈)なぜなら、自分は大口の受注を取ってきたからだ。(事実)」

上記は、解釈ありきで事実を導いています。しかし、事実をもとに考えると「小口の受注をたくさん取ってきた、Bさんの方がチームに貢献している」という解釈になるかもしれません。

また、行動の理由づけのために解釈を行うと、聞き手は「その話って、無理があるんじゃないか」と感じてしまいます。

空雨傘の起点は、事実です。事実から読み取れる解釈によって、行動を導くため、自分にとって都合のよい解釈や行動をしてしまうミスが起きません。

空雨傘を使った、コミュニケーションの例

空雨傘を使ったコミュニケーションを、よい例と悪い例でご紹介します。

上司:「ちょっといいかな。この間から君が目をかけていた採用候補者のAさんを落としたそうだね。なぜ、目をかけていたのに落としたのか説明してもらえる?」

部下:「はい。Aさんは、受け答えがスムーズで、前職の経験も十分でしたので、注目していました。しかし、Aさんは社会人の基本である「報告・連絡・相談」ができない人でしたので、不採用としました。」

上司:「報告・連絡・相談」ができない人というのは、君の解釈だよね?何があったか教えてくれる?

部下:「ああ、すみません。Aさんですが、遅刻してきたんです。それも、無断で。だから、不採用としました。」

上司:「確かに、無断で遅刻するのはいただけないね。ただ、君はその事実をどう解釈して、不採用という結論に至ったの?」

部下:「面接に無断で遅刻する人は、入社してからも同様の行為をすると考えました。面接のような重要な場で時間を守れないということは、入社してからはもっと時間を守れないはずです」

上司:「なるほど、そういうわけか。わかったが、今度から行動の説明を求められたら、『空雨傘』を意識してみてくれ。」

部下:「わかりました。(空雨傘??)」

上記は、悪いコミュニケーションの例です。上司がさまざまな質問を投げかけることで、ようやく不採用の意図が理解できました。上記例における部下は、事実と解釈を混同していたり、事実から突然行動を導いたりしているので、上司は混乱してしまいました。

次は、よいコミュニケーションの例を見てみましょう。

上司:「ちょっといいかな。この間から君が目をかけていた採用候補者のAさんを落としたそうだね。なぜ、目をかけていたのに落としたのか説明してもらえる?」

部下:「はい。Aさんは、受け答えがスムーズで、前職の経験も十分でしたので、注目していました。しかし、この間の2回目の面接の際、Aさんは遅刻してきました。しかも、事前連絡なく、20分の遅刻です。「報告・連絡・相談」は社会人の基本ですし、遅刻の事前連絡ができないということは、入社してからも同様の行動を取ることが予想できます。したがって、今回は採用を見送りました。」

上司:「なるほど。遅刻の連絡がないというのは、社会人としていただけないね。わかった、説明ありがとう」

上記例において、部下は「空雨傘」の順番で説明しています。空雨傘の順番で説明することで、1度のやり取りで行動の意図を説明できました。

おわりに

今回は、ビジネスコミュニケーションにおいて重要な「空雨傘」をご紹介しました。ぜひ、空雨傘を身につけて、論理的で納得感のあるコミュニケーションを取りましょう。

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