MECEとは?わかりやすい例から学ぶ入門編

MECEとは、「漏れがなくダブりもない」という状態を指す言葉です。MECEに分類する力は、ロジカルシンキングの基礎といえるほど重要であり、コンサルタントだけでなく、すべてのビジネスパーソンが身につけておいて損はないスキルです。

今回は、ビジネスパーソンが抱える、MECEに関する以下のような悩みを解決します。

・MECEって結局なんなのか、よくわからない。
・MECEってビジネスや日常生活でどんな役に立つのかわからない。
・MECEに分類できる力を身につけたいが、難しい。

みなさまのお役に立てば幸いです。

MECEとは

MECEとは、漏れがなくダブりもない状態を指す言葉で、「ミッシー」や「ミーシー」と読みます。MECEは、テクニックやフレームワークではなく、単に「漏れがなくダブりもない状態」を指す言葉であることに注意してください。

例を使って、さらに噛み砕いてご説明しましょう。いちばんかんたんに、MECEに分類する方法は、正反対の概念で分類することです。

人間を正反対の概念でMECEに分類すると、「(生物学上の)男性と女性」「左利きと右利き」「大人と子供」などが挙げられます。これらの分類には、漏れも重複もありません。どんな人でも、かならずどちらかのグループには分類されますし、1人の人間が2つのグループに分類されることもありません。

そのほか、「血液型」「星座」「出生地」「国籍」などによって、さらに細かくMECE分類することもできます。

もう1つ例を挙げてみましょう。

携帯電話ユーザーをMECEに分類すると、「iPhoneユーザー」「Xperiaユーザー」「Huaweiユーザー」といった分類が考えられるかもしれません。しかし、「iPhoneユーザー」「Xperiaユーザー」「Huaweiユーザー」といった分類は、「MECEになっていない」ことがお分かりでしょうか。

携帯電話ユーザーには、上記以外のメーカーのスマホを使っている人もいますし、そもそもスマホではなくガラケーを使っている人もいるでしょう。

したがって、携帯電話ユーザーをMECEに分類するためには、スマホユーザーとガラケーユーザー(もしくはそれ以外)という視点から、分類を始める必要がありそうです。

MECEは複雑な事象を、さまざまな切り口から分類することで、漏れやダブりをなくすために使われます。特にビジネスでは、答えのない複雑な問題を解決しなければならないことが多々あります。複雑な問題を複雑なまま扱うと、漏れやダブりが出てしまい、後になって「これも考慮しておくべきだった」「先にこっちを解決すべきだった」といった事態になりかねません。

そのため、MECEに分類できるスキルは、問題解決を求められるビジネスパーソンには必須のスキルなのです。

MECEの活用例

MECEの活用例を、日常の例とビジネスの例で考えてみましょう。

日常生活におけるMECEの例

MECEに分類する能力は、日常生活でも役立ちます。スキーに行く例から、MECEがどのように役立つか考えてみましょう。

友人とスキーに行くことになったAさんは、スキーの準備をすることになりました。Aさんは、スキーに行ったことがなかったため、スキー用品を買い揃える必要がありました。そこで、まずはスキー用品にはどのようなアイテムがあるか、MECEに分類してみることにしました。

必要なものを思いつきで買っていく、というショッピングスタイルでは、大抵の場合、何か買い忘れをしたり、同じものを買ってしまったりします。そこで、大抵は買い物リストを作りますが、その前段階として、スキーにどのような道具があるのかをMECEに分類してみましょう。

MECEに分類したことで、スキーにどのような道具があるのか、すっきり理解できました。上図のように、スキー用品をMECEに分類した上で、必要な道具を買い物リストにすることで、買い忘れを防げます。

ここまで、MECEに分類することで、漏れやダブりを防止できる例をご紹介しました。ただし、便利なMECEですが、1つだけ注意点があります。それは、要素を分解しすぎないことです。今回、スキー用品をMECEに分類した目的は、スキー用品の準備に抜け漏れやダブりをなくすためです。その目的が果たせる程度に分類できていれば、問題ありません。

たとえば、「スキー板」は「オールランドスキー」「デモスキー」「フリースタイルスキー」など、さまざまな種類に分類できます。しかし、「スキー用品の準備をする」という目的を考えると、そこまで細かく分類する必要はありません。「スキー板を買う」ということがわかっていれば、あとはスキー用品店に行って、店員と相談しながらよさそうなスキー板を購入すればよいのです。

ビジネスにおけるMECEの例

ビジネスは、問題解決の連続です。問題解決の際に必要になるスキルが、真の問題点(イシュー)を発見する力です。MECEをうまく使えば、イシューの発見に役立ちます。

大抵の場合、担当者や自分の感覚で、「問題はこれだろう」と決めてかかってしてしまうと、そもそものイシューを間違えてしまったり、有効な打ち手を見誤ったりします。そのため、問題解決を考える際は、まずは全体像をMECEに分解し、イシューを発見する必要があります。

例として、SaaSビジネスの売上改善を考えてみましょう。SaaSビジネスの売上は、以下のようにMECEに分解、分類できます。

上記のように分解して初めて、「じゃあどこに問題がありそうか」といった議論ができます。全体像を分解せずに議論を進めてしまうと、「新規顧客獲得が問題でしょう。だって、毎月営業は新規契約の目標を達成できていないじゃないか」とか、「いやカスタマーサクセスがオプションの契約を取れていないからだ」とかいった話になってしまいます。

さて、売上をMECEに分解できたら、問題がありそうな部分を仮説から導きます。仮説を立てる際は、仮説思考が役に立ちます。

仮説思考とは
仮説思考とは、ものごとを進める際、常に仮説から考える思考法です。くわしくは、こちらでまとめましたので、あわせてごらんください。

ここでは仮説から、「問題点は新規顧客の契約が伸び悩んでいることではないか」と考えたとします。新規顧客契約数に問題がありそうだとわかれば、新規契約を獲得するフローをMECEに分類してみましょう。

上記4つの中から、問題がある箇所に仮説を立て、さらに掘り下げます。「マーケティングチームのリード獲得に問題がありそうだ」という仮説が立ったとしましょう。

マーケティングチームがリードを獲得する経路をMECEに分類すると、以下の通りです。

オウンドメディアのホワイトペーパー
セミナー
展示会やイベント
・ダイレクトメール

担当者は、上記4つの施策の中で、「うまくいっていない施策はどれか」、「どの施策に注力するともっともインパクトがあるのか」、「本当にその施策はうまく行っていないのか」「新しい施策が必要だろうか」といったことを話し合います。

さて、いかがでしたか。ここまで、SaaSビジネスをMECEに分類しつつ、イシューを探ってきました。MECEを使うと、 担当者の感覚で「問題は営業にある」「問題はサポートにある」と言い合うよりも、よっぽどビジネスの全体像が整理できて、真の問題点に近づけたはずです。

MECEに分類するための4つの切り口

MECEに分類する切り口は、さまざまです。この章では、MECEに分類するための4つの切り口をご紹介します。

1:対照的な概念で分類

1番かんたんな分類方法は、対照的な概念で分類することです。対照概念の一例には、「男女」「左右」「上下」「白黒」「真偽」などが挙げられます。

人を対照概念でMECEに分類した図が下図です。

対照概念は、カテゴリーが2つしか生まれないため、他の切り口よりも分類がかんたんです。

2:因数分解

因数分解は、MECEの基本です。因数分解する力が、MECEに分類できるかどうかを決めるといっても過言ではありません。

たとえば、後でご紹介する3C分析は、市場環境を3つの要素に因数分解しています。

3:プロセスで分解

プロセスを用いてMECEに分類することもできます。

たとえば、購買行動モデルAIDMAは、顧客の購買行動を、プロセスによってMECEに分類しています。

購買行動モデルのまとめ
マーケターならば知っておきたい購買行動モデルを7つまとめました。ぜひ、あわせてごらんください。

4:尺度で分解

年齢や年収など、要素が一直線になっているものは、尺度で分解できます。

プロダクトライフサイクルは、製品の盛衰を、時間と売上の2軸で表したフレームワークです。プロダクトライフサイクルは、製品の一生を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という尺度によって4つに分類することで、MECEに分類しています。

MECEを活用したフレームワーク

マーケティングや事業戦略のフレームワークには、MECEに分類しているフレームワークが数多くあります。この章では、MECEを活用したフレームワークをいくつかご紹介します。

ビジネスフレームワーク
なお、マケフリでは、厳選25個のフレームワークを集めた、「ビジネスフレームワーク集25選」を無料配布しています。ぜひ、ダウンロードしてみてください。

SWOT分析

SWOT分析とは、自社を取り巻く環境による影響と、それに対する自社の現状を分析しながら、自社の最良のビジネス機会を発見するためのフレームワークです。

SWOT分析の各要素は、S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威です。SWOT分析は、自社を取り巻く環境と、自社の強みを、対照的な概念でMECEに分類しています。

SWOT分析について
SWOT分析は、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

3C分析

3Cとは、市場環境を分析するためのフレームワークです。3Cは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」のそれぞれの英単語の頭文字をとったもので、それぞれのCは市場を分析する重要な要素となっています。

3Cは、市場環境を因数分解することで、MECEに分類しています。

3C分析について
3C分析は、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

バリューチェーン

バリューチェーンとは、ある事業活動における価値を生み出す仕組みです。例えば、仕入れ・製造・流通・販売・サポートと、その活動を機能別に分解することができます。分解した各機能が生み出す価値の関係性を明らかにするためのフレームワークが、バリューチェーンです。

バリューチェーンは、利益を生み出す事業活動を、プロセスによってMECEに分類しています。

バリューチェーンについて
バリューチェーンは、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

プロダクトポートフォリオマネジメント

プロダクトポートフォリオマネジメントは、企業戦略における経営資源の最適な分配を知るための分析フレームワークです。「市場成長性」と「市場における自社のシェア」の2つの軸に、各事業の事業規模の大きさを示す円でプロットし、事業利益創出の難易度、追加投資の必要性を明らかにします。

プロダクトポートフォリオマネジメントは、「対照的な概念」を2つ組み合わせて、MECEに分類しています。

プロダクトポートフォリオマネジメントについて
プロダクトポートフォリオマネジメントは、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

プロダクトライフサイクル

プロダクトライフサイクルとは、新しい製品を市場投入してから衰退するまでの典型的な売上の推移を理解するためのモデルです。一般的な新製品は、市場投入から市場撤退まで、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの特徴ある段階をたどります。

プロダクトライフサイクルは、製品の一生を、尺度によってMECEに分類しています。

プロダクトライフサイクルについて
プロダクトライフサイクルは、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

4P(マーケティングミックス)

4P(マーケティングミックス)とは、戦略を実現するための戦術を決めるフレームワークであり、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、広告宣伝(Promotion)の4つのPを取っています。

4Pは、戦術を決定する要素を4つに因数分解することで、MECEに分類しています。

4Pについて
4Pは、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ、あわせてごらんください。

購買行動モデル

購買行動モデルとは、消費者がサービスや商品を認知、発見してから、購入にいたるまでの過程を表したモデルです。購買行動モデルは、顧客の購買行動を、プロセスによってMECEに分類しています。

購買行動モデルのまとめ
マーケターならば知っておきたい購買行動モデルを7つまとめました。ぜひ、あわせてごらんください。

MECEの注意点:MECE分類を目的にしないこと

万能そうに見えるMECEですが、注意点もあります。それは、MECEに分類すること自体を目的としないことです。MECEは、ものごとを抽象化・構造化して、考えやすくするために使います。決して、MECEに分類すること自体が目的ではありません。

目的を果たせる粒度までMECEに分類できたら、あなたはそれ以上掘り下げたり、分類したりする必要はありません。スキーの例でもご紹介しましたが、「買い忘れをなくすためにMECEに分類すること」が目的であれば、スキー板の種類までMECEに分類する必要はないのです。

MECEに分類するときは、「どの程度までMECEに分類すれば、目的が果たせるのか」を意識しながら進めることがもっとも重要です。