仮説思考とは?仮説思考の実践方法からトレーニング方法までを徹底解説

仮説思考は、あなたの仕事のスピードと質を劇的に向上させます。今回は、仮説思考の実践方法からトレーニング方法まで、徹底解説しました。

みなさまのお役に立てば幸いです。

今日やることが、ひとめでわかる。営業が見える化できるSFA/CRMツール【Kairos3 Sales】

仮説思考とは

仮説とは、まだ十分に情報がそろっていない段階、または分析が済んでいない段階で持つ仮の答えのことです。

そして「仮説思考」とは、何らかの問題解決を考えるときに、常に仮説から考える頭の使い方のことです。

仮説思考は、ビジネスにおいてのみならず、日常生活でもよく使われている思考法です。

たとえば、雨の日の通勤を仮説思考で考えてみましょう。雨の日は、通常徒歩で駅まで通勤する人が、バスで通勤することが多くなるため、バスは普段よりも混雑すると考えられます。バスが混雑すると、混雑の影響で時刻通りにバスが遅れる可能性が高くなりますよね。そのため、あなたは「今日は早めに出よう」と考えるかもしれません。

普段わたしたちは、このような思考のプロセスを無意識に行なっているため、特別意識せずに「雨が降っているから早めに出かけよう」と考えますが、実は日常的に仮説思考を用いているのです。

なぜ仮説思考が求められるのか

なぜ仕事では「仮説思考が重要だ」と言われるのでしょうか。結論は、「ビジネスでは時間的な制約がボトルネックとなる」からです。

仕事は、限られた時間の中で、最大限の成果を出すことが求められます。仮説思考は、まさに限られた時間の中で最大の成果を出すための思考法なのです。

仮説思考を理解するために、仮説思考と対をなす「網羅思考」について考えてみましょう。網羅思考は、事象やデータから結論を導き出すボトムアップのアプローチです。網羅思考で結論を導き出すときは、考えうるさまざまな事象を抽出し、それぞれについて分析して結論を導き出します。

網羅思考のデメリットは、時間が無制限にかかってしまうことです。網羅思考では、情報の収集や分析にばかり時間が取られ、肝心な結論がいい加減になってしまうことがあります。

一方で、仮説思考は結論ありきの考え方です。仮説思考では、いきなり情報収集をせず、現状持っている情報から仮説を立て、仮説を証明するために必要な情報だけを集めていきます。

「でも、仮説が間違っていた場合は大きなタイムロスになるのではないか?」と思われる人がいるかもしれませんが、心配はいりません。もし仮説が間違っていた場合は、仮説を肯定するような情報がなかなか集まりません。そのため、早い段階で仮説が間違っていることに気づきます。

仮説思考を身につける2つのメリット

仮説思考を身につけるメリットは2つあります。「迅速な意思決定に役立つ」ことと、「問題解決に役立つ」ことです。それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。

迅速な意思決定に役立つ

ビジネスパーソンの中には、「情報が多ければ多いほど、正しく、迅速な意思決定ができる」と思っている人がいます。しかし実際は、情報が多ければ多いほど、情報に溺れてしまい、意思決定ができなくなります。

迅速な意思決定をするときのポイントは、選択肢を狭める情報だけを集めることです。たとえば、あなたが今日の夕飯をカレーにしようか、うどんにしようか悩んでいたとしましょう。迅速な意思決定に役立つ情報とは、「近所のスーパー、今日はジャガイモやニンジンの特売日らしいよ」といった情報です。「ジャガイモやニンジンが安いなら、今日はカレーにしよう」と意思決定ができますね。

一方で、あなたは「どうせ麺類にするなら、うどんよりも焼きそばがいいよ。近所のスーパー、今日は焼きそばが安いらしいよ。麺類といえば、暑くなってきたしそうめんもいいよね〜」といった情報を聞けば、より悩んでしまうかもしれません。

仮説思考は、自分の仮説の正しさを証明するための情報だけを集めるため、情報に溺れることがなくなり、迅速な意思決定ができるになります。

問題解決に役立つ

仮説思考は、「真の問題が何であるかを発見し、解決策を考えること」、つまり問題解決に役立ちます。

仮説思考は、「売上が伸びない」「仕事の効率が上がらない」などのビジネス上の問題だけでなく、「痩せられない」「早く起きられない」などのプライベートな問題の解決にも役立ちます。

仮説思考を使って問題解決をする例を1つ考えてみましょう。「売上が伸びない」という課題に対して、網羅思考で考えると、あなたは「売上が伸びない理由をリストアップする」ところから始めることになるでしょう。

売上が伸びない理由は、さまざま考えられます。「競合他社が進出しており、市場が激化している」「従業員のやる気が低い」「商材の魅力が低い」「社員同士のコミュニケーションが足りていない」といったように、売上に大きく影響を与えていそうな理由から、直接的には売上に関係がなさそうな理由までさまざまです。

売上が伸びない原因をすべてリストアップし、それぞれについて検証していくことは、時間的制約があるためほとんど不可能でしょう。

一方で仮説思考は、現状持っているデータや担当者の経験則から、「売上が伸びない理由はこれではないか」という可能性の高い仮説を立てて、その仮説を裏付けるために必要なデータを集めていきます。

仮説思考のプロセス

仮説思考を使うときは、どのような思考のプロセスをたどればよいのでしょうか。この章では、仮説思考の4つのプロセスについて確認していきましょう。

仮説思考には4つのプロセスがある

仮説思考には、「状況分析」「仮説の設定」「仮説の実行・検証」「仮説の修正」という4つのプロセスがあります。

仮説思考の4つのプロセスについて、詳しくみていきましょう。

1:状況分析

仮説思考の状況分析のフェーズでは、課題や問題の裏にある背景を考えます。状況分析する上で大事なことは、新しく情報を集めないことです。仮説がない中で情報収集を行えば、あなたは際限なく情報収集を続けることになります。あくまで今ある情報をうまく使って状況分析を行いましょう。

もし状況分析によって、今ある情報だけでは問題解決の仮説が立てられないことがわかった場合は、問題発見のための仮説を立ててから、情報収集を始めるようにしましょう。

2:仮説の設定

仮説の設定フェーズでは、So What?(だからどうした)とWhy So?(なぜそうなのか)を問い続けることで、課題を深掘りしていきます。課題を深掘りできなければ、問題解決につながらない表面的な仮説しか立てられません。

上記の例をごらんください。「社内アンケートを取ったところ、会社に不満があると答えた人が6割いた」という課題は、単なるファクトです。仮説を立てるためには、「だからどうした」を繰り返すことで、ファクトに解釈を与える必要があります。

上記の例では、最終的な仮説は「若手社員の業務量を減らすか、業務量に見合った報酬に上げていくことが課題ではないか」ということです。

So whatに加えて、Why so(なぜそうなのか)もあわせて考えましょう。例えば、会社に不満があると答えた人が6割いたのはなぜでしょうか。給与の低さが原因なのか、残業の多さが原因なのか、人間関係の悪さが原因なのか、さまざまな理由が考えられます。

上記例の場合であれば、従業員に「なぜ会社に不満があるのか」というアンケートを取れば解決しますが、通常は考えうる理由を一つ一つ検証していると、時間があっという間になくなってしまいます。

上記例の場合であれば、退職者の退職理由をまとめたリストを用いて、従業員が不満を持っている理由の仮説を立てるのも、効率のよい情報収集のための一つの手です。

仮説の設定において重要なことは、最初から100%正しい仮説を立てようとしないことです。なぜなら、完璧な仮説を立てることは極めて難しいからです。仮説は、検証した際に7〜8割正しければ上出来です。

3:仮説の実行・検証

仮説の実行・検証フェーズは、仮説を証明するためにリサーチを行ったり、実際に行動したりするフェーズです。仮説の検証は、打ち手を決めるためにとても重要です。間違った仮説を基に打ち手を立てて実行してしまえば、無駄なリソースを大量に投入することになります。

仮説は一般的に、定性データと定量データから検証していきます。

定性データとは、数値化が不可能な情報のことです。定性データは、お客さまや現場へのヒアリング、インタビュー調査などによって集めます。

定量データとは、数値化できる情報のことです。定量データは、点数化されたアンケート調査などによって集めます。

4:仮説の修正

100%正確な仮説を立てることは困難です。どんな仮説でも、多かれ少なかれ外れます。仮説が間違っていることに気づいた段階で、仮説を修正しましょう。

仮説が間違っていた場合、大きなタイムロスが発生するのではないかとあなたは心配になるかもしれません。しかし、心配は不要です。仮説が間違っていた場合、仮説の検証をしていく中で、かならずリサーチ結果と仮説のつじつまが合わなくなっていくため、あなたは早々に仮説が間違っていることに気づきます。

筋のよい仮説を立てるために重要な3つの観点

すばらしいアイデアやひらめきは、ロジックだけでは生まれません。ときには、既存の枠組みにとらわれない発想力も必要です。筋のよい仮説を立てるためには、重要な3つの観点があります。

この章では、仮説思考において重要な3つの観点をご紹介します。

自分と反対側の視点に立つ

あなたが売り手側ならば、お客様の視点で、あなたが経営者ならば、現場の視点で考えてみましょう。自分と反対の立場の人の視点に立つと、よい仮説がひらめきます。

たとえば、あなたが営業をしている商材がなかなか売れないとしましょう。普通であれば、あなたは「なぜ売れないのだろうか」と担当者目線で考えるはずです。しかし担当者目線では、筋のよい仮説はなかなか立てられません。

そんなときは、あなたが、「あなたの提案を受けるお客さまの立場ならば、その商材を買うかどうか」を考えてみてください。あなたは商材を買うでしょうか。買わないならばなぜ買わないのでしょうか。原因は価格なのか、機能なのか、それともサポートの弱さなのでしょうか。

このように、自分と反対側の立場の人の視点に立てば、自然と仮説が立てられます。

思考を両極端に振る

思考を両極端に振ることも、筋のよい仮説を立てる上で重要です。

たとえば、自社のリソースの8割を新規開拓に割いているならば、その8割を既存顧客の掘り起こしやアップセルに割いたらどうなるだろうか、と考えます。

思考を両極端に振ることで、「新規獲得に8割のリソースを割かなければ、現在の成長率は達成できない」と現状の施策の重要性を再認識できたり、逆に「8割のリソースを既存顧客の掘り起こしやアップセルに使っても、うまくいけば現在と同じ成長を維持できるかもしれない」といった発見ができたりします。

0ベースで考える

0ベースで考えるとは、今までの常識や制限などの枠組みを一度外して、まっさらな状態で考えることです。0ベースで考えることで、より創造的なアイデアが生まれやすくなります。

たとえば、あなたのチームはとある商品開発を任されたとします。商品開発には、予算や人的リソースなどのわかりやすい制約や、「こんなアイデアは上司には受け入れられないだろうな」といった、あなたが無意識に持っている制約があります。このような意識的、無意識的な制約は、あなたのアイデアに「待った」をかけます。

0ベースで考えるときの注意点は、「でもこれは無理だな」と考えないことです。無理だと考えてしまうとその時点でよいひらめきは生まれなくなってしまいます。

よい仮説に必要な2つの条件

よい仮説を立てるためには、2つの条件が必要です。それぞれの条件を詳しくみていきましょう。

仮説が十分に掘り下げられていること

十分に仮説が掘り下げられていないと、真の問題が明らかにならず、表面上の問題解決しかできません。仮説を掘り下げることで、最重要課題(イシュー)が明らかになります。仮説は、So What?(だから何?)とWhy So?(なぜそうなのか)を自問自答することで、掘り下げられます。

行動に結びつく仮説になっていること

アクションに結びついていない仮説は、いざ実行しようとしても、実行に移せません。たとえば、アクションに結びつかない仮説とは、「分析の結果、営業部の業務効率が落ちていることが判明した。営業担当者は効率よく働くべきだ」といった仮説です。「効率よく働け」と言われても、「効率よくって、具体的にどうすればよいのだろうか」と悩んでしまいますよね。

「効率よく働くべき」という仮説を、行動に結びつく仮説にすると、「営業担当者は、見込み度が低いお客さまに対しては、自社内で電話対応をする。また、フレックスやリモートワークも活用して、効率化を図る」といった仮説になります。

仮説思考のトレーニング方法

仮説思考は、トレーニングをしなければ身につきません。この章では、仮説思考のトレーニング方法をご紹介します。

So What? Why So?を考えるクセをつける

「だからどうした」「なぜそうなのか」を考えるクセをつけましょう。よい仮説に必要な2つの条件でもお伝えしましたが、十分に掘り下げられていない仮説では、表面上の問題解決にしかなりません。

仮説の掘り下げは、So What? Why So?を日常的に意識することで鍛えることができます。

たとえば、「コミュニケーションが下手」なことが問題だとします。「だからどうした?」を繰り返すことで、真の問題が見えてきます。

上図の場合、最重要課題(イシュー)は「コミュニケーションの取り方」というよりも、「情報の伝達不足のせいで、余計な仕事が増えてしまっている」ことだとわかります。情報の伝達不足が課題ならば、情報共有のルールを設けることで、カバーできるかもしれません。

自分が興味・関心を持ったものに対して疑問を持つ

自分が興味・関心を持ったものに対して、疑問を持つことで仮説思考が鍛えられます。

  • なぜこれは流行るのだろうか
  • なぜこの広告は心を打つのだろうか
  • なぜ彼は仕事が早いのだろうか
  • なぜこのデザインなのだろうか

といった疑問を持ち、それらに対する仮説を持ちます。

  • 人々の共感を得るフレーズを巧みに使っているから流行る
  • 仮説を立ててから業務に取り掛かっているから、彼は仕事が早い

といった具合に、疑問に対する仮説をセットで持ちましょう。疑問に対し仮説を持つことで、あなたの仕事に活かせる重要な示唆が得られるはずです。

おわりに

仮説思考は、トレーニングを繰り返すことで使いこなせるようになります。みなさまが仮説思考を身につけ、仕事を効率化できれば幸いです。

なお、少ない情報を整理して仮説を立てるときには、さまざまなビジネスフレームが役に立ちます。わたしたちは、「利益を作る分析力がつく!ビジネスフレームワーク集25選」をご用意しました。下からダウンロードできますので、合わせてチェックしてみてください。

この記事を読んだ人におすすめ