私たちマケフリ編集部が開催するウェビナー「失敗しない インサイドセールスの立ち上げ方講座」の参加者が抱えるお悩みは、会社や部署の状態によって多岐に渡ります。
※当社の「失敗しない インサイドセールスの立ち上げ方講座」は、現在開催しておりません。インサイドセールスをはじめとする営業のノウハウにご興味がありましたら、当社の「営業」カテゴリの記事をごらんください。
記事や動画で「インサイドセールスの概論」を勉強しても、自社に特有の課題まで解決できることは稀です。だからこそ、お悩みを抱えているご担当者さまは、質問によって個別の課題を解決できる「セミナー」に来てくださるのだと、私たちは感じています。
ウェビナーを開催しご質問をお受けしているうちに、みなさまが悩みがちの課題は、大きく5種類に分けられることがわかりました。
- インサイドセールス組織の設計について
- インサイドセールスのPDCAについて
- インサイドセールスにおける「ナーチャリング」について
- フィールドセールスとの「連携」について
- ツールを用いたインサイドセールス業務について
この記事では、インサイドセールスセミナーの講師「佐々木 将人」さんに、みなさまの疑問にお答えしていただきました。
別記事「インサイドセールスの業務とは?これからインサイドセールスに配属される方のためにまとめました」では、インサイドセールスの概要から業務内容まで詳しくご紹介しています。ぜひあわせてごらんください。
この記事のもくじ
インサイドセールス組織の設計に関するQA
インサイドセールスは、比較的最近一般化した部署です。そのため、インサイドセールスチームが立ち上がって間もない組織も多いはずです。
この章では、インサイドセールス組織の設計に役立つ2つの質問に、佐々木さんに答えていただきました。
インサイドセールスを成功させるには、専任を設けるべきでしょうか?
私たちは、専任を設けるリソースがあるならば、専任をつけたほうがよいと思っています。しかし大半の場合、人手は足りていないはずです。そのため現実的には、兼任から始めることになるでしょう。
兼任する場合は、フィールドセールスやマーケティング担当者がインサイドセールスも担当することが多い印象です。
「KPIにすべきはアポ数」とのことでしたが、最低限どんな内容のアポであるべきでしょうか?
私たちは、「こういう内容のアポはNG」「この話をできていないならアポではない」など、内容によるアポの基準を設けていません。お客さまが会いたいと言ってくださっているなら、内容にかかわらず接触することを心かけています。
一方で、インサイドセールスがフィールドセールスに引き渡すアポ数は、社内のリソースを鑑みて決めています。
私たちは、営業に余裕がある時は、フィールドセールスに引き渡す基準をゆるくします。反対に、フィールドセールスに余裕がなければきつくしています。1部署だけでKPIを考えるのではなく、営業部隊、ひいてはマーケティング部隊を含めたプリセールス側の全体最適を考えるのが重要です。
全体最適を考えた運用では、部門間連系が欠かせません。私たちは、商談担当者が取り組みやすい商談を作るために、定期的に引き渡しの基準をすり合わせるミーティングの時間を作っています。
「このくらいの温度感のアポを渡します」と合意が取れていれば、部門間で揉めることはありません。
インサイドセールスのPDCAを回すためのQA
この章では、お客さまと接触し好印象を持っていただくために必要な、PDCAを回すためのQAをご紹介します。
トークスクリプトを用意していますか?
私たちは、がっちりと決まったスクリプトを用意していません。ヒアリングできた内容に応じて、柔軟に対応しています。私たちが扱う商材は、マーケティングオートメーションです。マーケティングオートメーションは、活用用途のバリエーションやお客さまの課題が多岐にわたるため、スクリプト化が難しいんです。
トークスクリプトの用意の有無は、一概にどちらが良いとは言えません。トークスクリプトを作っておけば、新人でも効率よく営業トークできますし、売れる営業担当者の「勝ちパターン」をシェアできます。
トークスクリプトを用意するかどうかの一つ判断基準が、「提案の幅」です。
商材が解決できるのが特定の課題であったり使い方に幅がなかったりすれば、スクリプトを作っておけば楽に対応できます。反対に、商材の使い方が業種業態によって違ったり、商材が解決する課題に幅があったりする場合は、個別でトークを考えた方が効率がよいかもしれません。
アポを取るためのノウハウはありますか?
残念ながら、アポがザクザク取れる魔法のフレーズやテクニックはありません。
しかし、徹底した下調べや準備によって「アポ取得の打率」を上げることはできます。弊社はマーケティングオートメーションとSFAをインサイドセールスでフル活用しています。ここでは、弊社のマーケティングオートメーションとSFAの活用事例を少しご紹介します。
マーケティングオートメーションを使うと、顧客にメルマガなどで接触し、接触後の行動履歴がどんどん蓄積されます。一定以上行動履歴が溜まったリードは、見込み度合いが高まった「HOTリード」として自動で通知されます。ここからは、SFAの出番です。
SFAには、会社情報、顧客の属性情報だけでなく、
- 営業担当者が取り組むべきToDo
- 案件の詳細
- 担当者だけではなく、決裁者や関係者の情報
などを書き込め、インサイドセールスのメンバー同士で共有、編集できるのです。
下調べした情報や、接点の蓄積を怠らずに記載しておけば、お客さまの状況が理解しやすくなり、提案の質も高まります。
SFAに営業ログを残しておけば、過去の案件がそのまま、「どのように受注、失注したのか」を学べる教材になります。新規のお客さまとの接触時でも、似た業種業態の営業ログを参照しておけば、お悩みの傾向を掴めるかもしれません。
「SPIN話法とは?相手の潜在ニーズを引き出す質問のフレームワークを徹底解説」や「営業は「ヒアリング」で決まる!成果アップにつながるヒアリングをしよう」では、営業トークに活用できるフレームワークや、ヒアリングの手順をまとめています。あわせてごらんください。
リストが尽きることはありますか?また、リストが尽きた場合はどうすればいいですか?
もちろん私たちも、リストが枯渇してきたな、と感じることはあります。リストが尽きる前に、リード獲得の手法を確保しておきましょう。
私たちが使っているリード獲得手段は、以下の通りです。
- メルマガ登録
- eBook(ホワイトペーパー)ダウンロード
- ウェビナー申し込み
- 製品お問い合わせ
リードを獲得することを「リードジェネレーション」と呼びます。リードジェネレーションの概要を知りたいご担当者さまは、「リードジェネレーションとは?1番わかりやすい入門編」をごらんください。リードジェネレーションの最近の傾向や、リードジェネレーションにまつわる調査レポートを学びたいご担当者さまには「調査レポートでわかる「リードジェネレーション」|知っておきたい手法や現状を網羅しました」がおすすめです。
リストが枯渇の対策には注意点があります。新しくリードを獲得する施策だけに取り組んでいると、顧客獲得コストがかさんでしまいます。リストの枯渇への対応には、既に存在するリストに再アプローチするのも有効です。マーケティングオートメーションがあれば、過去の顧客の行動も検知し、自動で通知されます。個別対応をしていなくても、案件化の可能性があるリードは勝手にリストに上がるため、再アプローチしやすいのが特徴です。休眠顧客へのメール文面は、「休眠顧客の掘り起こしに成功したメール文例と、4つのテクニック」をご参考ください。
インサイドセールスの「ナーチャリング」にまつわるQA
ナーチャリングとは、顧客の興味の育成を意味します。インサイドセールスは、商材への関心が高まった顧客をフィールドセールスへ引き渡します。つまり、顧客の興味を育成すればするほど、フィールドセールスに引き継げるアポ数は増えます。この章では、インサイドセールスができるナーチャリングにまつわる質問に、佐々木さんに答えていただきました。
BANT情報・属性情報が不明のリードでも、ナーチャリングで見込みが高まることはありますか?
リード情報が不明瞭なリードの育成は、もちろん可能です。
BANT情報とは、商談から成約にいたるまでの可能性を知る重要な判断要素ですね。BANTは、予算(Budget)、決裁フロー(Authority)、ニーズ(Needs)、導入予定時期(Timeframe)の頭文字をとっています。
接触し始めの頃は、業種、役職がわからない状態でのアプローチのため、興味関心に合った提案ができないかもしれません。
そのため、まずは情報をとりに行くために接触しましょう。たとえば、初めはメールで接触し、リンククリックなどの行動情報から興味を推測します。次にセミナーやeBookなどに誘導し、情報を埋めれば、徐々にお客さまの関心対象が浮き彫りになります。
ナーチャリングのコンテンツは、マーケのものを使った方がよいでしょうか?
お客さまにとって見やすく、ニーズに沿った提案ができるのであれば、どこの部署の資料を使っても大丈夫です。
ここでのアドバイスは、「部署関係なく使える資料はどんどん使った方がよい」ということです。
一般的には、営業チームの資料は「製品の仕様」や「解決できる課題」「サポート体制」といった、売りに近いテーマを扱います。それは、営業の目的が「提案を通し、買っていただく」ことにあるからです。
しかし、商談フェーズのお客さまであっても、「業務ノウハウ」や「事例」といった、売りから少し遠いテーマに興味を持たれているケースがあります。
そこで、マーケティングチームの資料の出番です。
マーケティングチームの資料やコンテンツは、「お役立ちノウハウ」「事例集」などの、売りから遠いテーマも扱います。マーケティングチームにとって、「認知獲得」や「興味付け」は重要な任務だからです。
営業とマーケティング、ひいては社内すべてのコンテンツに目を光らせておくと、インサイドセールスは提案の幅を広げられます。
フィールドセールスとの「連携」についてのQA
インサイドセールスと対比される部署がフィールドセールス、いわゆる「営業」です。フィールドセールスは、インサイドセールスから引き継いだリードと商談し、クロージングまで対応するのが一般的なスタイルです。この章では、インサイドセールスとフィールドセールスの連携にかんする質問をまとめました。
インサイドセールスとフィールドセールスの比率はどの程度でしょうか?
当社は、インサイドセールスとフィールドセールスの比率は2:1です。
両者に、絶対的な比率はありません。比率は、ボトルネックがどこなのかを見ながら調整しましょう。柔らかい案件が多い場合、インサイドセールスが少ないと、案件を捌けずにフィールドセールスに負担をかけてしまいます。見込み確度の高い案件が多いなら、フィールドセールスの層を厚くして、クロージングに対応できる人材を確保しましょう。
インサイドセールスとフィールドセールスを分けるメリットを知りたいです。
インサイドセールスとフィールドセールスには、部署を分業するメリットと統合するメリットがそれぞれあります。
まずは、分業するメリットです。
- インサイドセールスとフィールドセールス各分野のノウハウを蓄積しやすい
- 1人がカバーする領域が限定されるので、業務効率があがる
分業しておくと、各部門のKPIを細分化でき、案件数の増減やボトルネックになっている箇所が明確になります。インサイドセールスのKPIはアポ数、フィールドセールスのKPIは受注数です。細かくKPIを区切っておけば、営業ステージが可視化され、効率的に問題点を洗い出せます。
次に統合するメリットです。
- 情報共有の手間や齟齬がなくなる・連携コストがなくなる
- 同一人物が対応した方が、お客さまとの信頼関係を構築しやすくなる
お客さまにとって、途中で担当が変わるのは不安に感じられるものです。継続して担当者が最後までお客さまと寄り添う営業スタイルは、お客さまからの信頼を得られます。
また、部署を分けると、その分コミュニケーションコストがかかってしまいます。特に少人数の会社では、上司同士でしか情報交換がないと、やりとりを手間に感じる方も少なくないでしょう。
もし一貫させるか分けるか悩んだ場合は、完全には分業せず、役割分担して比率を調整しましょう。
インサイドセールスがお客さまに接触してから、フィールドセールスに引き渡すまで、どのくらいかかりますか?
私たちのリードタイムはかなりバラバラです。月単位でかかることもあれば、即日で引き渡しまで繋がることもあります。
私たちが決めているのは、どのタイミングで失注に落とすかの基準です。リードタイムが読めないからこそ、営業ステージの管理は大切なんです。
自社では、下記の流れで営業ステージを組んでいます。
- 資料請求フォームに登録
- 資料送付
- 個別でメールか電話でフォロー
上記の流れの中で1から3までの間で3、4週間かかっていたら、失注にすることがほとんどです。4週間反応がないお客さまに対して、インサイドセールスのリソースをかけて対応するより、新規リードに対応した方がよいと判断しているからです。失注にしたお客さまには、メルマガで定期接触しているため、完全に接触が途切れるわけでありません。
SFAを使っていれば、過去の接触記録も残せて、セールスチーム内で共有できます。
ツールを用いたインサイドセールス業務にまつわるQA
インサイドセールスに取り組むなら、情報の蓄積、業務の効率化が叶うツールの導入がおすすめです。この章では、営業のための商談を作るツール「マーケティングオートメーション」と営業記録を共有できる「SFA」に焦点を当ててお話します。
HOTになりやすいリードの特徴はありますか?
マーケティングオートメーション「Kairos3 Marketing」には、顧客のWeb上の行動を追跡、点数化し、一定以上点数がたまった顧客を「HOTリード」として通知するシステムがあります。
どのようなリードがHOTになりやすいかは、各企業のスコア設定に依存するため、会社によってさまざまです。
「事例ページ」や「商品ページ」への来訪は、高いスコアに設定するのが一般的です。そのため先述のような行動は、HOTになりやすい行動と言えるかもしれません。
しかし、HOTになりやすいリードの特徴は、どうしてもツールでは弾き出せません。HOTリードになりやすいと推定した行動が、本当に受注に近い行動かどうかは、営業が目で判断するしかないんです。
初めは、特徴と行動と営業が持っている知見から、HOTリードになりやすい設定をしましょう。そのあとは実際に営業をしつつチューニングが必要です。
見込みの高いリードを選別することを「リードクオリフィケーション」と呼びます。リードクオリフィケーションについては別記事「リードクオリフィケーションとは?概要から理想の流れまでまとめました」をご参照ください。
「スコアリング」をどのように分析すると優先順位を付けられますか?
スコアリングはあくまで判断基準です。そのため、優先順位をつけるときは、最後は人力で判断しましょう。ここからは、従来の営業で培った目の出番です。
私たちは、時にはHOTリードになっていないお客様にも、人の目を介してアタックすることもあります。
たとえば、下記の項目は分析に活用できる情報です。
- ユーザーの属性
- 企業の属性、企業規模
- 自社が注力している顧客かどうか
- Webの行動履歴
- 過去の接点
- 営業の直感
私たちは、セミナーから引き上がったリードに優先順位をつけるために、アンケート項目に気を使っています。セミナーで使っているアンケートの情報は、「セミナーアンケート項目をなんとなく決めていませんか?目的あるアンケート項目例と2つのアンケートの取り方」にまとめましたので、ぜひこちらもごらんください。フォーム作成時は「これを聞いたら何を判断できるのか?」と立ち止まりながら設計しましょう。
マーケティングオートメーションがあれば、インサイドセールスは1人でも可能でしょうか?
1人は確かに困難ですが、ツールは業務を効率化してくれるはずです。ツールを使えば、接触の優先順位を付けやすくなります。
「質より量」といった性質を持つインサイドセールスは、一人では難しいからこそツールが役立つのです。
私たちのお客さまに、マーケティングからインサイドセールスまで一人でご担当されているお客さまがいらっしゃいます。
三光製作株式会社さまの詳しい事例もあわせてごらんください。
彼らは、
- 営業の属人化解消
- 対応の迅速化
これらを実現するために、営業プロセスを「初動対応するインサイドセールス」と「提案するフィールドセールス」に分けました。
1人で業務こなしていれば、業務がたてこむこともあります。多忙な日々の中で対応忘れを防ぐため、彼らは、案件ごとにSFAのToDo項目にやるべきことを入力しています。毎日「Kairos3 Marketing」にログインし、やるべきことの優先順位を確認しながら業務を進めているとお話くださいました。