「One to Oneマーケティング」は、手間がかかるアプローチだと考えられてきました。しかし、デジタルマーケティングが浸透するにつれて、One to Oneマーケティングが容易になり、注目が集まるようになりました。この記事では、One to Oneマーケティングの定義や手法、具体例から進め方までご紹介いたします。
この記事のもくじ
One to Oneマーケティングとは
この章では、One to Oneマーケティングの定義を「マス・マーケティング」と比較しながらお伝えします。
One to Oneマーケティングとは?
One to Oneマーケティングとは、顧客を集団としてではなく、「個」として捉えるマーケティングの概念です。
One to Oneマーケティングは、「リレーションシップ・マーケティング」や「顧客関係マネジメント」とも呼ばれます。主にBtoBマーケティングで使われる用語ですが、BtoCマーケティングにも通用します。
現在、消費者の情報収集の手段は多岐に渡ります。テレビ、Web、新聞、知人の口コミ、SNSなど、さまざまです。そのため、消費者の購買行動を特定のパターンに分けて分析するのは至難の業です。
「購買行動モデル」と呼ばれる、「消費者がサービスや商品を認知、発見してから購入にいたるまでの過程」をあてはめるだけでは、消費者の行動は正確には見えてきません。
One to Oneマーケティングは、このように多様化した現代に必要な考え方です。
マス・マーケティングとOne to Oneマーケティングの違い
One to Oneマーケティングは、時代の流れとともに「マス・マーケティング」から変化してきました。市場競争の激化、顧客情報データベースの発展、コミュニケーション手段の多様化などの背景によって、One to Oneマーケティングという考え方がうまれました。
マス・マーケティングの目的は、ある商品をできるだけ多くのお客さまに購入いただき、市場シェアを拡大することです。テレビCMや新聞、雑誌などのマスメディアを利用して幅広い認知を獲得し、一定の売り上げを見込みます。
一方で、One to Oneマーケティングの目的は、お客さまの満足度を高め、お客さまに引き続き自社をご利用いただくことです。
One to Oneマーケティングでは、お客さまの特徴・嗜好・購入履歴などにあわせて最適な商品やサービスを提供します。お客さま個人と向き合ってマーケティングすることで、お客さまのLTV (Life Time Value)の拡大を目指します。
LTVとは、「お客さまが企業にもたらす価値(=売上)の合計」のことです。「顧客生涯価値」とも呼ばれます。LTVは、初回の購入からそのお客さまと企業の関係が続く限り増え続けます。
Web解析ツールがOne to Oneマーケティングの普及を後押しした
先ほどお伝えした通り、One to Oneマーケティングは、お客さまを「個」としてとらえます。
インターネット環境が今ほど発達していなかった時代は、お客さまを「個」としてとらえることは大変でした。消費者調査などのアンケートやインタビューを繰り返しながら、お客さまのニーズを把握し、セグメンテーションするしかありませんでした。
Webの普及と、Web解析ツールの登場により、お客さま一人ひとりのWEB上の行動履歴を取得できるようになりました。ツールを利用すると、お客さまがWebサイトに「どの検索エンジン、どのWEBサイトからやって来て」「どのページを参照し」「どこで離脱したか」を検知できます。
お客さまの行動履歴がわかれば、そのお客さまの傾向に合わせたマーケティング施策を計画できます。つまり、お客さまを個として捉えたOne to Oneマーケティングが可能になります。
One to Oneマーケティングの効果
One to Oneマーケティングには、「商談成約率の改善」「顧客単価の増加」「利用期間の改善」の3つの効果があります。この章ではそれぞれの効果についてお伝えします。
商談成約率の改善
1つ目のOne to Oneマーケティングの効果は、商談成約率の改善です。
One to Oneマーケティングによって商談成約率が改善する理由は2つあります。
- 商談化の見込みのあるお客さまに絞って商談できる
- 商談化の見込みが低いお客さまの興味を育成できる
One to Oneマーケティングを取り入れると、商談化の見込みのあるお客さまがかんたんに見つかります。マーケティングオートメーションなどを使い、One to Oneマーケティングを実践すると、お客さまのWeb上の行動履歴がわかるようになります。そのため、お客さまがどの程度自社の商品の興味を持っているか、判断できるようになります。これを見込み客の選定(リードクオリフィケーション)と言います。
いますぐ商談には繋がらないお客さまには、メールなどで情報を送り、商品への興味を育成します。これを顧客の興味づけ(リードナーチャリング)と言います。
顧客単価の増加
2つ目のOne to Oneマーケティングの効果は、顧客単価の増加です。
One to Oneマーケティングでは、お客さまの過去の購入履歴や購買行動履歴を、データベースにまとめます。データが溜まれば、お客さまの購買や行動の傾向を読めるようになり、次に売るべきものやとるべき戦略が見えてきます。
売れた商品の関連商品を売る「クロスセル」や、同じ商品のより価格が高いものを売る「アップセル」ができるようになり、顧客単価の増加を見込めます。
利用期間の改善
3つ目のOne to Oneマーケティングの効果は、利用期間、頻度の改善、リピーターの増加です。
自社商材を長期間、高頻度で使っていただくには、常にお客さまに満足していただく必要があります。One to Oneマーケティングを取り入れると、お客さまは自社商材に対し、以下のように感じてくださいます。
- 自分の欲しいタイミングで欲しい情報が来る
- よく訪問するページに自分にぴったりな情報が掲載されている
- 購入した後のサポートが充実している
すると自社商材に対するお客さまの信頼や愛着が沸き、お客さまの満足度が高まります。
One to Oneマーケティングでは、お客さまの購買傾向をデータベースで管理するので、お客さまのニーズに合わせたマーケティング施策が可能になります。つまり、One to Oneマーケティングを取り入れれば、お客さまが欲しいタイミングで、欲しい情報をお送りできるのです。
One to Oneマーケティングの考え方に基づいたサポートは、お客さまを個人として捉え、一人ひとりのお悩みや状況に寄り添うサポートです。紋切り型ではないサポートはお客さまの心象も良いでしょう。
One to Oneマーケティングを取り入れた施策の手法例
One to Oneマーケティングを具体的に知るために、いくつかの手法について学んでおきましょう。この記事では、ダイレクトメール、レコメンデーション、リターゲティング広告をご紹介します。
ダイレクトメール
お客様個人に宛てたダイレクトメールは、One to Oneマーケティングの手法のひとつです。たとえば以下のような場面が、ダイレクトメールでOne to Oneマーケティングをする場面です。
- 展示会に参加した顧客に個別に紙のDMを送る
- 買い物にきたお客さんにセールの情報をハガキで送る
- 商品の資料を請求したお客さんに商談のアポをメールで持ちかける
ただし、同じ内容のダイレクトメールを一斉送信した場合はOne to Oneマーケティングとは言えません。
レコメンデーション
レコメンデーションとは、「顧客の行動履歴などを分析し、顧客の興味・関心に合わせた商品・サービスをおすすめすること」です。わかりやすい例は、Amazonの「おすすめ」機能です。
Amazonは、顧客の閲覧履歴や購入履歴をデータベースに保存しています。それをもとに、顧客が興味のありそうな商品をおすすめしています。
他にも「オウンドメディアの関連記事表示」などがレコメンデーションにあたります。オウンドメディアの運営システムがユーザー個人のCookieを取得し、「この記事を読んだ人なら、この記事も読みたいはず」と判断しています。
Cookieとは、ユーザーがWebサイトに訪問したときのデータを、ユーザーの元に記録しておくための仕組み、あるいはその仕組みを実現するためにユーザーに送られるデータのことです。
リターゲティング広告
リターゲティング広告(リマーケティング広告)とは、「1度サイトに訪問して離脱したユーザーにターゲットを絞り、表示する広告」のことです。
サイトの運営システムがサイトに訪問したユーザー個人のCookieを取得し、リターゲティング広告を表示します。リターゲティング広告は一度サイトに訪問した興味、関心の高いユーザーの再訪を促します。
リターゲティング広告のメリットは、「コンバージョン率が高いこと」です。1度サイトに訪問したということは、そのユーザーはサイトの商材への興味、関心が少しはあると推測できます。サイトを初めて訪問するユーザーよりも、自社商材の購入ハードルが下がっているため、コンバージョン率が高くなります。
マーケティングオートメーションでOne to Oneマーケティングを実現する方法
One to Oneマーケティングの考えに基づいた施策を全て手作業で行うのは大変です。One to Oneマーケティングの準備を効率化するツールがあります。それはマーケティングオートメーション(MA)です。
この章では、マーケティングオートメーションを使ってOne to oneマーケティング施策を進める方法についてお伝えします。
1:自社の顧客リストをマーケティングオートメーションに入力する
One to Oneマーケティングでは、お客さまと直に接触するため、詳細な顧客データベースの構築が必要です。
企業にはお客さまの情報が蓄積されています。お客さまの情報を集めてマーケティングオートメーションに入力すれば、かんたんにデータベースが作れます。以下の手順でデータベースを作成しましょう。
名刺のデジタル化には、名刺管理サービスの利用がおすすめです。名刺管理サービスを使えば、名刺をスキャンするだけで欲しい情報を取得でき、自動でリストが完成します。
セミナーや展示会などの申し込みフォームに入力された、お客さまの個人情報を整理しましょう。マーケティングオートメーションへの入力は、ほとんどの場合csv形式でアップロードするだけで完了します。
2:お客さまの行動履歴をとる
顧客データベースが作れたら、そのデータの解像度を上げましょう。解像度を上げるとは、お客さまの行動履歴を取得し、情報の精度を上げるということです。One to Oneマーケティングで扱う行動履歴は
などです。
行動履歴が必要な理由は2つあります。
1つめの理由は、Cookieとお客さま情報を結びつけるためです。マーケティングオートメーションを使ってOne to Oneマーケティングする際は、ブラウザのCookieとお客様情報の紐付けが必要です。
2つめの理由は、名刺やフォームに入力された情報だけでは、そのお客さま個人の興味、関心はわからないからです。「自社のどんな商材に興味があるのか?何に課題を感じているのか?」という、お客さま個人の傾向を推測して、はじめてOne to Oneマーケティングができます。
お客さまと接触して行動履歴をとるために、以下のような施策を実行しましょう。
注意点が一つあります。この段階では、お客さまを分けるのではなく、リスト全体にむけて施策を実施しましょう。まだお客さま一人ひとりの興味がわかっていないからです。
3:行動履歴を分析し、見込み客を選出する
2の行動履歴取得後は、自社の商材に興味がありそうな見込み客を選出します。これを「リードクオリフィケーション」と言います。
マーケティングオートメーションの「スコアリング機能」を使えば、行動履歴に応じた見込み客の選出がかんたんです。
スコアリング機能とは、かんたんに説明すると、お客さまの行動に点数がつく条件を設定し、見込み度を測ることです。
例えば「自社サイトの商品ページアクセスで5点」「メルマガ内の事例ページをクリックで3点」「資料請求で10点」といった条件をつけます。この合計点数が高いお客さまほど、見込み度が高いと判断できます。
マーケティング担当者が一定以上の点数がついたお客さまにOne to Oneで対応するか、営業に引き渡します。
4:見込みの高いお客さまにOne to Oneのアプローチをする
3で選出した見込みの高いお客さまにOne to Oneのアプローチをします。ここで接触するお客さまは、商材に興味を持ってくださっていると考えられます。
そのため、今までのお客さまへのアプローチでも商談化率が高まるはずです。One to Oneマーケティングだからといって、アプローチの手法を今までと大きく変える必要はありません。
お客さまと直接話すときには、今まで取得したお客さまの企業情報や行動履歴から考えた、興味がありそうな話題を提供しましょう。
5:蓄積したノウハウをもとにPDCAを回す
One to Oneマーケティング施策の最適な方法は絶えず変わります。提供する商材やその競合商材、市場ニーズやお客さまの環境が変化するからです。One to Oneマーケティング施策を行う上で見えてきた知見やノウハウをもとにPDCAを回しましょう。
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※この記事は、8月10日に更新しました。