デシル分析とは、顧客を購入金額の高い順に10等分のグループに分けて分析する方法です。デシル分析は、かんたんに顧客分析ができるため、はじめて顧客分析にトライするマーケティング担当者におすすめの顧客分析方法です。
この記事では、デシル分析の概要や手順、活用方法をご紹介します。みなさまのお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
デシル分析の概要
最初に、デシル分析の概要を説明します。
デシル分析とは
デシル分析とは、「顧客を購入金額の高い順に10等分のグループに分け、各グループごとに分析する方法」です。10等分した各グループは、合計購入金額の高い順に、デシル1、デシル2、デシル3、・・・デシル10と呼びます。
デシル分析を活用する際の指標は、購入金額比率や累計購入金額比率、1人あたりの購入金額の3つです。具体的な計算方法は下記にまとめております。
デシル分析からわかること
デシル分析からわかることは、「売上に大きく貢献している顧客層(優良顧客)の範囲」です。
購入金額比率や累計購入金額比率、1人あたりの購入金額を分析すると、
「グループごとに、全体の売上に対してどのくらい貢献しているのか」
「どのくらいのグループで売上の大半を占めているのか」
がわかります。つまり、デシル分析を実施すれば、たとえば、「デシル1とデシル2だけで売上の8割を占めている。この層が私たちにとっての優良顧客だ」のような結果が明らかになります。
売上の8割は、上位2割が占めているという話を聞いたことがあるでしょうか。これは、「全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出している」という経験則「パレートの法則」に当てはまるものです。「パレートの法則とは?一番わかりやすい入門編」では、パレートの法則についてまとめております。あわせてごらんくださいませ。
デシル分析の目的
デシル分析の目的は、「顧客ごとに適した施策を実施すること」です。
すべての顧客に対して同じ施策を実施してしまうと、顧客ごとに適した施策を実施する場合にくらべて、費用対効果が低くなってしまいます。
デシル分析を実施すれば、優良顧客を特定できるため、たとえば、「デシル3までの顧客は優良顧客として、彼らだけには個別のアプローチをしてみよう」と、グループごとに適した施策を検討できます。デシル分析は、特に優良顧客向けの施策を考えるときによく使われます。
デシル分析の手順と活用方法
この章では、デシル分析の手順と活用方法を説明します。
デシル分析の手順
デシル分析の手順は、いたってシンプルです。
- 顧客を購入金額の高い順に並び替える。
- 顧客を10等分にグループ分けする。
(100人の顧客データなら、10人ずつのグループにする)- グループごとの合計購入金額を算出する。
- 購入金額比率や累計購入金額比率、1人あたりの平均購入金額を算出する。
購入金額比率や累計購入金額比率、1人あたりの平均購入金額の計算方法は前述しておりますので、そちらをご参照ください。
具体的な例を見てみましょう。ここでは、100人の顧客をデシル分析し、優良顧客を見つけ出します。上記4つの手順を踏むと、以下の結果が出ました。
上記の表から購入金額比率を抜粋し、下記のグラフにまとめました。
上記のグラフから、デシル1・2の売上金額は、売上全体の80%を占めていることがわかります。デシル1・2の顧客層は、購買意欲が高い優良顧客層だと推測できるでしょう。
対して、デシル3〜10の顧客層の売上金額は、合計しても売上全体の20%以下です。デシル3〜10の顧客層は、購買意欲が高くない顧客層かもしれない、と推測できます。
したがって、もしも優良顧客向けの施策を打つならば、デシル1・2の顧客層が対象になるでしょう。優良顧客には、個別に手厚くアプローチをしてみましょう。反対に、デシル3〜10の顧客層を対象として施策を打つならば、低コストで一斉にアプローチできる施策が効率的です。
また、デシル分析を実施する際は、「デシル1・2が優良顧客だ」だけで分析を終えるのではなく、優良顧客の「属性」も合わせて分析するとよいでしょう。というのも、「優良顧客には30代の男性が多い」という事実が明らかになれば、「30代男性に購入してもらうための施策を実施すれば、売上拡大に繋がるのではないか」という仮説が立つからです。優良顧客の分析によって、例のような仮説が立ったら、具体的な施策に落とし込みましょう。
デシル分析の活用方法
デシル分析の活用方法を、具体例とともに考えてみましょう。前章で説明した例をもとに考えます。
デシル1・2の顧客層は、合計購入金額の80%を占めており、購買意欲の高い優良顧客層だと判断できます。このような顧客層には、社員が顧客一人ひとりに個別対応するだけの価値があります。
なぜなら、優良顧客は、他のグループよりも購買意欲が高いと推測できるからです。優良顧客への手厚い対応が商品購入に繋がる可能性が高く、かけたコストに見合った効果が見込めます。具体的には、テレフォンマーケティングなどの、高コストで個別にアプローチする施策が挙げられます。
一方で、デシル3〜10の顧客層は、購買意欲が高くない顧客層だと推測できます。このような顧客層に、人的コストを高くかけてアプローチしても、コストに見合ったリターンが望めない可能性が高いでしょう。したがって、メルマガなど、低コストで一斉にアプローチできる手段が効率的です。
デシル分析では、グループごとに適した施策を考えることが大切です。
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デシル分析のメリットと注意点
この章では、デシル分析のメリットと注意点を説明します。
デシル分析のメリット
デシル分析のメリットは、「かんたんに顧客分析ができること」です。
デシル分析は、他の顧客分析の手段(RFM分析など)とくらべて、複雑な計算を必要としない分析方法です。そのため、デシル分析は、Excelの基礎知識さえあれば手軽に実施できます。デシル分析は、新しい施策を考える際の足がかりなど、かんたんな顧客分析を必要とする場面で活用できます。
デシル分析とよく比較されるRFM分析については、最後の章でご説明いたします。
デシル分析の注意点
デシル分析の注意点は、「優良顧客の精度が完璧ではないこと」です。
デシル分析における優良顧客には、「かつて一度大きな買い物をしたものの、それ以降は動きのない顧客」が含まれてしまう可能性があります。たとえば、10年前に一度大きな買い物をしただけの顧客を「優良顧客」とは呼べませんよね。しかし、通常のデシル分析では、頻度や期間を考慮しないため、1度だけ大きな買い物をした顧客を、優良顧客としてしまうことがあります。
上記のような事態を防ぐためにも、「半年間で一度でも購入があった顧客」「1年間で一度でも購入があった顧客」などの、設定した期間内に購入している顧客を対象としましょう。
デシル分析とRFM分析の違い
デシル分析と同じく、顧客分析の代表的なものとしてRFM分析が挙げられます。
デシル分析とRFM分析の違いは、グループ化の切り口です。
前述の通り、デシル分析は、購入金額のみで顧客をグループ化する分析方法です。
対して、RFM分析は、
Recency(いつ)
Frequency(頻度)
Monetary(購入金額)
の3つの切り口でグループ化する分析方法です。具体的には、RFM分析は、「Recency(いつ)」「Frequency(頻度)」「Monetary(購入金額)」のそれぞれの要素を、5段階評価などで点数化し、点数の高い顧順にランク付けする方法です。
RFM分析は、デシル分析より複雑な手順を必要とする代わりに、精度が高い分析方法です。RFM分析は、より踏み込んだ顧客分析を実施したい際に利用しましょう。