企業は、継続的に売上を伸ばすために成長戦略が必要です。成長戦略を描くための便利な考え方・フレームワークがアンゾフの成長マトリクスです。
アンゾフの成長マトリクスは、あなたが戦略策定に関わるなら、覚えておくべき概念です。
この記事のもくじ
アンゾフの成長マトリクスの概要
アンゾフの成長戦略のマトリクスの概要を理解しましょう。
アンゾフの成長マトリクスとは?
自社の成長戦略を決定する時に使うフレームワークです。「市場(顧客)」と「商品」の2つの軸にわけて、成長戦略を模索します。
アンゾフの成長マトリクスはいつ使うのか?
アンゾフの成長マトリクスは、これまでおこなってきた事業の成長が伸び悩み、新たに成長戦略を模索するときに使います。
アンゾフの成長マトリクスは、「市場(顧客)」と「商品」のそれぞれが、「新規」か「既存」かを組み合わせたものです。したがって、アンゾフの成長マトリクス製品戦略や販売戦略ではなく、事業もしくは企業戦略を検討する際に使うことに注意しましょう。
アンゾフの成長マトリクスから導き出される戦略
アンゾフの成長マトリクスからは、合計4つの成長戦略オプションを導き出すことができます。あなたが事業責任者として戦略を検討する立場なら、それぞれの4つの成長戦略について覚えておきましょう。
既存市場浸透(既存市場x既存商品)
アンゾフの成長マトリクスにおいて、「既存の商品」を「既存の市場(顧客)」に展開することを『既存市場浸透』と呼びます。
既存市場と既存商品の組み合わせによって売上が伸び悩み、アンゾフの成長マトリクスを使ってあらたな成長戦略を検討することになります。したがって、既存市場浸透の領域において、中長期的に有効な市場戦略を導き出すことは難しいと言えるでしょう。
既存市場浸透の領域で成長戦略を考えるならば、売上の要素となる「顧客数」「売上単価」「購入数」「購入頻度」のいずれかを伸ばさなくてはなりません。
しかしながら、既存の市場なので「顧客数」は変わりませんし、既存の商品なので、値上げをしない限り「売上単価」も変わりません。したがって、既存市場浸透の領域で成長戦略を考えるなら、必然的に「購入数」と「購入頻度」を上げるための施策こそが成長戦略となります。
アンゾフの成長マトリクスの既存市場浸透は、中長期的な成長戦略のオプションとしては効果が望めません。次に紹介する「新市場開拓」「新商品開発」のいずれかを最初に成長戦略として検討すべきです。
新市場開拓(新規市場x既存商品)
アンゾフの成長マトリクスにおいて、「既存の商品」を、まだ自社が参入していない「新規の市場(顧客)」に展開することを『新市場開拓』と呼びます。
たとえば、これまで中小企業をターゲットとしていた製品Aを、大企業や個人のお客さまをターゲットとして展開するための成長戦略が、アンゾフの成長戦略における新市場開拓にあたります。国内市場から海外市場へ、女性向け製品を男性市場にも販売していくなどの、市場領域の拡大を成長戦略として検討します。
アンゾフの成長戦略の新市場開拓は、企業の成長戦略として、多くの企業が採用するアプローチです。
新市場の開拓には、新市場におけるポジショニングによって、お客さまに自社の製品をうまく認知していただくアプローチが有効です。
ポジショニングは自社製品の差別化や優位性を決める重要な要素であり、製品マーケティング戦略の中核ともなる項目です。売れている製品はポジショニングがよいともいえます。くわしくは「ポジショニングとは?」が参考になります。あわせてごらんくださいませ。
新商品開発(既存市場x新規商品)
アンゾフの成長マトリクスにおいて、「既存の市場(顧客)」に対して「新たな商品」を開発・提供することでアップセルをねらうアプローチを『新商品開発』と呼びます。
既存のお客さまへのアプローチは、新規のお客さまへのアプローチよりも容易です。しかしながら、お客さまのニーズをしっかりととらえた新商品の開発は、時間と費用がかかり、事業リスクが伴います。
新商品の開発には、自社の強みを活かすべきです。自社の強みは、3C分析やSWOT分析によってみちびきだしましょう。
3Cは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」のそれぞれの英単語の頭文字をとったもので、それぞれのCは市場を分析する重要な要素となっています。3Cは市場環境を分析するためのフレームワークです。くわしくは「3C分析で勝てる戦略を導く方法・やり方のご紹介」をごらんくださいませ。
SWOT分析は、事業の環境分析をするためのフレームワーク(枠組み)です。SWOT分析は、3C分析と並ぶ、事業環境分析の有名なフレームワークです。くわしくは「SWOT分析とは?効率良いやり方と事例のご紹介」が参考になります。
多角化(新規市場x新規商品)
アンゾフの成長マトリクスにおいて、「新たな商品」を「新たな市場」に展開することで事業の成長をねらうアプローチを『多角化』と呼びます。
新しい商品の企画・開発にはリスクが伴います。さらにはそれを新たな市場に展開するとなると、リスクはより大きくなります。未開拓の領域に販路を確立するには、莫大な時間と費用がかかってしまうからです。
したがって、成長戦略を考える際には、『多角化』ではなく、まずは前述した『新市場開拓』や『新商品開発』から検討すべきです。
それでも多角化を成長戦略として採択する場合は、M&Aによる事業買収によって、新商品と同時に新たな顧客基盤を獲得することで事業リスクを低減することも検討しましょう。
さいごに
アンゾフの成長マトリクスは、この記事を読むことでしっかりと理解しておきましょう。「市場(顧客)」と「商品」が、それぞれ「新規」か「既存」かを組み合わせて、成長戦略を検討します。
アンゾフの成長マトリクスの考え方は、あなたの転職にも応用することができます。「市場」を「業界」に、「商品」を「スキル」に置き換えて考えてみましょう。どんなことが見えてきますか?