イノベーター理論は、最近の新しい技術や仕組みを取り込んだ製品マーケティングには欠かせない知識です。イノベーター理論をしっかりと理解することで、新技術を伴う製品のマーケティングについて知識がつきます。
イノベーター理論の概要と、イノベーター理論を活かしたマーケティングの手法について学びましょう。
この記事のもくじ
イノベーター理論の概要
イノベーター理論の概要を理解しやすいように整理しました。
イノベーター理論とは?
イノベーター理論とは、新しい技術や製品が、市場や社会に受け入れられる過程を理解するための1つのモデルです。イノベーター理論では、購入に関する行動や態度・対応にしたがって、市場や社会を5つの集団に分類しています。
イノベーター理論における購買者の5つの分類では、上の図のように、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードと分けています。
イノベーター理論を理解する目的とは?
イノベーター理論では集団を、購買の行動や態度によって分類しています。新製品や新技術は、買う人の心理の影響や社会の流れを反映したいくつかの段階を取りながら、市場に受け入れられます。
イノベーター理論のモデルを理解することで、企業のマーケティング担当者が市場に受け入れられるプロセスを予測できるようになります。イノベーター理論にしたがって、市場発展や製品の広まりに応じて遭遇する購買者の集団の規模や特性に合わせたマーケティング活動を展開し、自社の新製品や新技術の市場拡大が狙えます。
イノベーター理論では、それぞれの購買者層が持つ特性について理解すること、市場発展や製品の広まりによって購買者の集団毎をセグメンテーションの1つの形として捉えること、の2点が大切です。
セグメンテーションとは、買い手の市場やタイプを、売り手にとって意味のある要素で切り分ることです。セグメンテーションの目的は、自社の商品の独自の視点を見つけることと、自社商品の独自の優位性の発見です。くわしくは「セグメンテーションとは?事例で学ぶ基礎と活用方法」でまとめました。あわせてごらんくださいませ。
イノベーター理論を理解する上で欠かせない5つの集団
イノベーター理論を理解するためには、購買行動や購買の態度・対応に応じて分類できる5つの集団の特徴と特性を覚えておくことが大切です。新技術や新製品を市場に投入する際に接触する集団について順を追って説明します。
イノベーター
イノベーター理論におけるイノベーターは、新しい技術をもつ製品を好む集団です。「技術オタク」と呼ばれることもあります。製品よりも製品が持つ技術に、イノベーターの興味が集まります。そのため、イノベーターが製品を購入しても機能を試すことに注力して、製品の利便性についてはあまり興味をもっていただけない傾向にあります。
イノベーター理論からわかることは、製品の販売元は市場への技術や製品の投入の非常に初期の段階では、イノベーターの注目を集めるマーケティング活動が必要であることです。イノベーターは、製品の販売元がマーケティング活動に大きなリソースを投下しなくても、新製品を購入する傾向にあります。
イノベーターが製品を購入し、その技術を気にいると、他の潜在顧客に対して口コミで広めます。したがって、製品や技術市場投入の初期においては、イノベーターの利用によりアーリーアダプターなどに口コミする認知の連鎖を作り上げるために、イノベーター向けのマーケティングを仕掛けます。
アーリーアダプター
イノベーター理論の2番目の集団は、アーリーアダプターと呼ばれます。製品の市場普及のかなり早い段階で新製品を購入する点ではイノベーターと似ていますが、アーリーアダプターは技術志向ではありません。
アーリーアダプターは、新技術の利点を理解し、既存技術や製品との比較を通じて新製品を評価します。好奇心が旺盛で、積極的に自社や自分が抱える問題の解決を新製品で試みます。
アーリーアダプタは、自らの直感や先見性を頼りに製品の購入を決めます。その一方で、自社が、先行事例として紹介されることを好みます。したがって、アーリーアダプターにウケて先行事例になっていただくことで、次のアーリーマジョリティ向けのマーケティングツールができあがる連鎖が見込めます。
アーリーマジョリティ
イノベーター理論の3番目の集団は、アーリーマジョリティです。文字通り、市場における大多数にあたり、おおよそ全体の3割がアーリーマジョリティになります。アーリーマジョリティの支持が得られれば、市場シェアが拡大して事業の利益を見込めます。
アーリーマジョリティは、新技術に対する態度はアーリーアダプターと似ていますが、新技術や製品の実用性を重視する点では、アーリーアダプターとは異なります。
アーリーマジョリティは、購入の際に、他社の動向や導入事例の情報を集めて、他社がどのように使いこなしているかを知った上で購入します。購入後は、新機能を自分で試すことはほとんどありません。リスクを取らず、確実に実用できることを求めます。
アーリーマジョリティは、製品に対する要望も多く、購入に際して関連製品を競争させたがります。比較・競争させることで購買コストを下げることが狙いです。
レイトマジョリティ
イノベーター理論の4つ目の集団は、レイトマジョリティです。多くの特徴がアーリーマジョリティと似ています。しかし、レイトマジョリティはこれまでの慣習を大切にするため、製品を購入した後でも、新しい技術やしきたりに多少の抵抗を感じます。
レイトマジョリティは、自分たちにとって役に立つものがあれば、それをずっと使い続ける傾向があります。新技術や新製品も、業界のデファクトスタンダードになるほど、ある技術や製品の市場が確立することを待ち続けます。
レイトマジョリティは、製品購入後に手厚いサポートを受けたいために、大きな企業からの購入する傾向にあります。
ラガード
イノベーター理論の5番目は、ラガードです。ラガードは、とにかく、新技術や新製品には関心がありません。全体の16%がラガードに該当します。
ラガードに、新技術や新製品の積極的なマーケティング活動をしても、販売につながることがありません。
イノベーター理論をマーケティング活動に活かすために
イノベーター理論は、新技術や新製品のマーケティング戦略の方向性を判断する上で、非常に役に立ちます。
新製品の投入時のマーケティング活動は、イノベーター理論のイノベーターにターゲティングして市場創出を狙います。続いて、アーリーAdapterをターゲットとして市場の拡大を狙います。このように、新製品の投入では、イノベーター理論の5つの集団を順番にターゲティングしていきます。
ターゲティングとは、いくつかに市場を分類(セグメンテーション)したのち、自社が攻略すべきセグメンテーションを選ぶことです。くわしくは「ターゲティングとは?」でまとめました。ご参考になれば幸いです。
イノベーター理論をマーケティング戦略に活用するためには、到達したイノベーター理論の集団にあたる顧客を、次の段階に進むための先行事例として活用します。先行事例になりたがるイノベーター理論のアーリーアダプターの導入成功事例を、アーリーマジョリティの説得材料として活用して、アーリーマジョリティの市場を攻略します。
イノベーター理論の各集団の間で連鎖効果を生み出しながら、スムーズに次のイノベーター理論の集団の購買意欲を高める戦術を取りましょう。
イノベーター理論とプロダクトライフサイクルも理解して、新技術や新製品を上手に市場に広めましょう。
プロダクトライフサイクルとは、新しい製品を市場投入してから衰退するまでの典型的な売上の推移を理解するためのモデルです。一般的な新製品は、市場投入から市場撤退まで、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの特徴ある段階をたどります。くわしくは「プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル)とは?一番わかりやすい入門編」でまとめました。あわせてごらんくださいませ。