製品やサービスの戦略立案や戦略の見直しでSTP分析を使います。
STP分析のアウトプットが戦略の方向性そのものとなるため、STP分析の技量でよい戦略が生まれます。戦略の計画に関係する仕事をするなら、STP分析はしっかりとマスターしておきたい分析です。
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この記事のもくじ
STP分析の概要
STP分析は、自社の製品やサービスが、事業性の観点において、市場で優位な戦い方を探し出す要因をはっきりさせるプロセスをさします。新規事業戦略立案や、事業戦略の見直しの際に、STP分析をします。
STP分析とは?
STP分析は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を表しています。S・T・Pのそれぞれを決めることで、事業性の高い市場で優位な自社製品の戦い方を見出すための分析です。
STP分析は、新規市場参入や戦略見直しにおける事業戦略や事業計画の策定でよく使います。
STP分析はいつやるのか?
ビジネスにおける競争環境は常に変化します。お客さまのニーズ、新規参入する他社、競合、自社の新たな機能、買収や統合など、さまざまな要因によって市場が変化します。市場の変化は、新たな競争のルールを生み出します。そのため、定期的にSTP分析によって、自社が優位な戦い方を確認し、必要に応じて戦略を修正しましょう。
STP分析が必要となるような競争環境の変化は、自社・競合・お客さま(市場)のいずれかが代わったときです。
市場・競合・自社のいずれかに変化が起きる時に、ビジネスの競争環境が変わります。市場・競合・自社は3Cとしても知られています。詳しくは「3C分析で勝てる戦略を導く方法・やり方のご紹介」をごらんください。
市場の競争における勝ち負けの条件は、規制の緩和や変更、社会価値やライフスタイルの変化によるニーズや嗜好の変化など、あらゆる要因で変化します。
STP分析と他の分析との関係は?
STP分析は、マーケティング戦略実行の目標(ポジショニング)を設定することです。市場競争環境で、収益性が高く、自社が優位になるポジションをSTP分析によって探し、決定します。
ポジショニングとは、自社製品のターゲットとなるお客さまに対して、自社の製品をどのように知っていただくか、どのように感じていただくか、を決めることです。くわしくは「ポジショニングとは?」をごらんください。
ポジショニングを実現するためのマーケティング戦略実行の計画が、製品戦略、価格戦略、流通戦略、宣伝戦略といった、マーケティングミックス(4P)にあたります。
マーケティングミックスは、4Pとして有名なマーケティングのフレームワークです。マーケティングに関わる方なら、マーケティングミックスは理解しておくべきでしょう。
STP分析の流れとやり方
STP分析は、まずはS→T→Pの順にはじめましょう。
セグメンテーション:STP分析のS
STP分析では、まず市場全体を、ニーズによって細かく分類します。セグメンテーションの変数、顧客ニーズや製品価値を利用して、セグメンテーションの軸を探します。
STP分析のセグメンテーションでは、上記のように分類したセグメンテーションのそれぞれに、特徴を示すネーミングをしておくと便利です。
セグメンテーションとは、買い手の市場やタイプを、売り手にとって意味のある要素で切り分ることをさします。セグメンテーションの変数や注意点など、くわしい情報を「セグメンテーションとは?事例で学ぶ基礎と活用方法」でまとめました。
ターゲティング:STP分析のT
ターゲティングでは、自社の事業にとって魅力的な市場セグメントを選びます。ターゲティングの選定は、市場規模や成長性、自社の強み、競合企業のアプローチ、外部環境から決定します。
ターゲティングについての詳しい解説は「ターゲティングとは?」でまとめてございます。合わせてごらんくださいませ。
ポジショニング:STP分析のP
ポジショニングは、自社製品のターゲットとなるお客さまに対して、自社の製品をどのように知っていただくか、どのように感じていただくか、を決めることです。
STP分析のポジショニングを、アップル社のiPhoneを例にとってみましょう。
アップル社のiPhone発表にて、ジョブス氏は「アップルが望んでいるものは、どんなケータイよりも賢く、超カンタンに使えるもの。これがiPhoneです。」と、述べています。これはまさにポジショニングです。
従来のスマートフォンは、画面以外にキーボードがありました。iPhoneでは端末からキーボードを排除しました。スマートにキーボードを取り除いたため、その分画面を広くすることができ、使いやすくなりました。
ポジショニングを決める詳細やテクニックは「ポジショニングとは?」でまとめてあります。ご参考になれば幸いです。
STP分析で注意すること
STP分析ではいくつかの注意点があります。STP分析は目的が達成できれば、自由に行って構いません。ただ、注意点を知っていれば、STP分析がよりスムーズに行えます。
STP分析の順番にあまりこだわりすぎない
STP分析は、最初は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順で行います。しかし、見直しや修正では、S・T・Pのそれぞれを同時に考えることもあります。
STP分析では、自社にとって有利な価値軸で市場を細分化し、価値をもっと見せて事業の収益性をしっかりと確保するためのポジションの検討をします。
そのセグメンテーションは到達できるか?
STP分析で、すばらしいセグメンテーションとポジショニングを見つけました。例えば、左利きの野球初心者市場です。商品開発では、確かにこの市場はありそうです。しかし、セグメンテーションをマーケティングで考えたらどうでしょうか?
左利きに到達できそうな雑誌などのメディアが無いため、効率よく、このセグメンテーションに接触できる方法がありません。左利きが全体の1割ですから、広告宣伝の費用は割高になると予想できます。
商品開発のセグメンテーションは成り立つものの、広告宣伝のセグメンテーションが割高となるため、収支を考えると事業として難しいことが見えてきます。
収益性を考慮にいれる
STP分析における細分化は、市場を分割することです。あまりにも分割しすぎるとセグメンテーションが小さくなり十分な対象顧客がいないため、ビジネスとして収支が成り立ちません。
ビジネスとして収支が見込めないほど小さなセグメンテーションは、別のセグメンテーションと統合するなど、ある程度の母集団を確保することで、ビジネスの収支を再計算します。
自社の強みが活かせること
STP分析で導き出したセグメンテーションは、市場規模が大きく成長性も高く将来有望であったとしても、自社の強みを活かせなければ、他のプレイヤーよりも大きな市場シェアを取れず、高い事業収益性を見込めません。
自社がターゲットとするセグメンテーションで、経営資源、顧客、経営ノウハウ、組織、流通戦略の観点から、事業収益性の高いポジショニングとれることが大切です。
セグメンテーションの価値軸で、できるだけ外側をねらうようにしましょう。
環境要因による影響を考慮する
STP分析で選びだしたセグメンテーションにおいて、自社の強みを活かした事業を展開できるとしても、自社でコントロールできない要因によって事業収益性が悪化することがあります。例えば、法律や政府の規制がそれにあたります。
STP分析の前に、PEST分析をすることで、該当するセグメンテーションに影響するマイナスの外的要因・環境要因について十分に調べておきましょう。
PEST分析とは、ある事業の戦略や計画を書く上で、事業の利益に影響を与える自社で制御できない要因を知るためのフレームワークです。「外的要因の分析に利用するフレームワーク」として知られています。くわしくは「PEST分析の手順とノウハウを実例で学ぶ」でまとめました。
さいごに
STP分析は、製品やサービスの戦略や計画の骨子そのものです。STP分析で導き出したポジショニングを実現するための具体的な戦略・戦術や計画をつくっていきます。
よいSTP分析で、収益性の大きな製品戦略をつくるためには、PEST分析で事業環境をしっかりと理解し、ファイブフォース分析で競争環境を理解したうえで、3C分析で自社の強みをしっかりと把握する、という事前準備が大切になります。
また、実行可能な戦略を策定するためには、STP分析の注意点をしっかりと守りましょう。