ターゲティングとは、事業で標的とすべき市場です。標的すべき市場には、良い市場と、そうでない市場があります。
みなさんは、良い市場をターゲティングしていますか?
ターゲティングの概要
ターゲティングとは、いくつかに市場を分類(セグメンテーション)したのち、自社が攻略すべきセグメンテーションを選ぶことです。ターゲティングとは、英語の「Targeting」であり、日本語に訳すと「標的」となります。
セグメンテーションとは、買い手の市場やタイプを、売り手にとって意味のある要素で切り分けることをさします。くわしくは「セグメンテーションとは?事例で学ぶ基礎と活用方法」でまとめました。あわせてごらんくださいませ。
ターゲティングとは?
ターゲティングしたセグメンテーションは、自社商品のもっとも望ましい顧客像でもあります。自社の商品のコンセプトを理解して実際に買っていただけるお客さまは、自社がターゲティングすべきセグメンテーションです。
ターゲティングで選ぶセグメンテーションは、上図のように、1つとは限りません。セグメンテーションした市場の中から複数のセグメントをねらうことも、マーケティング業務ではよくある話です。
代表的なターゲティングの例
ターゲティングの代表例をみていきましょう。みなさんがよく見かけるターゲティングには、以下があります。
ターゲティングもセグメンテーションと同様に、見込み客の属性だけでなく、見込み客の行動をターゲットとすることも増えてきました。
ターゲティングの上記の例を選ぶ、効果的なターゲティングを探し出すためのやり方・手順とノウハウ、注意点についてこれから説明していきます。
ターゲティングのやり方・手順
ターゲティングを決めるときは、デモグラフィック、購買心理やブランディング、購買行動、の3つの側面から組み立てます。これらの3つの側面はセグメンテーションにも関わってきます。
デモグラフィック属性を考慮する
ターゲティングでもっともわかりやすい表現が、デモグラフィック特性です。デモグラフィック特性は年齢・性別・家族構成などでセグメンテーションやターゲティングする属性を一般的にあらわす特徴です。
デモグラフィック属性はわかりやすく、調査データを入手しやすいことが特徴です。しかしながら、市場競争が加熱している場合や少し複雑な市場セグメントをねらう場合には、事業の収益性をしっかりと確保できる十分なターゲティングとは言えなくなることがあります。
購買心理の特徴でターゲティング属性を考慮する
あなたの商品や会社に対して抱くイメージ、もしくは購入時や利用時に重視するポイントなど、感覚とかイメージに近い部分を考慮する、つまり購買心理でターゲティングすることがあります。
購買心理によるターゲティングは、新商品開発で重視する属性です。しかしながら、市場の調査レポートが少なく独自にインタビューなどでセグメンテーションとターゲティングを明らかにしていく必要があります。
行動や利用状況でターゲティングする
その商品、もしくは代替商品にどれくらいの費用をかけているのか、どれくらいの頻度で利用しているのか、などの実際の利用面における特性でセグメンテーションおよびターゲティングをします。
このターゲティングは利用に直結しているため、売上予測を立てやすい特徴がありますが、独自の調査によって市場セグメントを実施して、ターゲティングしなくてはなりません。
利用者、購入者、意思決定者を分類する
商品によっては、利用者と購入者が異なる場合、また意思決定者が別に存在する場合もあります。特に、BtoBマーケティングではこれらの役割が異なるケースがあります。
BtoBマーケティング以外にも、マンション購入など、利用者は家族全員だけど実際の支払いは旦那さんがするなど、利用者と購入者、そして意思決定者が異なるケースがあるので注意しましょう。
また、洋服など利用者、購入者、意思決定者の3つの役割が同じこともあります。
効果の高いターゲティングのためのノウハウ
ターゲティングは、自社の事業にとって魅力的な市場セグメントを選びます。ターゲティングの設定は、市場規模や成長性、自社の強み、競合企業のアプローチ、外部環境から決定します。
市場規模と市場成長性でターゲティングするセグメントを選ぶ
ターゲティングする市場セグメンテーションは大きければ大きいほど収益性があるといえます。そのため、現在の市場性が大きいセグメンテーションは、あなたの事業のターゲティングの候補として魅力的です。
当然、魅力的なセグメンテーションは、多くの企業がターゲティングするため、市場における競争が激しくなります。
市場競争が激しくなると、目標とする市場シェアを獲得するために大きなマーケティング予算を投下する必要があり、あなたの事業の収益性に大きな影響を及ぼすかもしれません。
今は小さくても、将来的に技術の進化などにより、いっきに成長性する可能性のある市場セグメンテーションもあります。
セグメンテーションの価値を見極めるときには、そのセグメンテーションの市場規模だけでなく将来の成長性も考慮する必要があります。
自社の強みが活かせるターゲティングをする
ターゲティングしようとしている市場セグメンテーションが、市場規模が大きく将来有望なセグメンテーションであったとしても、自社の強みが活かせなければ競合よりも大きな市場シェアを奪うことはできません。
これまで高級品路線を進んできた製品をもつ企業が、いかに魅力的で大きな市場セグメンテーションがあったとしても低価格低級市場に参入することはおすすめできません。これまで築いてきた企業ブランドイメージを低下させてしまうことがあります。
経営資源、顧客、経営ノウハウ、組織、チャネル流通戦略などの観点から、自社がその市場セグメンテーションで競争優位性を十分発揮できるかをしっかりと見極める必要があります。
競合の圧力を避けたターゲティングを
これからあなたがターゲティングしようとしている市場セグメンテーションに、古参の大手企業のメインターゲットである場合、あなたの商品はしっかりと差別化して事業収益性を確保できますか?
ターゲティングの選定には、その市場セグメンテーションにおける競合企業を調べ、自社が差別化して収益を確保できる可能性について調べておきましょう。
すでに参入している競合に対して差別化できるのであれば、後発でも十分に成功の可能性はあります。
環境要因による影響が少ないことを確認する
ターゲティングでは自社でコントロールできない環境要因についても考慮しておきましょう。
例えば、法律など政府の規制が影響することで自社の事業のさまたげになることもあります。急に規制が入り、自社のサービスが提供できなくなるなど、事業に大きな影響を与えることもあります。
せっかくターゲティングをしても、その市場セグメンテーションにサービスを提供することが、社会的にネガティブなイメージを与えてしまうこともあります。
ターゲティングの注意点
良いターゲティングをするためにはいくつかの注意点があります。ターゲティングの注意点をしっかり守れば、事業収益性の高いマーケティング戦略・施策をつくることができます。
到達できるセグメンテーションをターゲティングする
ターゲティングで選ぶセグメンテーションは、営業活動またはマーケティング活動を通じて簡単に接触できる必要があります。文字で書くと少しわかりにくいでしょう。
ターゲティングの好ましくない例を1つあげます。それは、「左利き」です。
スポーツ用品を提供する会社が、左利き用のグローブを販売しようとして、製品企画(マーケティング企画)をしているとしましょう。
セグメンテーションの1つには、右利き・左利きがあります。この企業ではニッチな左利き市場をターゲティングしようとしています。
残念ながら、左利きだけの見込み客だけに到達する有効な方法がありません。左利き専用の野球雑誌、左利きだけが集まる野球イベントがあれば、広告などを通じて左利きの皆さんに接触することができます。
知る限りでは左利き向けの雑誌などのメディアが無いため、ターゲティングできずにマス市場へのプロモーションとなります。その結果、プロモーション費用やCPA(顧客獲得単価)がどうしても右利きのセグメンテーション以上になってしまいそうです。事業収益性の観点から、あまりよいターゲティングとは言えません。
結局、左利き専用のグローブというニッチな市場を攻めこむためには、野球のプレイヤー全員に向けてマーケティングするしかなくなってしまいます。つまり、プロモーションの点では、ターゲティングできないことになります。
ターゲティングすべしは行動か属性かを見極める
先ほどのターゲティングの例をもう一度見てみましょう。
上記のターゲティングの例には、2つのタイプが混在していることに気づきましたか?
最初2つのターゲティングの例は、見込み客の「属性」で分けています。製品やサービスの想定や購入における役割(意思決定者と利用者)などの設定を考慮してあります。
残りのターゲティングは、見込み客の「行動」で分けています。マーケティング・コミュニケーションの現場でよく使います。このターゲティングの設定は、マーケティングオートメーションが得意としています。
ターゲティングは使う場面によって、「属性」と「行動」を考慮すると、より具体的なターゲティングができます。もちろん、複数の要素があるターゲティングをしても構いません。
そのターゲティングの見込み客は具現化できるか
ターゲティングの目的は、あなたの製品やサービスを売り込む対象を絞り込んで、その特徴を明らかにすることです。ターゲティングによって特徴が明らかになれば、あなたが製品やサービスを売り込む上で届ける情報やメッセージが明確になります。
もしターゲティングした見込み客に届ける情報やメッセージが絞り込めない場合には、ターゲティングが十分で無いかもしれません。
ターゲティングしたら、次はそのターゲティングした見込み客のペルソナを作ってみることをお勧めします。
ペルソナとは、ターゲティングした見込み客像を、人物レベルでの特徴を細部に渡って浮き彫りにした人物モデル像です。ペルソナについての詳細は、「誰でもできるペルソナの作り方〜マーケティングの現場で活用できる良質なペルソナを作る手順|カイロスのマーケティングブログ」が参考になります。
ターゲティングした見込み客のペルソナが明確にできるなら、そのターゲティングした見込み客に対してマーケティング活動が展開できるでしょう。ペルソナに対して、あなたの製品やサービスのバリュープロポジションを届けてみましょう。
さいごに
ターゲティングは、マーケティング戦略策定の中でも、最も重要な役割の1つです。良いターゲティングができれば、事業の収益性を確実に見込むことができます。