ABテストは、ツール等を使えばかんたんに実施できることから、マーケティング活動において広く用いられる効果検証手法です。
ただし、ABテストは正しい手順で実施しなければ、意味のない検証になってしまいます。
・ABテストを実施したけれど、ノイズだらけで使い物にならないデータになった
・なんとなくABテストを実施していて、検証結果が使い物にならない
このような事態に陥らないよう、ABテストの概要と、正しい実施方法について学んでいきましょう。この記事では、WebにおけるABテストに重点を置いて、ABテストをご紹介します。
この記事のもくじ
ABテストとは
WebにおけるABテストとは、一部のデザインやコピーが異なるAとB、2つのパターンを用意し、「どちらがよりクリック率やCVRが高まるか」を検証する手法です。ABテストを適切に実施することで、CTRやCVR改善の糸口をつかめるでしょう。
ABテストでは、AとBそれぞれのパターンのことを、バリエーションと呼びます。バリエーションが3つになると、ABCテストと呼ばれることもあります。
ABテストは、オンラインの施策、オフラインの施策問わず実施できます。たとえば、Webサイト、メルマガ、新聞の折込チラシ、ダイレクトメールなど、ABテストはさまざまなマーケティング施策の効果検証に用いることができます。
上記マーケティング施策の中でも、ABテストはWeb周りの効果検証・改善に用いられることが多い検証手法です。たとえば、ABテストは以下のような目的で用いられます。
ABテストの5つの実施手順
時間を無駄にしないためにも、ABテストはしっかりと準備したのちに実施しましょう。この章では、ABテストの実施手順の一例をご紹介します。
1:ABテストの目的を明確にする
なんとなくABテストを実施してしまうと、「結局そのデータは使わなかった」という結果に終わり、時間を無駄にしてしまいます。ABテストを実施するときは、かならずABテストの目的を明確にしましょう。
ABテストの目的を明確にするときは、以下の質問に自問自答するとよいでしょう。
・なぜ、そのABテストを実施する必要があるのか
・どのような目的でABテストを実施するのか
・判明した結果は、どのような目的で利用するのか
また、Webにおける代表的なABテストの目的には、以下のような項目が挙げられます。ご参考にしてください。
・CVRの改善
・CTRの改善
・離脱率の改善
・回遊率の改善
・読了率の改善
2:仮説を立てる
ABテストは、仮説を持って実施しましょう。仮説なきABテストは、終わりが見えないため、時間を無駄にしてしまいます。
仮説には、以下のようなものが考えられます。
「当社のWebサイトは文字が多く、読み疲れてしまい読了できない、という声が上がっている。Webサイトの滞在時間データを見ても、競合他社のWebサイトよりも短いようだ。そこで、Webサイトの文字色を、ブラックからダークブルーに変えたら、滞在時間が5%ほど伸びるのではないか。なぜなら、ブルーは集中力を高める色だからだ。」
仮説が立てられたら、仮説に基づきAとBのバリエーションを作り、検証します。ABテストにおいて仮説を考える際は、「仮説」「具体的な数字(改善率など)」「仮説の根拠」を意識しましょう。
また、自社のWebサイトに訪問している人の基本的なデータを把握しておくと、仮説が立てやすくなります。
ABテストの仮説を立てるために利用できる基本的なデータ
・訪問者は20代が中心
・男性よりも女性が多い
・午前中よりも午後のアクセスが多い
・平日よりも休日のアクセスが多い
・購買行動は、主に休日に行われる
3:ABテストのサンプルサイズを求める
ABテストを実施するにあたり、担当者はABテストに必要なサンプルサイズを求める必要があります。
統計的に意味のあるABテストを実施するためには、少しだけ統計学の知識が必要です。「統計学」と言われると身構えてしまうかもしれませんが、難しく考える必要はありません。サンプルサイズとは、要するに「何人を調査すれば、適切にABテストを実施したと言えるのか」を表した数字です。
身近な例で考えてみましょう。あなたは、自分がデザインしたAとBの2つのデザインについて、「どちらがより、ユーザーにクリックしてもらえそうなデザインか」と友人に尋ねてみました。
10人中7人はA、3人はBを選びました。さて、あなたの友人に調査した結果では、あなたはA案を採用すべきだという結論になります。
しかし、あなたの友人7人が「Aがいい」と思ったからといって、その他すべての人々が、「Aがいい」と思うわけではありませんよね。今回はたまたまAが選ばれましたが、さらに1000人に追加で調査したら、Bという結果が出るかもしれません。しかし、日本中の全員に尋ねて回るのは不可能です。
「全員に尋ねて回ることは不可能だが、統計的に意味のある結果を導きたい」ときに有効な調査手法が、標本調査です。標本調査は、母集団からランダムに一定数を抽出(サンプリング)することで、母集団の性質を推測できる調査手法です。
標本調査において、「母集団から抽出する人数」をサンプルサイズと呼びます。サンプルサイズを計算することで、「何人に尋ね回れば統計的に意味のある結果が導けるのか」がわかります。
サンプルサイズの計算は複雑ですが、以下のようなサイトでかんたんに調べることができます。
4:ABテストを実施する
サンプルサイズが求められたら、ABテストを実施しましょう。ABテストは、サンプルサイズを満たし、仮説の検証が終わるまで実施します。
ABテストは、本文最後の章「ABテストができる無料ツール」でご紹介するツールを用いることで、かんたんに実施できます。
5:ABテストの結果を振り返る
ABテストを実施しただけでは、「Aの効果が高かった」「Bの効果が高かった」で終わってしまいます。単に「どちらの効果がより高かったか」という事実の発見で終わってしまっては、ABテストの結果を応用できません。
ABテストの結果を応用するには、ABテストの結果を振り返る必要があります。ABテストの結果を振り返る際は、以下のような観点で振り返りましょう。
・なぜA(もしくはB)が勝ったのか。もしくは負けたのか。要因は何か。
・仮説は正しかったか。
・この結果は、何かに応用できないか。
・この結果を踏まえて、立てられる仮説はないか。
上記のような振り返りができれば、そのABテストで得た知見を、他の施策に応用できる形でストックできます。
ABテスト実施の際の3つの着眼点
この章では、ABテストにおける代表的な3つの着眼点をご紹介します。
1:デザイン
視覚的な訴求は強力です。デザインは、視覚的な訴求力が高く、少し変更するだけで大きくCTRやCVRが伸びる可能性があります。デザインでチェックすべき項目には、以下のようなものがあります。
2:動きや配置
Webサイトは、ポップアップを表示させたり、バナーを追従させたり、さまざまな動きを取り入れられます。オブジェクトの動きや配置は、ABテストするポイントになります。
3:コピー
コピーとは、バナーなどに用いるキャッチフレーズのことです。コピーライターという職業があるほど、コピーには大きな力があります。少し言い回しを変えるだけで、CTRやCVRは大きく伸びる可能性があります。
ABテストを実施する際の注意点
ABテストを実施する際の注意点を一言で述べれば、「 十分なデータをもとに、適切な比較を行う」ことです。以下で詳しくみていきましょう。
比較対象以外の条件を揃える
ついやってしまいがちなミスが、「比較対象以外の条件を揃えずにABテストをしてしまうこと」です。比較対象以外の条件を揃えなければ、意味のあるABテストはできません。
「まとめてABテストしたいから、デザインとコピーの2つを変更する」ことは、比較対象以外の条件が揃っていないABテストの一例です。
上記の例では、「これはデザインを変更したから効果が上がったのか、それともコピーを変更したから効果が上がったのか、どちらなんだろうか」と、ABテスト後に担当者は悩む羽目になります。
ABテスト実施の際は、かならず比較対象以外の条件を揃えるようにしましょう。
最低限のサンプルサイズを確保する
先ほどもご説明しましたが、サンプルサイズが小さい中でABテストを実施しても、「たまたまそうなった」可能性があります。
統計的に意味のある結果を導くためには、以下のようなサンプルサイズを計算できるツールを用いて、サンプルサイズを求めましょう。
サンプリングに偏りが生じないようにする
サンプリングとは、母集団から標本を抽出することです。
ABテストを実施する際、Aの標本とBの標本に偏りが生じないよう注意しましょう。たとえば、「あなたの友人100人にアンケート調査をした場合」と、「渋谷駅前の男女100人にアンケート調査をした場合」では、結果が異なるはずです。
ABテストを実施する際の標本は、無作為抽出でなければなりません。
WebのABテストができる無料ツール
ABテストは、無料のツールで実施できます。今回は、ABテストが実施できる無料ツールを2つご紹介します。
Googleオプティマイズ
Googleオプティマイズは、Googleアナリティクスと連携させて、無料でABテストができるツールです。
Googleオプティマイズは無料にかかわらず、ブラウザ上でバリエーションが作成できたり、多変量テストやリダイレクトテストまで行える高性能なツールです。
Googleアナリティクス
実は、GoogleアナリティクスでもABテストはできます。Googleアナリティクスは、Googleオプティマイズにくらべて機能は劣りますが、普段GoogleアナリティクスでWebサイトの分析をする要領で、ABテストできる点が魅了です。